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 これから冬本番。特に女性の多くが身体の冷えに悩まされる季節だ。“冷えは万病のもと”ということわざがあるように、医学的にも冷えは身体にさまざまな弊害をもたらすことがわかっている。

 そこで実践したいのが、入浴の有効性について長年研究を続けてきた早坂信哉先生の提唱する入浴健康法。

冷えの正体は筋肉減少と血流低下

毎日の適切な入浴は冷えだけでなく、血流、不眠、免疫力、血圧、美肌など中高年女性に多い不調をまるごとケアできます

 そもそも、なぜ女性は冷えを感じやすいのだろうか。

「冷えは筋肉と深く関係しています。筋肉は熱を生み出していて、温められた血液は筋肉の収縮で全身を巡り、体温を維持。女性は筋肉量が男性よりも少ないため熱を作る力が弱く、若いころから冷えに悩む人が多いのです」(早坂先生、以下同)

 加えて加齢により血管が劣化し、弾力が失われて血液が末端まで届きにくくなる。

「血流が低下すると血液によって運ばれる免疫細胞が全身に巡りにくくなり、免疫の働きが衰えます。さらに、入眠に欠かせない深部体温の放出もうまくできず、不眠を招くほか、肩こり、腰痛などさまざまな不調を招くのです」

40度10分を週7日

 こうした不調をすべて解決してくれるのが毎日の入浴だ。

「理由はお風呂の温熱効果にあります。お湯につかると短時間で深部体温を上げることができます。40度のお湯に10分間つかるだけで深部体温が0.5〜1度上がることがわかっています

 この1度で、驚くほどの健康効果が表れるという。

「血液が温まると、血管が拡張し、血流が促進して血圧が安定します。また、血管を若返らせるNO(一酸化窒素)という物質の産生も促され、血管がしなやかになり、動脈硬化の進行を防ぎます。また免疫細胞の働きが活発化して免疫力が高まることで、さまざまな病気のリスクを下げる効果も」

 血流がよくなると酸素や栄養の供給もスムーズになり、細胞の新陳代謝も促進。老廃物も効率よく排出される。

「深部体温の上昇で副交感神経が優位になり、リラックス効果がアップ。いったん上がった後、深部体温が下がることで睡眠の質の向上にもなります」

 研究では、週に3回から効果が出始め、回数を重ねるほど効果が出やすいことがわかった。

私たちの研究で毎日入浴する人は、要介護リスクが29%、認知症のリスクが26%、他の先生の研究で脳卒中リスクが26%、心筋梗塞のリスクが35%減少していました。つまり入浴習慣のある人は健康寿命も長くなっていたのです」

温度で変わる健康効果と注意点

42度以上の熱い湯に注意!

 ただし湯温が高すぎると、逆効果になるため要注意。

42度以上になると血圧や心拍数が上がり、血液がドロドロになって脳卒中や心筋梗塞の原因となる血栓ができやすくなります。体温の急上昇は大量の汗をかくため、湯冷めの原因にも。

 湯温は40度で、炭酸系入浴剤を活用するのがベスト。入浴剤は成分濃度が濃く、高い効果が期待できる医薬部外品がおすすめです」

 長風呂したい日、夏場などは38度程度でOK。

「個人差もあるため、無理のない温度設定を。心臓病や呼吸器疾患のある方は20分程度の半身浴が安心です。額にうっすら汗がにじみ始めたら湯船から出ましょう」

 忙しくて入浴できない日はシャワーに手湯や足湯をプラスすると温熱効果を補える。

「シャワーで身体の芯は温まりませんが、太い血管が通る首、脇の下、足の付け根に42〜43度の熱めのお湯を当てると温まりやすくなります」

 冬場の入浴で気をつけたいのがヒートショックだ。

「寒い浴室で熱い湯につかるなどの急激な温度変化により血圧が乱高下し、心臓や脳に負担がかかって脳卒中や心筋梗塞を引き起こす現象です。また体温の急上昇で浴室内熱中症を引き起こす危険も」

 安全な入浴のために、次のルールが大事と早坂先生。

「まずは脱衣所と浴室を暖めておくこと。リビングとの温度差は5度以内が目安です。湯にはいきなりつからず、手足の末端から順に10杯程度かけ湯をするのもヒートショックの予防につながります。

 出るときは急に立ち上がらず、ゆっくり身体を起こすこと。入浴中は500〜800ミリリットルの汗をかくため、入浴前後の水分補給も忘れずに」

 自宅では温度・時間・水分補給を意識するだけで、入浴効果はぐんとアップ。さらに温泉なら、泉質ごとの効能で強力な疲労回復や冷え改善、美肌効果まで期待できる。

 毎日の“湯力”を味方に、心身を整えたい。

しっかりとした効能を得たいときは目的に合った温泉を選ぼう

手作りできる長生き入浴剤

 温泉に行けないときは…

手作りできる長生き入浴剤

準備するもの…重曹(食用)30g、クエン酸(食用)15g
作り方…………重曹とクエン酸をよく混ぜる
使い方…………180〜200Lの湯に溶かす

 豊富に含まれる炭酸ガスが皮膚から吸収され、入浴の温熱効果がアップする。市販の入浴剤と比べて、不要な着色料や香料が入っていないため、コスパもよく、肌への刺激が少ない。

【入り方】
 炭酸ガスの温熱効果を最大限得るには、泡が消えて完全に溶けてから入るのがポイント。

早坂信哉先生●温泉療法専門医、医学博士、東京都市大学教授。これまでに7万人を超える入浴習慣を医学的に調査してきた入浴のスペシャリスト。日本健康開発財団温泉医科学研究所所長など。

早坂信哉先生●温泉療法専門医、医学博士、東京都市大学教授。これまでに7万人を超える入浴習慣を医学的に調査してきた入浴のスペシャリスト。日本健康開発財団温泉医科学研究所所長など。著書に『入浴 それは、世界一簡単な健康習慣』(アスコム)など

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取材・文/井上真規子