“一人勝ち”状態になりつつあるNetflix(公式サイトより)

 Netflixによるワーナー・ブラザース買収が発表された。ワーナーは大人気映画『ハリー・ポッター』シリーズなどの権利を有する。

Netflixの一強時代突入か

「Netflixのアメリカでの配信のシェアが20%程度。ワーナー側は13%程度。両方合わせると全体の3分の1に。あまりに大きいシェアとなると、強いIP(知的財産=人気作品の権利など)が囲い込まれ、ユーザーにはどうしても不利となります」

 そう話すのは映画批評家の前田有一氏。この買収にはトランプ大統領が異を唱え、さらには野党の民主党も同調。両者が反対する“市場の独占”は、ユーザーにはどのような影響が?

「月額料金が跳ね上がり、ユーザーの負担が大きくなる、とアメリカの議員たちも指摘しています」(前田氏、以下同)

 市場で大きなシェアを持つということは、“見たいなら金を出せ”と強く言える状況になる。“ここでしか見られない”のであれば、強気に値上げもできる。

「Netflixが広告ありの低料金プランも設定しているのは、日本にはU-NEXTなど、ほかにも強いライバルがいるから。仮にそういったところがなければ、もうとっくに値上げしていると思います」

 現在、ワーナー作品の配信は日本ではU-NEXTが独占契約を結んでいる。

「買収後はNetflix独占になる可能性が高い。U-NEXTにはワーナー作品以外のコンテンツもありますが、ワーナー作品を引き続き見たいなら、Netflixへの契約を余儀なくされる」

 今回の買収は劇場(映画館)への影響も。

「Netflix側はワーナー作品の劇場での公開はこれからも続けるとプレスリリースなどで明言はしています。ただ、業界の人からすれば、本音は違うというのがバレバレな話なんですよね。

 Netflixの自社作品は、アカデミー賞の資格を取るため2週間だけ劇場公開して、即配信するようなやり方が普通。映画館の運営側としては、たまったものじゃない。これまでの背景から、劇場公開よりも配信を優先する未来は容易に想像がつく」

 ユーザーの中には、Netflixの作品は面白いから、“一人勝ち”でいいと思う人もいるかもしれない。

「さまざまな映画会社が自分たちの信じる面白いものを作れる状況があるからこそ、いろいろな作品が見られるようになり、全体として高い文化になるわけです」

 低予算だったり、ヒットは見込めないが芸術的に高い評価を受ける作品はある。

「そういった多様性があるおかげで、いろんな経験をスタッフが積んで、また思いもよらないものができる。それが世界中の映画業界のコンセンサス。このままだと本当にテレビドラマ的な映画ばっかりになっちゃうので……」

 ハリポタが自由に見られない時代が来るかも─。