2025年9月で40周年を迎えた『スーパーマリオブラザーズ』

 12月31日放送の『第76回NHK紅白歌合戦』にて、歌手の星野源が特別企画で出場することが発表された。パフォーマンスを披露するのは京都にあるニンテンドーミュージアムとのことで、当然、40周年を迎えている『スーパーマリオブラザーズ』とのコラボ演出も期待されている。

 1985年に任天堂から発売されたファミコンソフト『スーパーマリオブラザーズ』は、国内で681万本、世界で4024万本を売り上げた、ゲームの歴史を変えたと言っても過言ではない作品。以後に発売されたマリオ関連シリーズの売り上げは4億5000万本を超える、世界で最も有名なゲームと言えよう。

 そんな『スーパーマリオ』が2025年9月13日に40周年を迎えた。任天堂公式HPでは特設ページが開設し、マリオシリーズの歴史が紐解かれ、40周年企画を展示するニンテンドーミュージアムの紹介などが盛りだくさん。夢中になってプレイした元少年少女たちも当時を懐かしんでいるようだ。

 しかし1985年に発売された、40周年を迎えているソフトはスーパーマリオだけではない。後のゲーム開発に多大な影響を与えたソフトも多く、ゲーム史上においても「ファミコン黄金期」とも言える、名作ソフトの大豊作とも言える年だ。今回、そんな1985年に発売されたファミコンソフトの中でも、特に思い出に残るゲームをピックアップして紹介したい。

友代同士で“リアルファイト”になることも

1985年1月22日発売のファミコンソフト『バルーンファイト』(任天堂公式HPより)

・『バルーンファイト』1月22日ー任天堂

 バルーン(風船)で上昇するプレイヤーを操作して、同じくバルーンをつけた敵キャラクターに体当たりして割って倒していくアクションゲーム。プレイヤー自身も2つのバルーンを割られることで落下、ミスとなる。ステージクリアしていくたびに敵キャラの増加、障害物やカミナリも出現したりと難易度も上昇。

 2人同時プレイでは協力し合うつもりが、片方がうっかり味方のバルーンを割ってしまい、敵キャラそっちのけでプレイヤー同士の“落とし合い”に発展することも。

・『アイスクライマー』1月30日ー任天堂

 もふもふコートを着た「ポポ(1プレイヤー)」と「ナナ(2プレイヤー)」を操って、ひたすら頭上のブロックを壊して階層を上っていき氷山の頂上を目指す。プレイヤーの行手を邪魔するオットセイ、鳥、シロクマを模した敵キャラクター“氷山の住人”を掻い潜って、32種類の氷山制覇を目指す。

 2人プレイでは、1人だけが味方を無視してどんどん上に登っていくと、下層に取り残されたプレイヤーはミスとなる。当時のファミコンソフトの特性として、協力プレイのつもりが友だち同士での“リアルファイト”になることも“あるある”だった。

1985年4月9日発売のファミコンソフト『サッカー』(任天堂公式HPより)

・『ギャラガ』3月14日ーナムコ

 ゲームセンターで大人気のアーケードゲーム『ギャラガ』をファミコンに移植した作品。宇宙空間で編隊を組んで飛んでくる昆虫のような敵「ギャラガ」を全て撃破するとステージクリア。ボスキャラが放つ“トラクタービーム”を自機が受けると一時的に“捕虜”となり、新たな自機で救助すると合体して「デュアル・ファイター」に。

 1機を失うリスクがあるためにトラクタービームを回避するか、それとも攻撃力アップを優先するかでプレイスタイルも分かれた。

・『サッカー』4月9日ー任天堂

 ファミコン初のサッカーゲームで、操作方法は「十字ボタン」と「Aボタン(シュート)」「Bボタン(パス)」とシンプルで、選手はキーパーも含めて6人と現在のフットサルに近い。現在のサッカーゲームのように戦術や多彩なモーションはないが、オフサイドルールも適用され、ハーフタイムでなぜか「チアリーディング」応援演出もあったり、制作者のこだわりと情熱がうかがえる。大人気だった『キャプテン翼』の影響もあってか、153万本を売り上げた大ヒット作。

