悠仁さま

 現在、大学の秋学期まっただ中の悠仁さまだが、休日をフル活用して公務に臨まれている。

「成年式の翌日から伊勢神宮参拝のため三重県を訪問されたことを皮切りに、『世界陸上』のご観戦、万博のご視察など9月中だけで8日間と、かなりの頻度でお出ましになりました。このときは大学の夏休み期間でしたから、長期休みの間のみ公務に臨まれるのではと見られていました。しかし、11月も授業のない土日に『デフリンピック』を2度観戦されたほか、紀子さまと泊まりがけで伊豆大島を訪問されたのです。平日は講義、土日は公務と多忙な日々を送られています」(皇室担当記者、以下同)

陛下は初等科時代から帝王学

 ハイペースでのお出ましが続いていることで「お人柄が垣間見えるようになった」と高評価の声も上がる一方、懸念の声も寄せられている。

「成年式以降の公務のほとんどは秋篠宮家のどなたかとご一緒だったのです。公務に慣れるまではご家族が付き添い、公務での立ち居振る舞いを教えようという方針なのだと思います。しかし、悠仁さまは将来、天皇となられるお方。であれば、ご家族とではなく天皇陛下とご一緒に公務を行い“帝王学”を学ばれるべきなのでは、という声が上がっているのです。さらに“そもそも悠仁さまは帝王学や象徴学を学ばれているのか”という疑問の声も成年皇族となられた今、強まっています
 
 帝王学とは皇位継承者にふさわしい適性を身につけるための学習を指す。それをベースに“象徴としてあるべき振る舞い”を学ぶのが象徴学だ。上皇さまは現在の陛下が幼少のころから、帝王学・象徴学の教えを徹底されていたという。國學院大學で講師を務める皇室研究者の高森明勅さんは次のように解説する。

陛下は学習院の初等科時代から帝王学・象徴学の学習を始め、初等科から中等科にかけては論語などを学ばれています。論語は道徳的な人格と思いやりを身につける教えで、国民に共感を抱き、国民から尊敬や信頼の念を寄せられるためには大切なものです
 
 そして高等科へ進学された陛下は“歴代の天皇の歴史”の学習に取りかかられたそう。

一流の歴史学者を御所に招き、歴代の天皇の歴史を順番に学ばれました。陛下は大学院に進学する直前に臨まれた記者会見で“92代の伏見天皇まで学びました”と明かされました。高校2年生から大学までの期間をかけても学習は終わっておらず、大学院進学後も学びは続いたのです」(高森さん、以下同)

 帝王学・象徴学については、美智子さまも会見で言及されたことがあるという。

「陛下が高等科3年生のとき、当時皇太子妃でいらっしゃった上皇后陛下は“学問も大切ですが、将来の自分の立場を自覚して、皇室の歴史を貫く『仁』の心を身につけてほしい”とおっしゃったのです。上皇ご夫妻は、学者を招いて座学をさせる以前に、思いやりの心を身につけるべく、日頃から意識をして陛下と接していらっしゃったのだと思います

経験を積まないまま即位されることも

 初等科から積み重ねられた帝王学・象徴学の研鑽は、陛下がどのように振る舞い、考え、心を定めるかを決めるうえで絶大な影響を及ぼし、陛下の基礎となっていると高森さんは言う。その一方で─、

秋篠宮家では天皇陛下が施されたものに相当する帝王学・象徴学が自覚的に行われた形跡がないのです。悠仁親王がお生まれになって以降、毎年の記者会見で秋篠宮殿下は“どのような帝王学を授けるのか”という質問を受けておられましたが、殿下が真正面から回答されることはありませんでした。秋篠宮殿下ご自身が“帝王学を学ばせなければ”というご意思をお持ちでないのであれば、外の人間がそれを強要できる性質の事柄でも、ましてや陛下にお願いすべき事柄でもないのです」

秋篠宮さまとは「大阪・関西万博」をご訪問。ご家族との公務が続いている

 幼少期から積み重ねていくべき帝王学・象徴学だが、それが施された気配がないまま大学生となられた悠仁さま。もし天皇になられたら、つまずきが生じかねないと高森さんは警鐘を鳴らす。

「天皇には主に3つの仕事があります。1つは憲法に定められた国事行為で、内閣総理大臣を任命したり、内閣からの書類に目を通し決裁するなどの公務です。ここにはあまり影響が出ないと見ています」
 
 問題は残りの2つ。うち1つが、地方への行幸啓や災害が発生した際の被災地お見舞いなどの「象徴行為」だ。

国民から尊敬を集め、敬愛が寄せられる天皇がお出ましになれば、人々に励ましや癒しなどを与えることによって、象徴としての役目を果たすことができます。一方、そうでない場合、お出ましの意義は薄れてしまうのです
 
 黒田清子さんがご結婚前、自らの歩みを振り返られたお言葉に、こうした仕事の難しさが表れていたという。

「黒田清子さんは“皇室のお仕事とは目に見える成果につながりにくく、自分に課するノルマや標準をいくらでも下げてしまえることに怖さを感じる”と述べておられます。それでもなお、ベストを目指し続けることで国民からの敬愛につながり、その内発性を育てるのが帝王学・象徴学です。それが十分になされないまま天皇となった場合、象徴行為に全力で取り組まれる動機づけの面で不安が残ります」
 
 そして最も影響が及ぶのが3つ目の仕事。天皇が国家安寧と国民の幸福を祈る儀式である「宮中祭祀」だそう。

「公的な制度で天皇は古代から現代まで秩序の頂点にいらっしゃいます。しかし、祭祀の場では天皇よりも上の存在にひれ伏さなければなりません。陛下がおごり高ぶったお心をお持ちでないのは、祭祀を繰り返し行い、自分よりも上の存在に誠心誠意お仕えする経験による点も少なくないはずです
 
 天皇となられてからも謙虚で清らかな心構えでいるうえで、祭祀の経験は帝王学に欠かせない要素だというが……。

宮中三殿で祭祀を行う際、殿内に入られるのは陛下と皇太子のみ。しかし、今は皇太子が不在なので、殿内に入るのは傍系の皇嗣の秋篠宮殿下で、悠仁親王は入ることができません。秋篠宮殿下は天皇陛下とご年齢が近く、実際に即位されることは考えにくく、その場合、今の皇室典範のルールだと、悠仁さまが殿内での祭祀の経験を積まないまま即位されることになりかねません。祭祀は作法とともに心構えが大切で、親子の継承が原則。傍系の次世代への受け継ぎは難しいのです」
 
 成年皇族としての歩みを着実に進まれる悠仁さま。その一方で“帝王学不在”の現状が影を落としている─。

高森明勅 國學院大學講師。神道学や日本古代史を専攻し、『天皇「生前退位」の真実』『「女性天皇」の成立』(共に幻冬舎新書)など著書多数