左から森崎ウィン、シャーロット・ケイト・フォックス、ルビー・モレノ

 11月以降、視聴率が徐々に上向いてきた朝ドラ『ばけばけ』(NHK)。「耳なし芳一」「雪女」などの説話をまとめた『怪談』で知られる明治期の作家・小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)と、その妻・セツがモデルの物語だ。

 小泉八雲をモデルとする“ヘブン先生”を演じるのは、イギリス出身の俳優トミー・バストウ(34)。真田広之がプロデュースし、エミー賞を受賞したアメリカのテレビドラマ『SHOGUN 将軍』にも出演した実力派俳優だ。朝ドラはもちろん初出演。1767人もの応募者の中から、オーディションで選ばれた。

『虎に翼』で注目を集めた新日女優

「金髪でマッチョで……と、日本人にとってはステレオタイプの“白人男性俳優”のイメージをいい意味で覆してくれた俳優さん。クセのある小泉八雲のキャラクターを見事に演じています」

 と語るのは、ドラマウォッチャーで漫画家のカトリーヌあやこさん。

『週刊女性』では『ばけばけ』のヒットにちなみ、これまでの日本のドラマで心に残った「外国人俳優」についてアンケートを実施。30代~60代の男女500人から回答を得た。あなたの“推し”はランクインしている?

 第5位に選ばれたのは、昨年前期に放送されたNHKの朝ドラ『虎に翼』に出演していたハ・ヨンス(35)。主人公・寅子の学友で、法律の道を志して朝鮮半島から日本にやって来た留学生、チェ・ヒャンスクを演じた。

1月からの新ドラマ『DREAMSTAGE』でTBS系ドラマに初出演するハ・ヨンス(本人インスタグラムより)

「戦争が起きて日本を離れてしまうが、再び戻ってきて寅子と再会する設定が印象に残った」(茨城県・61歳・男性)など、役どころに共感する意見が多く寄せられた。

「童顔で、今年35歳には見えないほど可愛らしいヨンスさん。朝ドラでは、女性差別や朝鮮人差別など数々の偏見に静かに立ち向かう演技が素晴らしかったです」(カトリーヌあやこさん、以下同)

 韓国でデビュー後、およそ3年前に日本に拠点を移して女優活動を本格化。親日家としても知られている。

「日本語はアニメで覚えたそう。これからの活躍にも期待大の女優さんです」

ミックスと勘違いしている人も

 第4位は、同じく朝ドラ『カムカムエヴリバディ』でロバート・ローズウッド役を演じた村雨辰剛(37)。スウェーデンで生まれ育つが、日本の武士道への興味や憧れが募り、「日本人として日本で暮らしたい」と帰化。日本名に改名した、異色の経歴の持ち主でもある。

高校卒業後に来日し、語学指導や通訳などを経て庭師に転身した村雨辰剛

「もともとは庭師なのに、あの演技はすごい」(埼玉県・60歳・男性)とあるように、本業は造園業。20代のころに愛知県の造園会社の親方のもとで修業を積み、造園技術を学んだ。NHK Eテレ『趣味の園芸』のナビゲーターとしてもおなじみだ。

「古い日本家屋を買って修繕しながら住んでいるそうで、日本人よりもずっと日本人らしい(笑)。美丈夫なルックスと、日本名のギャップもユニークです」

 大河ドラマ『どうする家康』での三浦按針役、『大奥season2』での蘭方医役など、NHKのドラマと縁が深い。

「外国で生まれ育ったにもかかわらず、日本人に、日本の伝統の素晴らしさを改めて気づかせてくれる。本当に稀有な存在の俳優さんだと思います」

 第3位は、日タイ共同制作映画『(LOVE SONG)』が好評上映中の森崎ウィン(35)。同作では、SnowManの向井康二とW主演を務めている。

「演技がうまく、安心して見ることができる」(北海道・65歳・男性)と、高い演技力を絶賛する声が集まった。

「森崎という芸名や、日本語の堪能さから、日本人とのミックスだと勘違いしている人も多いはず。実は両親ともにミャンマー人で、ミャンマー語も英語も話せるトリリンガルなんです」