ジャッキー・チェン人気でカンフーゲーム

1985年5月10日発売のファミコンソフト『忍者くん魔城の冒険』

・『イー・アル・カンフー』4月22日ーコナミ

 ジャッキー・チェンら香港スターによるカンフー映画人気の真っ只中、主人公がカンフーを駆使して“棒使い”や“チェーン使い”といった敵キャラを倒していく格闘ゲーム。2プレイ対戦こそできないが、1対1でライフゲージを削り合うゲームシステムは以後の対戦格闘ゲームの基礎を作った。

 ちなみに任天堂HPを確認すると、個性豊かな敵キャラたちは《悪行を重ねるチャーハン族》とのこと。40周年にして初耳の情報である。

・『忍者くん 魔城の冒険』5月10日ージャレコ

 赤い忍び装束をまとった「忍者くん」が、岩場やお城に巣食う敵忍者や妖怪を手裏剣で倒してお姫様を救出。クリアするごとに難易度が上がっていき、コンテニュー機能がなかった時代、ゲームオーバーで最初から何度も挑戦し直すのもファミコンゲーム“あるある”。同じく1985年11月15日発売の『忍者じゃじゃ丸くん』にもつながる人気シリーズに。

1985年6月21日発売のファミコンソフト『スパルタンX』(任天堂HPより)

・『ちゃっくんぽっぷ』5月24日ータイトー

 見た目に可愛らしい「ちゃっくん」が主人公で、さまざまな仕掛けがある迷路状のステージ内で捕獲された「ハート」を開放していくアクションゲーム。この「ちゃっくん」が見た目とは裏腹に、天井に逆さに張り付いたり、足が伸びたり、はたまた爆弾を扱ったりと“クセ強め”なキャラクター。パズル要素もある世界観に、思わずハマった人も多いのでは?

・『スパルタンX』6月21日ー任天堂

 1984年公開のジャッキー・チェン主演映画『スパルタンX』を題材にしたゲーム。主人公「トーマス」が囚われた恋人「シルビア」を救出するため、ステージに現れる「掴み男」ら敵、各階のボスキャラを倒していく。映画との版権上の問題か、一時は『KUNG FU』(クンフー)のタイトルに変更されての販売され、現在はレアソフトとしてレトロゲーム界隈で高値取引されている。

 ステージ24周クリアすると、助けたはずのシルビアが敵となって襲ってくる、などと当時の漫画作品で描かれた“デマ裏技”も広がるなど、何かと物議を醸した名作でもある。

高橋名人の「16連射」が冴え渡る

・『ハイパーオリンピック』6月21日ーコナミ

 当時、1984年のロサンゼルス五輪で、4種目で金メダルを獲得したカール・ルイス人気の背景もあってか、オリンピックを題材にしたスポーツゲームとして発売。競技の勝敗を決めるのはとにかく“連打”。新記録を出したい、友だちに勝ちたいがためにメダルや硬貨でボタンを擦ったり、定規をしならせた反動で弾いたりと連打連打。おかげでコントローラーボタンをつぶしてしまう“オリンピアン”も続出。

 ちなみに1986年に発売した、マット型コントローラーの上で実際に走ってゲーム操作する『ファミリートレーナー』と混同しがちだが別ゲーム。

・『スターフォース』6月25日ーハドソン

 宇宙戦闘機を操作してパワーアップをしながら空中の敵機、地上物を撃破していくシューティングゲームの金字塔。ハドソン主催の全国大会「ゲームキャラバン」の種目にもなり、ハイスコアを目指して何度も繰り返してプレイして競い合った姿は、現在の『eスポーツ』にも通じる。

 後継作『スターソルジャー』(1986年)ではさらに熱が高まり、高橋名人と毛利名人によるゲーム公開対決はなんと映画化。オープニングで高橋名人が「16連射」でスイカを真っ二つに割る演出に、子どもたちは度肝を抜かれた。

1985年8月6日発売のファミコンソフト『ドルアーガの塔』(任天堂HPより)

・『ロードファイター』7月11日ーコナミ

 運転席からの視点が多いレースゲームにおいて、当時としても珍しく、自車を空から見下ろすビューイングでのプレイ。最高速は時速400キロ、コース上に撒かれたオイルに触れるとスピンを起こし、幅寄せして邪魔してくる敵車にぶつけられると大爆発したりと、子ども心に「運転の怖さ」を思い知らされた。

