2024年7月ごろから検討され、2026年の7月から施行が予定されている東京都の「女性活躍推進条例案」。12月9日、東京都の本会議で松本明子副知事が語った内容が、大きな波紋を呼んでいる。
「生理痛体験会」が物議
松本副知事が述べたのは、事業者の取り組み事例を示す指針に「男性管理職への生理痛体験会」を盛り込むという考え。“働く場”において女性が活躍できる環境を整えることを目指す「女性活躍推進条例案」は、概要は固まっているものの、制定後にあらためて“指針”を定め、具体的な政策目標などを設定するとされてきた。
「生理痛体験会について、副知事は女性特有の悩みへの理解を深めることや、働きやすい環境を作る狙いがあるとし、積極的に進める事業者の支援を強化していくと語っています。内容としては、下腹部にEMS(筋電気刺激)のパッドを装着し、人工的に電流を流すことで子宮収縮のような痛みを再現するもの。しかし、世間からは“行政が痛みを推奨するのか”“電気刺激の筋肉痛と内臓の痛みの生理痛は全然違うだろ”“理解は大事だけどこんなの求めてない”などといった反対意見が多く寄せられています」(全国紙社会部記者)
物議を醸している「生理痛体験会」の支援策だが、これまでに社内で体験会を開いた企業ではどのような反応があったのか。2024年7月に実施した東京ガス株式会社は、ホームページでその様子を公開。体験会には役員・人事部長のほか、各部門・カンパニーの人事担当マネージャーの約20名が参加したという。体験装置は、痛みの強さが「弱・中・強」の3段階となっており、参加者からは「痛みに個人差があることなど新たに知ることができた」「同じ会社・職場で働く女性の辛さ・過ごしにくさの一端を知ることはできた」「女性特有の健康課題について話し合えるような職場づくり等、今後のアクションにつなげていきたい」といった声が。
都が直接、実施することは「考えてない」
体験会の支援が都の条例案として盛り込まれる件について、実際に経験した企業である同社の広報担当者に話を聞こうとしたが、「大変申し訳ありませんが、東京都の取り組みについては、見解を述べる立場にございませんので、本件に対する回答は差し控えさせていただければと存じます」と、極めて慎重な姿勢を示した。
世間からさまざまな反応が寄せられている、生理痛体験会の支援策。所管局である東京都の産業労働局に詳しい事情を尋ねたところ、以下ように答えた。
「女性活躍推進条例案は、働く場における女性の活躍を推進する条例として制定したものです。条例の中では、企業など事業者の皆様に、女性特有の健康課題への対応をしていただきたいということが書かれております。対応を進めるにあたって参考となるような具体的な取り組みについては、今後作る指針で示すことになっております。生理痛体験会につきましては、都議会の質疑の中で、そうした取り組みの一つの例としてお話をしたものです」
世間から反対意見も寄せられていることについては、こう話す。
「さまざまなご意見を頂戴しておりますが、働く場で女性が活躍できる環境の整備に向けて、各企業様におかれましては、それぞれの実情に応じた取り組みを進めていただきたいと考えております。従いまして、東京都が直接、企業様を対象とした生理痛体験会を実施するようなことは考えておりません。さまざまな関係機関のご意見なども伺いながら、どういった事例を示していくのかについては、今後検討していく予定です」
都はあくまで企業の取り組みを支援する立場であり、生理痛体験会は副知事が示した一つの例だという。
各方面で議論となっている都の施策。どんな形であれ、実施されるのは雇用の場における理解を深める結果につながるものであってほしい。
