'26年の干支(えと)は、丙午(ひのえうま)。昔から「大火が起きる年」などと言われ、ネガティブな印象を持ってしまいそうだが……。
午に所縁のある神社を巡りチャンスをつかめる1年に!
「丙午は、言葉の音から“火の馬”を彷彿(ほうふつ)させるので、マイナスに捉えられがちですが、火は陽や魂を指す言葉でもありますから、自分の情熱に火を灯(とも)すとも考えられます。
また、時刻を表す正午という言葉からわかるように、十二支の午が指す“午の刻”というのは、1日の真ん中。したがって、人生の潮目やターニングポイントになり得る1年だともいえます。
この年に、火の神様や馬にまつわる神社へ参拝に上がることで、気力が満ち溢れ、新たな挑戦やチャンスをつかむきっかけをいただけるのではないかと思います」
そう教えてくれたのは、神社ソムリエの佐々木優太さん。さらに、初詣ではぜひ前向きな気持ちで神社へ上がってほしいと進言する。
「神社への参拝は罪・けがれを祓(はら)い、本来の自分に整えてくれます。自分をリセットして、よい1年にしようという心持ちで初詣をされると、自然とよい巡りが回ってくる年になるはずですよ」
十干十二支って何?
「干支とは、甲(きのえ)、乙(きのと)といった十干(10の暦の呼び名)と12の動物からなる十二支の組み合わせ“十干十二支”を指します。
令和8年は、十干が丙、十二支が午なので、干支は丙午になります。午年は12年に1度ですが、十干十二支が一回りするのには60年かかるため、丙午は60年ぶり。還暦が60歳というのもこういうゆえんです」(佐々木さん、以下同)
参拝マナーは“社会”で生かしてこそ開運できる
◆基本の参拝手順
【鳥居の前で一礼】
鳥居は神域と一般社会の区切り。一礼してから入ること。参拝後も拝殿のほうを振り返って一礼してから帰る。
【参道は中央を避けて歩く】
真ん中は神様の通り道とされるので、避けて進む。中央を横切るときは、拝殿へ向かって一礼してから。
【手水舎で心身を清める】
両手を清め、口をすすぐ。
【二拝二拍手一拝で拝礼】
お賽銭をした後に拝礼。最後の一拝前の手を合わせているときに、心を込めてお祈りする。
「神社での所作を難しいと思う人もいるかもしれませんが、例えば目上の人の家を訪問するときと同じと考えてみてください。玄関で挨拶をしない、家の中を横柄に歩く、なんて人は嫌がられますよね。
神様へはお願いだけでなく、参拝に上がれたことの感謝や喜びを伝えたほうがよいとされるのも、普段から誰かに会ったとき“会えてうれしい”と口にする人が好かれるのと同じ原理。
“神社で会う”と書いて社会というように、神社での所作が社会や人生の所作に通ずるというわけです。神社での行動を日常で実行してこそ、御神徳がいただけるのです」(佐々木さん)
丹生川上神社(中社)【奈良県】
絵馬発祥の地でその歴史に願いをのせて
日本最古の水神を祀る、川沿いの神社。
「三社からなる神社で、絵馬発祥の神社の一社と伝わっています。そのルーツをたどると、もっとも古い記録では1260年以上も昔。ご祭神である水の神様に馬を奉納する祈雨祈願が行われたのが始まりとされ、そこから現代の絵馬につながっているとされています」
境内には、黒部ダム竣工を記念して奉納された特大の「祈雨止雨祈願絵馬」もあり、見応えがある。
TEL:0746-42-0032 HP:https://niukawakami-jinja.jp/
帯廣神社【北海道】
力強い“ばん馬”が運を牽引してくれる!