森崎ウィンの「森崎」は所属事務所がつけた芸名

 来日当時は9歳。日本語をうまく話せず、いじめに遭ったことも。

「歌もうまく、ミュージカルの主演を務めるなど非常に多才。語学力を生かして、どんどん国際的に活躍してほしい。オスカーやエミー賞も十分狙える方だと思います」

ドロドロ作品での活躍

 第2位は、50代以上の読者には懐かしい! フィリピン出身の女優、ルビー・モレノ(60)。彼女を一躍有名にしたのが、最高視聴率30%超えを記録した1992年のドラマ『愛という名のもとに』(フジテレビ系)。役どころは、フィリピンから日本に出稼ぎに来たホステス、通称“ジャパゆきさん”。中野英雄演じる“チョロ”を騙して自殺に追い込むなど、脇役ながら重要なキーパーソンを演じた。

「インパクトのある演技が記憶に残っている」(大阪府・59歳・男性)と、50代~60代の男性を中心に票を集めた。

ルビー・モレノは重度の障害(脳性まひ)のある娘がいたが、1998年に他界した

「ドロドロ要素満載の野島伸司脚本作品で、不幸を象徴するような役どころでした。日本での活躍から30年以上たっても2位にランクインするとは、それだけ彼女の印象が強烈だったということでしょう」

 ドラマ放送の翌年には、崔洋一監督の映画『月はどっちに出ている』の演技で、ブルーリボン賞、日本アカデミー賞など主演女優賞を総なめ。

 だがその後、テレビドラマで演じた役どころと同じく実際にフィリピンパブのホステスをしていた過去や、離婚歴があり子どもがいる事実を隠していたことなどを週刊誌に報じられ仕事が減少。“お騒がせ女優”のイメージが定着し、間もなく日本の芸能界から姿を消すことになった。

「今思い返してみても、そんなに騒ぎ立てるような過去ではなかったはず。彼女が歩んできた人生をあんなふうにセンセーショナルに書き立てるなんて、30年前の当時、フィリピン人女性に対する偏見があったとしか思えません。チャーミングで魅力的な方ですから、もっと活躍できたはずだと思うと残念です」

 事務所とのトラブル、その後の和解など紆余曲折を経て、最近は少しずつ女優としての仕事も再開。また彼女の活躍が見られるかも?

NHK御用達の西洋人美女

 2位に大差をつけて1位に輝いたのは、2014年のNHK朝ドラ『マッサン』でエリー役を務めたシャーロット・ケイト・フォックス(40)。

「容姿端麗で、表情豊かなところが魅力的だった」(北海道・64歳・男性)

「すごく可憐で、憧れた」(熊本県・41歳・女性)と、その美しさを絶賛するコメントが相次いだ。

朝ドラ『マッサン』後の主演でコケてしまったシャーロット・ケイト・フォックス

「ブロンドで、スラリとしていて美人。わかりやすく言うと、古い時代の日本人が思い描く“西洋人女性”を体現したような方ですよね(笑)」

『マッサン』以降も、朝ドラ『べっぴんさん』、大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』の出演を経て、現在は『ばけばけ』にもヘブン先生の同僚として出演中。アメリカでの知名度は高くはなく、活動はほぼ日本限定だが、日本では“シャロやん”の愛称で親しまれている。

「NHK作品に多く出演しているところをみると、同局が求める類型的な白人女性像にぴったりなんでしょうね(笑)。すっかり“NHK御用達”のイメージですが、やはり登場すると視聴者もうれしい。特別感がありますよね」

 ビデオ・オン・デマンドの急速な発展もあり、国際共同製作のプロジェクトが増えている。年明けにも、杏主演の日本・フィンランド共同製作のドラマ、山下智久主演の日仏米共同製作ドラマなどが続々放送予定。国境を越えて大きく成長を続けるエンタメに、今後も期待大だ。

日本のドラマで心に残った「外国人俳優」ランキング
カトリーヌあやこ 漫画家&テレビウォッチャー。著書にフィギュアスケートルポ漫画『フィギュアおばかさん』(新書館)など

取材・文/植木淳子