「東京2025デフリンピック」の空手競技を観戦し、手話で拍手を(2025年11月24日)

《今回の私の訪問をきっかけとして、これまで多くの方々により築かれてきた交流の絆が更に深まっていくとともに、日本とラオスの将来の交流の輪がより大きく広がっていくこととなれば幸いです。今回は私にとって初めての外国公式訪問でしたが、ラオスの国民の皆様の温かい人柄やお心遣いにより、充実した心に残る訪問となりました》

愛子さまの外国への公式訪問

ラオスのパーニー国家副主席主催の晩さん会で乾杯する愛子さま(2025年11月18日)写真/共同通信

 天皇、皇后両陛下の長女愛子さまは11月17日から22日まで、ラオスを公式訪問した。愛子さまは帰国後、宮内庁を通じて冒頭のような感想を公表した。今年は日本とラオスの外交関係樹立70周年にあたり、ラオス政府から招待された。愛子さまの外国への公式訪問は初めてだった。

 11月18日、愛子さまは、首都ビエンチャンの国家主席府でトンルン国家主席を表敬訪問した。ラオスの民族衣装を着た愛子さまは、「ラオス国民の皆様に温かくおもてなしいただき、とてもうれしく思います」「両国の友好関係の増進に力を尽くしてくださり、心から敬意を表します」と述べたという。

 また18日夜、愛子さまは、ビエンチャンのホテルで開かれたパーニー国家副主席主催の晩さん会に出席した。晩さん会には、ラオスと日本の政府関係者ら約50人が出席した。報道によると、愛子さまは「おことば」を何度も自分で修正して本番に臨んだという。和服姿の愛子さまは、次のように述べている。

「(略)ラオスには、豊かなメコン川の恵みと共に、国民の生活に根づいた古くからの伝統文化が残されているとうかがっております。本日の午前中に訪れた凱旋門やタートルアン大塔では、市内を一望した際の雄大な眺めや、誇りある歴史と人々の祈りの場の荘厳な雰囲気に心を打たれました。

 私の父は2012年にラオスを訪問していますが、父からは、ラオスの人々の温かさや、メコン川の恵みを受けた豊かな文化と美しい景色が特に印象深かったと聞いています。また、今回の滞在中、父も訪れたルアンパバーンを訪問できることも楽しみにしております。(略)

 日本の人々が2011年の東日本大震災などの大きな試練に直面した際、ラオス政府や国民の皆様から温かいお見舞いを頂き、惜しみない支援の手を差しのべていただいたことも、心よりありがたく、忘れることはできません。東日本大震災の当時、私はまだ小学生でしたが、ラオスの方々からの心温まる支援について後に知り、両国の人々の結びつきが一層深まった出来事として心を動かされるとともに、長く記憶にとどめていきたいと思っております。(略)

 私たち若い世代が先人たちの歩みを受け継ぎ、両国の懸け橋となって、ラオスのチャンパーや日本の桜のように、美しい花を咲かせていくことができればと思います。この機会に、日本・ラオス両国において、お互いの国への理解や関心がより一層高まり、果てしなく続く悠久のメコン川の流れのように、どこまでも発展していくよう願っています。

 コー・コープ・チャイ・ラーイ、ニョック・チョーク(どうもありがとうございました。乾杯いたしましょう)」

ラオスの伝統儀式した愛子さま

ブラジル公式訪問中、記念植樹されたイペーの木に水やりをする佳子さま(2025年6月8日)写真/共同通信

 晩さん会に先立ち愛子さまは、ラオスの伝統儀式「バーシー・スークワン」に参加した。健康と繁栄を祈る儀式で、愛子さまは、変わらぬ友情や助け合いの心、旅の安全などを願って手首に白い糸を巻き、そのまま晩さん会に出席している。

 19日、愛子さまは、ビエンチャンにあるベトナム戦争時の不発弾被害を紹介する展示施設「コープ・ビジターセンター」を訪れている。ラオスはベトナム戦争中、米国と敵対した北ベトナム軍の補給路となり、米軍から激しい空爆を受けた。

 現在も8000万発もの不発弾が残り、不発弾によるラオス国内の死傷者は5万人に上るといわれている。愛子さまは、不発弾により手足を欠損した人たちのための義肢の支援などについて説明を受け、熱心に耳を傾けていた。

 前回のこの連載で触れたが、愛子さまがラオスを公式訪問中の11月18日、宮内庁は秋篠宮ご夫妻の次女、佳子さまが新型コロナウイルスに感染したと発表した。「東京2025デフリンピック」の開会式や結団式などに出席し、精力的に公的な活動に取り組んでいた佳子さまだけに、日頃の疲れなどが出たのかもしれない。しかし、24日にはデフリンピックの空手競技を観戦し、仕事に復帰している。

 その佳子さまは今年6月、ブラジルを公式訪問している。2019年9月のオーストリアとハンガリー公式訪問、2023年11月にペルー公式訪問、そして2024年5月〜6月のギリシャ公式訪問と、4回の海外公式訪問を成功させている。

 ブラジルでは最大の都市サンパウロや首都ブラジリア、リオデジャネイロなど8都市をめぐり、日系人の方々やブラジルの人たちと、とびっきりの笑顔と思いやりの心で交流し、行く先々で大歓迎された。

 現地で行われた昼食会で佳子さまは、自宅のある赤坂御用地でブラジルの国花、イペーが育ち毎年、花を咲かせていることを紹介しながら、

「日本とブラジルの友好関係も、さまざまな分野で花を咲かせており、新しいつぼみもふくらみつつあるように思います。関係する方々のご努力が実り、たくさんのつぼみが美しく花咲くことを願っております」

 と述べていた。

 今回、初めての外国公式訪問を終えた愛子さまは、当然のことではあるが「先輩」であり、従姉の佳子さまの海外訪問を、大いに参考にしたことだろう。あるいは佳子さまが愛子さまにアドバイスしたかもしれないし、愛子さまが佳子さまに疑問点などを素直に尋ねたかもしれない。そんな愚推をしたくなるほど、2人は仲良しなのだ。

 今、佳子さまは、愛子さまが海外デビューを無事に果たしてホッとしているのではなかろうか。

 2026年、2人の外国公式訪問はどうなることだろう。佳子さまと愛子さまが、「両国の懸け橋となって、美しい花を咲かせて」くれることを多くの国民は願ってやまない。

<文/江森敬治>

えもり・けいじ 1956年生まれ。1980年、毎日新聞社に入社。社会部宮内庁担当記者、編集委員などを経て退社後、現在はジャーナリスト。著書に2025年4月刊行の『悠仁さま』(講談社)や『秋篠宮』(小学館)など