・『ドルアーガの塔』8月6日ーナムコ

 主人公の騎士「ギル」が60階建ての塔の最上階を目指して、悪魔「ドルアーガ」に囚われたヒロイン「カイ」を救い出すアクションゲーム。迷路になっている各階ステージのカギを探し、また宝箱に隠されたアイテムを活用するなどRPG要素も高かった。今なら攻略サイトでクリア方法を得られるが、当時は“ノーヒント”の謎解きが難解すぎて“自力クリア”を諦めるプレイヤーも続出。ソフトに加えて、ファミコン雑誌や攻略本も売れに売れた時代だった。

・『バトルシティー』9月9日ーナムコ

 戦車型の自機「タンク」を操作して、自軍の司令基地を防御しつつステージ内の敵機全滅でクリアとなる、攻守バランスが求められる戦略的アクション。2人同時プレイでは、1人が守り、片方が攻めるなどの協力プレイが熱い。またコースレイアウトを自分で作成できる「エディット機能」も搭載され、お互いに自作ステージを作り合う楽しみも。

“ブロッケン禁止”のローカルルール

・『チャレンジャー』10月15日ーハドソン

 映画『インディー・ジョーンズ』を彷彿させる考古学教授の主人公が、悪の組織に拐われた王女を救うべく、投げナイフを武器にトラップが仕掛けられた各ステージに挑む。隠しボーナスや裏技も盛りだくさんで、中でもステージ1の列車上でBGMに合わせてのボタン入力で出現する「空飛ぶまっとうくじら」。無敵状態になれる裏技を誰もが1度は試したはず。

 今では“バグ”とされるプログラム上の不具合も、当時は裏技とされて、見つけたらヒーローになれた時代。この『チャレンジャー』は、計算された“バグ”を裏技に盛り込んだ代表的ゲームとも言えよう。

・『キン肉マン マッスルタッグマッチ』11月8日ーバンダイ

 ご存知、人気漫画・アニメの『キン肉マン』のキャラクターがリング上で試合する、2人プレイ対戦も楽しめる格闘型ゲーム。8人の人気超人から好きな2人を選ぶ、オリジナルタッグによる対戦が熱い、バンダイのファミコン初参入にして105万本を売り上げた、今でも楽しめる名作。

 各キャラは原作でもお馴染みの必殺技が備えているが、「ブロッケンJr.」の毒ガス攻撃は反則的に“ハメ”やすく、“ブロッケン禁止”のローカルルールが定められることも。キン肉マンのテーマの一つである「友情」だが、時に友情を壊しかねないゲームとしても知られた。

1985年11月28日発売のファミコンソフト『いっき』

・『パックランド』11月21日ーナムコ

 1984年発売の『パックマン』を、スーパーマリオのような横スクロールアクションに一新。大きく口を開けてクッキーを食べる“頭”だけの前作から、目や口、鼻がつけられて手足も伸びてパワーアップしたパックマン。爽快にステージを駆け抜ける姿に驚かされたが、何より衝撃だったのがゴールの自宅で待っていた妻子。家庭持ちだった事実。

・『いっき』11月28日ーサンソフト

 いわゆる「百姓一揆」を題材にしたゲームで、2人の農民が(2人同時プレイ可)一揆を起こし、鎌を武器に忍者らを倒しながらフィールド状の小判を集めるアクションシューティング。“クソゲー”談義には必ず名前が上がる本作だが、そのバカバカしくも憎めないゲーム性と、クセの強い操作性が逆に癖になる愛すべき作品。

 2024年にはニンテンドースイッチ版『いっき団結』も販売され、最大16人によるマルチプレイにパワーアップ!もう2人だけの一揆とは呼ばせない。

ネットスラングで使われるゲーム用語

・『ポートピア連続殺人事件』11月29日ーエニックス

 主人公の刑事(ボス)と相棒「ヤス」が、神戸などで起きた殺人事件の真相と真犯人に迫るファミコン初の推理アドベンチャーゲーム。『ドラゴンクエスト』シリーズの生みの親・堀井雄二氏が手がけたゲームで、最後に明かされる「真犯人」には度肝を抜かれた。40年経った今も「犯人は◯◯」との、“ネタバレ”を意味するネットスラングも使われている。

