ネットで買ったものが届かなかったり、写真とまったく違ったものが届いたり、ネットショッピングをする機会が増える年末年始は、詐欺サイトにいつも以上に注意が必要。偽サイトを見抜くコツや、騙されないポイントを防犯のプロが指南。
SNSに出てくる広告は詐欺の温床
激安アイテムをネットで注文したけれど届かなかった、おせち料理をネットで頼んだけれど、写真と全然違う……、ネット犯罪は、セールやイベントの多い年末年始になると、ぐんと増える。
そもそもネット犯罪の手口とは、どういったものだろう。防犯の専門家である桜井礼子さんは次のように説明する。
「詐欺サイトはどんどん進化して、今は公式サイトと見間違う偽サイトがたくさん出てきています。Yahoo!やGoogleなどで検索して、一番初めに出てくるものなら大丈夫だろうと思いがちですが、スポンサーサイトでもいかがわしいものがあります。
例えば、皆さんの記憶に新しいところでは、お米。ネットで激安で販売されていたのを買ったけれど結局、送られてこなかったという事件がありました。またSNSに出てくる広告も、詐欺の温床です。
そこからタップして商品を買ったけれど、届かなかったという被害も聞きます。さらに大手デパートそっくりのサイトから、クリスマスケーキやおせち料理などを注文し、届いたけれど写真と全然違うものだったということもありますね」
公式サイトと詐欺サイトを見比べてみると、URLの英文字が違っていたりするが、一見で詐欺サイトと見極めるのは非常に困難。
だからこそ「買い物するときは、それが公式サイトか必ず確認。あやしいところからは買わない」ことを徹底してほしい、と桜井さんはアドバイスする。巧妙なのは、返金詐欺だ。
「『注文の商品が欠品です。お金を返金しますから再度、〇〇payなどのコード決済をしてください』などと指示される。でも返金どころか、逆にお金の送金に誘導される詐欺です。
そもそも、本当に返金されるなら口座振込などで返金されるはず。冷静に考えればわかることも、『返金してほしい』という気持ちが強すぎて、つい誘導にのってしまうのです。『欠品』『返金』という言葉が出てきたら、まず疑ってほしいですね」
まずは消費者ホットラインに電話
自分は絶対に詐欺に引っかからないぞ、と思っている人ほど引っかかるといわれるが、それはなぜか。
「オレオレ詐欺をはじめ、こうしたECサイト詐欺や投資詐欺の犯罪者は、私たちより一枚も二枚も上手。世の中の動向や流れをよく見ているし、私たちの欲望をうまくくすぐってきます。注意していても、引っかかってしまう危険は常にあるのです。
『安い』『今だけ』『限定』といった言葉に惑わされないこと。オトクな話やもうけ話は、まずすべて詐欺だと疑ってください。そんなおいしい話はありませんから」
そんな防犯のプロである桜井さんですら、サイト詐欺に引っかかりそうになったことがあったと話す。
「ある商品を買いたくて、いろいろなサイトを見ていたら、ほかよりもちょっとオトクなサイトがあったんです。そこで注文しようと思って進んでいったら、支払方法が口座振込だけ。しかも、その振込先が個人名だったんです。
通常はカード払いや代引きなど、支払方法は複数あるはずなのに特定されていたので、これは詐欺だなと気づき、事なきを得ました」
仕事柄いろんな詐欺を見聞きしていなければ、多分引っかかっていた、と桜井さんも苦笑いをする。このほか、大幅な値下げがされていたり、問い合わせ先や事業者情報が載っていなかったりというのも、偽サイトの特徴になる。
では万一、詐欺サイトに引っかかってしまったら、どうすればいいか。すぐ警察に通報したほうがよいのだろうか。
「まず『消費者生活センター』の消費者ホットライン188(いやや)に電話して相談してみましょう。そこで警察に行ったほうがいいかどうかを相談してみてください」
常に犯罪にアンテナを張っておく
またクレジットカードで買った場合は、カード会社に連絡することもお忘れなく。
「返金される、されないはカード会社の判断によりますが、被害報告が多い場合は、返金されることがあるようです。とにかく被害にあったら、すぐにカード会社にも連絡しましょう」
そう、サイト詐欺にあうと、お金を取られるだけでなく、クレジットカード情報まで盗まれてしまうのだ。
「カード情報が盗まれると、その情報で買い物されて新たな被害にあう可能性が高まります。いまや大手のECサイトさえハッキングされる時代です。面倒かもしれませんが、いつも買い物しているサイトでも、クレジットカード情報は、そのサイトに保存せず、買い物するたびに入力していただきたいですね」
またクレジットカードの利用明細は、必ずチェックすることをすすめる。
「犯罪者は、何万円単位でなく、何千円という気づかれない単位でちょこちょこ買い物をしているケースもあります。ですから、何にいくら使ったか、カードの使用履歴をメモに残しておき、後日に明細書と照らし合わせることが大切です」
さらに大手サイトからお知らせのメールが来ても、すぐに開いてはいけないという。
「それが本物かどうかわかりませんから、私はすべて無視しています。お知らせは、サイトのマイページからチェックしましょう」
いつどこで自分が被害者になってもおかしくない時代。どうやって犯罪から自分の身を守ればよいのだろうか。
「ネット犯罪に限らず、すべての犯罪において今、世の中でどんな事件が発生しているかを知っておくことが大事です。住宅侵入犯罪や強盗事件は、特に年末年始になると増加します。日々のニュースをチェックし、常に犯罪にアンテナを張っておくことが、被害にあわない第一歩になるはずです」
日本防犯学校学長 桜井礼子さん 日本初の女性防犯アナリスト。自分自身でできる防犯対策をはじめ、子どもと高齢者、女性を守る防犯対策をわかりやすく解説。弱者を犯罪被害から守る、予知防犯を提唱する活動を展開している。メディア出演も多数で幅広く活躍。
取材・文/池田純子
