福岡県警中央署は12月15日の早朝、同県糸島市に住む無職の山口直也容疑者(30)を殺人未遂の疑いで緊急逮捕した。
山口容疑者は前日の14日夕方、福岡市中央区にある『みずほPayPayドーム福岡』の敷地内で、アイドルグループ『HKT48』のスタッフ男性(44)の胸を持参していた包丁のような刃物で刺し重傷を負わせたというもの。
《福岡刺傷事件》犯人の逃走劇
事件現場はドーム1階にある関係者用駐車場のエレベーターホールだった。
「そこから容疑者は逃走をはじめ、隣接するHKT48劇場が入った商業施設『BOSS E・ZO FUKUOKA』1階のエレベーターのところで、PayPayドームで行われていた『Hay! Say! JUMP』のライブを観終わり、友人と待ち合わせをしていた女性(27)の背中を再び刺して逃げたのです」(地元紙社会部記者)
男性は重症、女性は軽傷を負ったものの、幸いにも2人とも命に別状はなかった。一方、容疑者の逃走劇は9時間後に意外な形で幕が降りる。
「15日午前2時過ぎ、現場からおよそ12キロ離れた同県春日市のコンビニ近くの公衆電話から“事件の男を見た”という110番通報がありました。警察官が駆け付けたところ、“本人だ”と自供したわけです。
バッグには、12月に入って事前に準備していた2本の包丁(うち1本は血痕が付着)と、2本の催涙スプレー、1本の殺虫スプレーが入っていたから、計画的な犯行だったことは明白です」(同・社会部記者)
HKT48劇場は、ホームページでスタッフが刺された記述とともに、
《本日、劇場は休館日でしたが、隣接する事務所内にいたメンバーは全員安全に退避しております。また、状況を鑑み、HKT48 19thシングル『半袖天使』劇場盤発売記念『オンライン握手会』におきましては、8部以降のオンライン握手会を中止とさせていただきました。
今回の事件を受け、メンバー・スタッフの安全を確保すべく、施設側とも協議を行い、さらなる警備強化を実施してまいります》
とコメントを公開。17日からの劇場公演に加えて、18日以降のクリスマスなどのイベントへの出演も辞退すると発表した。
謎が多い容疑者の生活ぶり
実は山口容疑者はHKTライブの常連客であった。ただ、別の地元メディア記者は、禁止されていた出待ちなどの迷惑行為を繰り返す要注意人物としてスタッフは認識していたと明かす。
「13日、14日とメンバーが事務所内でファンとのオンラインイベントを行っていて、容疑者は前日から劇場周辺をウロウロと徘徊していた。現場のエレベーターホールはメンバーがSNSの自撮り写真を撮影するところで、容疑者は付近にいるようだという情報を聞きつけたスタッフが出向き、“迷惑行為を繰り返すなら出禁にする”と警告。
容疑者から刃物を向けられたようです。本来は“メンバーを殺して自分も自殺するつもりだった”などと自白しているといいます」
アイドルを巡るトラブルが、またしても事件へと発展してしまった。そして、もう一人の被害者女性は、とんでもないとばっちりを受けたことになる。
容疑者は、現場から約23キロ離れた同県糸島市のアパートでひとり暮らしをしていた。建物は築30年近い3階建てで、間取りは1K、家賃は3万円ほどだった。
郵便ポストには手紙や封書がパンパンに溜まっており、ベランダにも洗濯物が干しっぱなし。窓にはカーテンすらついておらず、
「夜中でも電気がついているから、光が漏れてきて明るすぎてねぇ……」
と、顔をしかめる近隣住民もいた。
同アパートの住人のおよそ70%がネパールやベトナムから留学やアルバイトで来ている外国人。そのほとんどが容疑者のことを知らなかった。日本人の住人もほぼ同様だったが、1人だけ、
「挨拶はしたことないけど、1年ぐらい前に引っ越してきたんじゃないの。170センチ、90キロぐらいで、顔つきはあんな事件を起こすような感じじゃなく、優しそうな顔やったけど。ただ、600万円ぐらいする最新型の白いレクサスRXに乗っとったね。ええ、それが異様やった。駐車場代だって、月5000円はするし……」
と証言した。この車こそ、事件当日、山口容疑者がドームまで乗りつけ、逃走の際に乗り捨てていった車だった。別の近隣住民も、車はよく覚えていた。
「1年ちょっと前からずっと停まってばかりでね。最初は違法駐車かと思うとった。数か月前、警察が来て、車をずっとのぞき込んどったから、なんか、事件でも起こしたのかと」
しかし、容疑者が車に乗るのは珍しかったようで、
「買いものに乗っていくこともほとんどなかった感じで、ずっと部屋にこもっていたんじゃないの。乗るときは、いつも上下黒っぽい地味な服だったけど。いつも一人で、誰かと乗っていることなんてなかった」(同・近隣住民)
という。
金の出どころなど謎の多い生活ぶりだったようだ。早期の真相究明が待たれる。