日本で唯一、帯広市のみで開催されている「ばんえい競馬」と縁深い神社。
「鉄ソリを引いて走る競走馬の“ばん馬”は、パワーとスタミナに長けた存在ですから、さまざまな事柄に対して、力強く引っ張って前進させてくれると思います」
また、境内の神馬も見どころ。「実は、歌手の中島みゆきさんの祖父・武市さんが奉納されたものなんです」
毎年元旦には帯広畜産大学馬術部による馬上参拝も。
TEL:0155-23-3955 HP:https://www.obihirojinja.jp/
新琴似神社【北海道】
人と馬が支え合って開拓した歴史がパワーに
「北海道では、開拓時に力を貸してくれた馬を家族のような存在として扱い、感謝する文化がありますが、こちらの神社では、特にその風土を感じられます。
農耕馬へ思いを込めた“馬魂碑”や開拓100年を記念した“拓魂碑”など、開拓に心血を注いだ人と馬の関係と歴史に思いを馳(は)せれば、未来を切り開く力をいただけるのではないでしょうか」
授与品には馬が描かれたお守りやおみくじも。
TEL: 011-761-0631 HP:https://shinkotonijinja.or.jp/
鬼首 荒雄川神社 境内 主馬神社【宮城県】
大事にもひるまない馬の神様が禍をはねのける
明治天皇が愛した御料馬「金華山号」をご祭神として祀る主馬(しゅめ)神社。
「この地域で生まれた『金華山号』は、何事にも一切ひるむことなく、生涯を通じて堂々と天皇をお支えしたと伝えられています。大砲が鳴り響く軍事演習でも、全くたじろぐことがなかったとか。
火を彷彿とさせる丙午の年に火炎や爆音にも負けなかった伝説の神馬のあやかりを受ければ、1年を難なく過ごせるのではないかと思います」
TEL: 0229-84-7293 Instagram:@araogawa.jinja
※冬季(12月から4月ごろまで)は、雪のため閉鎖(12月31日23:00ごろ~1月1日7:00ごろは参拝可能)、お守りや絵馬、御朱印などは冬季でも社務所でいただける
風巻神社【新潟県】
騎馬戦の天才・上杉謙信が信頼した風の神
「強力な騎馬隊を用いて戦国の世を戦った上杉謙信が必勝祈願に上がったと伝わるお社です。勝負事が控えている人はぜひ参拝に上がっていただきたい。
祀られているのは、風の神様である級長津彦命(しなつひこのみこと)ですから、追い風をいただけるのではないかと思います。また、現在は、“鉄の馬=バイク”の愛好者が集う神社としても有名。時代を超えて“馬乗り”が集まっています」
静岡浅間神社【静岡県】
一心に祈れば何事も成就させる“叶え馬”
“おせんげんさん”と呼ばれ、江戸時代から信仰を集めてきた歴史ある古社。国の重要文化財に指定されている総漆塗りの荘厳華麗な社殿群も見応えがあり、多くの人が参拝に訪れるが
「なかでも地元の人が頼りにしているのは、境内の神厩舎にいらっしゃる木造の神馬。日光東照宮の眠り猫を彫った左甚五郎の作品だとされ、願いを込めて祈れば何でも叶うとされることから“叶え馬”と呼ばれて愛されています」
TEL:054-245-1820 HP:http://www.shizuokasengen.net/
大杉神社 境内 勝馬神社【茨城県】
競馬ファンが集う社で“勝ち馬に乗る”運にあやかる
1100年以上前、馬櫪社(ばれきしゃ)として馬を守護する神様を祀っていたのが始まり。
「戦前までは境内で競馬(草競馬)が催されており、今もJRA(日本中央競馬会)の美浦トレーニングセンターが近くにあることから、多くの競馬関係者やファンが参拝に上がって必勝祈願をされています」
馬の蹄鉄(ていてつ)を用いた絵馬や力強い騎馬が描かれた御朱印など、授与品も“馬づくし”。
霞神社【宮崎県】
白蛇様と午の守護神から2年分の庇護をいただく
700段の石段を上った先にある山頂の社。
「巳年から午年に変わる今のタイミングにうってつけの神社がこちらです。境内には白蛇がいらっしゃるといわれ、白蛇様を拝する祠があります。また、牛や馬など人間に力を貸してくれる動物の守り神としても崇敬されています。蛇と馬が描かれた御札も授かれます」
境内からは雄大なご来光を拝むことができ、それを目当てに訪れる参拝者も多い。
高岡神社【岡山県】
深山に鎮座する大火を逃れた女性の守り神
「その昔、社殿が火災に遭ったときに一人の女性が命を顧みずご神体をお守りしたという伝説が残り、そこから女性の守り神としていらっしゃる神社です。女性の願いを必ず1つ叶えてくれるとされ、遠方からも多く参拝に上がっています」
さらに神馬にも言い伝えが。
「先の大戦中に姿を消したのですが、終戦後にどこからともなく戻ってきたとされ、戦禍を逃げ切った馬だと尊崇されています」
TEL:0866-52-3659 HP:https://takaoka-jinja.com/
絵馬っていつから?
古来、水の神様へ雨乞いに黒馬を、雨止めに白馬あるいは赤馬を奉納したのが絵馬の起源。
奈良時代に入ってからは生馬の代わりに「木馬や大きな板に馬の絵を描いたものを献上するようになりました。それがコンパクトになっていき、全国に広まったとされています」
※特集内の金額は、御初穂料です。
教えてくれたのは……神社ソムリエ 佐々木優太さん●神社ソムリエ、ミュージシャン。“現代の御師”を標榜し、全国の神社に残る神話やその土地の伝承などをさまざまなメディアで伝える活動を行う。ゲッターズ飯田氏との共著『幸せ舞い込む! あなたの開運神社』(朝日新聞出版)も。
取材・文/河端直子

