今年も残りわずかとなってきた2025年12月8日、アニメ界、そしてかつてスポーツに汗を流した多くの元少年少女たちに、深い喪失感が走った。
声優・西村知道さんの訃報
『SLAM DUNK』の安西先生役、『幽☆遊☆白書』のジョルジュ早乙女役とナレーション、『NARUTO -ナルト- 疾風伝』のオオノキ(三代目土影)役などで知られるベテラン声優・西村知道(にしむら・ともみち)さんが、11月29日に逝去していたことが分かった。所属事務所の公式サイトで発表され、アクセスが集中してホームページが一時ダウンするなど悲しみが広がっている─―。
「葬儀は親族のみですでに執り行われたとそうで、その静かな旅立ちは、西村さんが演じてきた物静かだが芯の強いキャラクターたちの最期を彷彿とさせました。西村さんのキャリアは長く、演じた役柄は厳格な司令官から妖怪、温厚な老人まで多岐にわたる。しかし、多くの人々の心に最も深く刻まれているのは、やはりバスケットボール漫画の金字塔『SLAM DUNK』における湘北高校バスケ部監督・安西先生の声でしょう」(アニメ誌編集者)
特に、作中で彼が放った「あきらめたらそこで試合終了だよ」という台詞は、単なるアニメの名言という枠を超え、現代日本における“人生の標語”として定着している。 SNSでは《現在でも愛されてる名言です》《励まされた世代でもあり、とても残念です。ご冥福をお祈りします》など、西村さんのあの穏やかな声で再生される言葉に、どれほどの人の心に刻まれただろうか。
西村さん自身も、2015年7月『SLAM DUNK THE MOVIE Blu-ray』リリースを記念して行われた上映会に登壇した際に「僕の演じたキャラクターのセリフで、励まされたりするひとがいる。いまもいろんなところで使われる、それがとてもうれしい」と語っていた。
声優仲間から相次ぐ追悼
同い年で劇団も同じだったという声優・古川登志夫さんは「西村知道さんの訃報に接した途端、強烈な喪失感に襲われた。それは僕の両親が亡くなった時のそれを上回るほど大きなものだった。戦友、同僚、僚友、どんな言葉に置き換えても足りないほどの関係だった」と深い悲しみを露わにし、長年の友情を偲んだ。
声優でラジオパーソナリティーの日髙のり子さんも「いろいろな作品で共演させていただきましたが、私にとってはやはり『トップをねらえ!』の副長さんの印象が強いです。とても優しい方でした。どうぞ安らかに…お疲れ様でした」と悼んだ。さらに、『キミとアイドルプリキュア♪公式』や『魔神英雄伝ワタルシリーズ』の株式会社バンダイナムコフィルムワークスなど、各方面から追悼コメントが殺到している。
50年以上にわたり、数え切れない役を演じてきた西村さん。その声は、アニメという枠を超えて、人々の人生に寄り添い続けてきた。
《安西先生、ありがとうございました》──そんな感謝の言葉が、今日もSNSにあふれている。