1985年12月7日発売のファミコンソフト『スペランカー』(任天堂HPより)

・『スペランカー』12月7日ーアイレム

 ちょっとした段差で落ちてもミス……ゲーム史上最弱とされる主人公が洞窟内の秘宝を目指す探検型アクション。すぐミス扱いになる理不尽さにイライラして、コントローラーを投げ出したプレイヤーも多かったのか、現在も“クソゲー”の代名詞ともされる本作。とはいえ、コースレイアウトやアイテム配置なども緻密に計算された、実は大人になってから楽しめる通好みのゲームとも言える。

 ケガや故障の多いスポーツ選手などを指すネットスラング、“スペ体質”の語源にもなたとおり、それだけ記憶に残り続けたゲームなのだろう。

・『超時空要塞マクロス』12月10日ーナムコ

 テレビアニメ『超時空要塞マクロス』を題材にしたシューティングゲームで、戦闘機からロボットに3段階に自由変形できる可変機能が少年の心を鷲掴み。とはいえゲーム難易度は高く、「安全地帯」や「無敵」などの裏技なしでのクリアは至難の業。BGMで流れる、アニメ劇中歌『小白龍』のメロディーを懐かしむプレイヤーも多いだろう。

1985年12月11日発売のファミコンソフト『1942』(任天堂HPより)

・『1942』12月11日ーカプコン

『モンスターハンター』『バイオハザード』『ストリートファイター』などの大ヒットシリーズを生み出した、カプコン記念すべきファミコンソフト第一弾。第二次世界大戦が背景も、プレイヤーが操作するのは米軍戦闘機。日の丸をつけた日本軍を相手に、ミッドウェーやサイパンのほか、硫黄島や沖縄などの全32ステージで敵機を殲滅する。時代背景を知る今となっては、少々センチになるゲームだ。

・『オバケのQ太郎 ワンワンパニック』12月16日ーバンダイ

 藤子不二雄による漫画、アニメ『オバケのQ太郎』の世界観をゲーム化。主人公「Q太郎」が犬の攻撃をかわしつつ、アイテムを集めてゴールを目指すのだが、ゲーム中に減り続けるパワーゲージの管理がとにかく難しい。当時は全面クリアする猛者もわずかで、今でもエンディグがあるのかどうかも定かではない。

 通常ソフトの色は淡いイエローだが、イベント企画の景品となった非売品のゴールドソフトは、十万円の値もつくお宝ソフトになっている模様。もしも実家に眠っているのなら探したい。

ファンシーな世界観でいじわるプレイ

1985年12月19日発売のファミコンソフト『ボンバーマン』(任天堂HPより)

・『ボンバーマン』12月19日ーハドソン

 ステージ上のキモかわいい敵キャラを爆弾で倒し、ブロックで隠された出口でクリアできる。アイテムをとると爆弾がパワーアップしていくも、強化しすぎてプレイヤーも爆風に巻き込まれることも。続編シリーズでは対戦プレイも可能になり、アイテムの取り合いや爆弾配置などの駆け引きも楽しめた。

 公式によると主人公の「ボンバーマン」は、『ロードランナー』(1983年)の主人公「ランナーくん」の過去の姿とのこと。エンディングで明かされる“繋がり”が胸熱。

・『ぺんぎんくんwars』12月25日ーアスキー

 主人公のペンギンくんがパンダやクマ、コアラを相手に「ドジボール」大会優勝を目指す、“ドッジボール”型アクション。コート上の10個のボールを全て敵陣地に投げ込めばクリアだが、相手も負けじと投げ返してくるので、いかに相手にぶつけてダウンさせるかが勝敗のカギ。見た目かわいいファンシーな世界観とは裏腹に、いじわるプレイを楽しんだりと単純だからこそ性格が出るゲームだった。

 他にも紹介しきれない、各々にとっての思い入れがある、スーパーマリオブラザーズにも劣らない1985年の特別なソフトもあるだろう。年末年始の冬休みにプレイしてみれば、懐かしさと同時に当時とは少し違ったファミコンの楽しさを再発見できるかもしれない。