原作本もヒット、歌舞伎ファンが増えるなど大ブームの『国宝』(公式ホームページより)

『国宝』の興行収入が173億7739万円を突破(11月24日現在)し、2003年公開の『踊る大捜査線THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』(173億5000万円)の記録を超えて、22年ぶりに邦画実写歴代1位に。

2025年の映画話題作を振り返り

 原作は上・下巻が「オリコン年間文庫ランキング2025」の1位と2位を独占、第98回米アカデミー国際長編映画賞日本代表にも決定。

『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』や『名探偵コナン 隻眼の残像』などアニメも相変わらず好調だが、今年はゲームソフトを実写化した、二宮和也主演の『8番出口』や、連続爆破事件をモチーフにしたサスペンス『爆弾』などの邦画実写も健闘。「当たり年」だったという説も? 映画ライターのよしひろまさみちさんに聞いた。

「うーん、当たり年……?『国宝』を除けば興行成績の上位は収入、動員数ともにアニメが占めています。今年の邦画実写は公開タイミングの良さもあって、目立ったのかなと。もちろん上映時間が約3時間もある『国宝』にこれだけの集客があったことは、本当に素晴らしく明るい話題。

 ただ、興行収入が『踊る〜』を超えたことが注目されますが、そもそも『踊る〜』のときは、現在のような1つの映画館に複数のスクリーンがあるシネマコンプレックス(シネコン)ではなく、昔ながらの劇場で1年間作品を上映した数字です」(よしひろさん、以下同)

 現在は、ヒット中の映画をシネコンでスクリーンを増やして短期集中で上映し、すぐに配信に回して利益を回収する形が主流。同じように比べることができないのでは、とよしひろさん。さらに、

「特筆すべきは『国宝』が公開されて12月で半年になる、ということ。最近ではなかなか半年にわたって同じ作品を上映することがありません。そのあたりも今回の興行収入記録に大きく関わってくるのかなと」

『国宝』が記録を伸ばしていく一方で、

「半年間、スクリーンの多くを『国宝』に占められたために見る機会が減ってしまった、小粒ながらキラリと輝く新作邦画や洋画があったことも否めないですね」

 前出の『8番出口』も大ヒットしたが、

東京メトロと組んだ脱出ゲームのイベントを映画公開中に開催。『8番出口』の紙袋を持って都内を歩き回る人が多かったのもバズった要因の一つかなと。話題づくりも上手でしたよね

 近年の邦画実写の傾向を聞くと、

コロナ禍前あたりまでは、タレントのバリューに頼りすぎる傾向がありましたが、そうではないものにちゃんと人が集まるようになったように感じます。例えば『爆弾』なども素晴らしい作品です」

 今後、邦画実写の味わいが深まっていくのではという予感。来年は国宝級の作品が次々と出てくる“当たり年”になるよう、祈りたい。