「76歳のとき、変形性股関節症ですり減ってしまった両方の股関節を人工股関節に置き換えるために、『人工股関節置換術』の手術を受けました。そこから食事や運動など日々の習慣を見直したことで、むしろ60代、70代のころより元気に過ごせています」
そう話すのは、高岡邦子先生。健診業務などで内科医として働く一方で、78歳でボディコンテストに挑戦したり、シニアモデルとしての活動を始めたりと、そのバイタリティーは年齢をまったく感じさせない。
自分の足で歩ければ、老い知らずの80代に
手術後のリハビリの一環で運動を取り入れ、筋力をつけるために食生活も改善するうちに、心身共にみるみる元気になったという。
「50代から70代前半までは、仕事や実父の介護などで、自分のことは完全に後回し。コンビニ弁当や、カップ麺でごはんをすませることもしょっちゅうでした。そんな私でしたが、70代からでも自分の身体のケアをしてあげたことで、80代になってからも、日々軽やかに過ごせています。自分の足で歩き続けられていることが、今が充実している一番の理由だと実感しています」(高岡先生、以下同)
先生が身につけた“老けない”日々の習慣は、大きく2つ。「タンパク質をしっかりとる食生活」と、「身体の柔軟性を高めるストレッチ」だ。
「私が食事で決めているルールはたった1つ。『1食で3品のタンパク質』をとる、“タン活”を無理なく続けることです」
タンパク質は筋肉や内臓、骨、髪、皮膚など身体のあらゆる組織をつくる、いわばすべての土台となる栄養素。
「不足すると、髪や肌の見た目に影響するのはもちろん、筋肉も落ちやすくなります」
女性は閉経後に女性ホルモンの分泌が減少することで筋肉量が落ち、骨ももろくなる傾向があるため、より意識して摂取したいという。
「目安としては1日に自分の体重(kg)と同じくらいの数値(g)が最低限の摂取量です。例えば、50kgの人だったら、50g以上とるのがいいですね。1食分のタンパク質の量としては、肉か魚は、片方の手のひらにのるサイズで約20g、それにプラスして卵1個(約6g)、納豆1パック(約6g)を食べると30g以上とることができます」
ツヤのある髪と肌は“タン活”でキープ
1日に必要なタンパク質をまとめてとろうとすると、「鶏むね肉1枚を絶対に夕飯で食べないといけない」など、食事をノルマのように感じて、続けにくいのだそう。
「なので、小分けにしてちょっとずつ食べるのに、この1食で3品ルールがとてもおすすめ。『3品』と聞くと用意が大変に思えるかもしれませんが、実はとても簡単。例えば『納豆+温泉卵+しらす』を一皿にまとめてもいいし、豆腐やちくわ、チーズなど火を使わないタンパク質を添えてもいいですね。また、タンパク質をとろうという“指針”があると、逆に献立を考えるのがラクになるという利点もあります」
タンパク質のほかには、野菜からしっかりビタミンをとるのも意識している。
「なるべく日持ちがして栄養価の高い野菜10種類くらいを、よく洗って水けをきり、大きめの密閉容器に保存した『サラダ貯金』を作って日々の食卓に添えています。タンパク質を分解、吸収するのに野菜のビタミンは欠かせないので、豚しゃぶサラダにしたりして一緒に食べるようにしています」
筋力キープ&肌も髪もツヤツヤに、作り置きでラクチン“タン活”献立
1食で3品のタンパク質をとるのが、唯一決めているルール。ここでは「鶏ハムサラダプレート しらす・納豆の小鉢」を紹介!
タンパク質(1)鶏ハムサラダ
低温調理器を使って大量に作り置きしている鶏むね肉のハムが主菜。同じく作り置きしているサラダを添え、サラダプレートにしてポン酢とこしょうでさっぱりと。
タンパク質(2)しらす
しらすはそのままでも、ポン酢をかけても、納豆に混ぜてもOK。白米にのせるだけで手軽なので、まとめ買いして冷凍で常備しています。
タンパク質(3)納豆
植物性タンパク質がとれるうえ、女性ホルモンに似た働きを持つ「大豆イソフラボン」も豊富。小鉢として毎日欠かせない存在です。
身体作りの基本は毎日のストレッチ
リハビリからボディメイクに目覚め、週に4日ほどジムに通っている高岡先生だが、身体づくりの基本になっているのは、あくまで自宅でのストレッチ習慣だという。
「スマホを使うときはフォームローラーで背中や下半身の筋肉を伸ばしたり、夜にニュースを見るときも、股関節をほぐすストレッチをするように心がけていますね。年齢を重ねると、筋肉や関節はどうしても硬くなっていきます。すると、身体の可動域が狭まって転倒リスクが高まったり、血流やリンパの流れが悪くなって、太りやすい身体になってしまうのです。太りにくく転ばない、自分の足で歩ける身体をキープするには、有酸素運動ももちろん大事ですが、まずは日々のストレッチで身体の柔軟性を高めることが何より大切かなと思っています」
また、ストレッチには副交感神経を優位にして、睡眠の質を上げる効果も。習慣化することで、翌日の疲れも全然違うのだとか。
「特に股関節を柔軟にする『カエル体操』は毎日続けているストレッチ。人工股関節というのもあり、サボるとすぐに股関節周りの筋肉が硬くなってしまうのです。股関節は、運動不足や長時間同じ姿勢でいる人も硬くなりやすい部位。放置すると、姿勢が悪くなり腰痛を起こす原因にもつながります。股関節のゆがみは骨盤にも影響しますから、ストレッチをすることで骨盤が正しい位置に戻り、ぽっこりお腹も解消するのでいいことずくめです」
先生が行っているカエル体操は、うつぶせになりカエルのようなポーズで股関節をほぐす体操だが、股関節が硬い人は、最初のうちは両足を広げるカエルのポーズをキープするのにも一苦労するのだそう。
「なので、まずは『やさしいカエル体操』をおすすめします。床に座りながらできるので、テレビを見るときやお風呂上がりのリラックスタイムなどに、取り入れてみてください」
股関節の柔軟性をぐんと高める、やさしい“カエル体操”
高岡先生が続けている「カエル体操」は、うつぶせになり両足をカエルのように広げて行うストレッチですが、股関節が硬いと基本のポーズをとるのにも一苦労。そこで取り入れやすい簡易バージョンをご紹介。
(1)床に座って、片足を前にまっすぐ伸ばす。もう片方の足は、膝を曲げて内側に折る。
(2)太ももの付け根あたりに手を添え、足首を外側→内側へゆっくり倒す。左右それぞれ10回×2セット行う。
人工股関節の手術後、毎日続けているカエル体操! 姿勢がよくなり、ぽっこりお腹も改善しました
ほかにもたくさん!今日からできる老けない習慣
「7分の小分け入浴」で身体を冷やさない
湯船につかる時間を7分間×3回に分け、途中で洗髪や身体を洗うことで、無理なく長時間の入浴ができ、身体の芯から温まります。
無理に「朝方」にせずに心地よいルーティンを見つける
自分が心地よいルーティンで睡眠時間を確保。「朝方で健康的にならないと」など、「~しなきゃ」とストレスをかけずに過ごすのが大切。
50代から続けている「骨を強くするビタミンD」のサプリ
カルシウムの吸収を良くするビタミンDのサプリを50代から毎日服用。そのおかげか、同世代の平均値と比べ骨密度は120%をキープ!
撮影/山田智絵 イラスト/秋葉あきこ

