大河ドラマに朝の連ドラ、民放各局による話題作に異色作まで。今年もさまざまなドラマが誕生し、善かれあしかれ世をにぎわせてきた。そこで、30代~60代の男女1000人にアンケート。2025年の「よかった」ドラマは何ですか?
まずはよかったドラマを漫画家でドラマウォッチャーのカトリーヌあやこさんと共に、ランキングを発表しよう。
竹内涼真の代表作になった話題のTBSドラマ
5位は『じゃあ、あんたが作ってみろよ』(TBS系)。
アンケートには「竹内涼真がハマり役」(福岡県・50歳・女性)、「時代の価値観の変化をうまく風刺していた」(埼玉県・56歳・女性)、「細やかな心理描写が反映され共感しやすい」(大阪府・36歳・女性)との声が集まり、50票獲得。
恋人ファーストで自分を見失うヒロインを夏帆が、「料理は女が作って当たり前」という亭主関白思考の彼氏を竹内涼真が演じ、話題を集めた。
「2025年後期一番といっていいドラマ。竹内さんが当たり役で、もう本当にウザくて腹が立つんだけど、好感が持てる。そのさじ加減がうまい」とカトリーヌさん。ラストは意外な展開で、SNSの反応は二分した。
「単にウザい男のあるあるを描くのではなく、ヒロインたちの成長物語になっていてとても見やすかった。結末は賛否両論あったけど、これは続編が期待できる終わり方。スペシャルもあるのでは?」
4位は『続・続・最後から二番目の恋』(フジテレビ系)。
「初老前の男女の肩の力を抜いたナチュラルさ」(大阪府・61歳・男性)、「演者のかけ合いが絶妙。主人公に共感」(埼玉県・62歳・男性)、「最初のシリーズから見ていて、出演者の年のとり方に自分を重ね合わせた」(愛知県・64歳・女性)と、57票。
2012年の『最後から二番目の恋』、'14年の『続・最後から二番目の恋』に続く人気シリーズ第3弾で、小泉今日子と中井貴一が引き続きW主演を務めた。
「小泉さんはアラ還の役だけど、すごくチャーミングでちょっとした不良性がある。一方の中井さんはまっとうな大人感があって受け止める芝居が達者。2人のコンビの良さが根強い人気の理由」(カトリーヌさん、以下同)
アンケートには、「シリーズを通して見ている」という声が多数寄せられた。
「月9の全盛期にトレンディードラマを見ていた世代がシニアになって、彼らにフィットした。小泉さんはカフェが併設された鎌倉の家に住む、ドラマプロデューサーの役。ちょっとおしゃれで、等身大より憧れの部分が入ってる。これはトレンディードラマの極意。キラキラを見せてくれた、非常にフジテレビらしいドラマ」
競馬に魅せられた人々を描く
3位は『ザ・ロイヤルファミリー』(TBS系)。
「妻夫木聡がいい」(群馬県・57歳・女性)、「実在の騎手もゲスト出演し見どころがある」(東京都・51歳・男性)、「人間と馬、それぞれの継承の難しさを軸にストーリーが進んでいくので重厚感があり、かつわかりやすい」(東京都・58歳・男性)と、70票。
競馬に魅せられた人々を描いた20年にわたる物語で、主演は妻夫木聡、共演には佐藤浩市ら豪華キャストが出演。
「妻夫木さん演じる主人公は競馬の門外漢だったけど、佐藤さん演じる馬主に惹かれ競馬の世界に入っていく。妻夫木さんの泣きは見どころの一つ。ぼろぼろ涙をこぼす人情全開泣きで、ザ・日曜劇場という感じの熱さ」
劇中では武豊ら実在の騎手も登場し、競馬ファンが盛り上がる一幕も。
「佐藤さんチームはなかなか勝てなくて、最終回で思わぬオチがつく。最後はカタルシスが残される。まさに日曜日のお父さんのためにあるドラマでした」
2位はNHK大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』。
「主人公の江戸のイノベーターとしての魅力、江戸の文化を深く掘り下げる新感覚のストーリー」(愛知県・33歳・男性)、「黄表紙や浮世絵がどのように創造され、エンターテインメントとしてどのような存在だったのかわかった」(東京都・55歳・男性)、「一人ひとり個性的で魅力的。久々に完走できそうな大河」(大阪府・53歳・女性)と、99票。
江戸のメディア王・蔦屋重三郎を題材にした物語で、横浜流星が主演を務めた。
「モデルの蔦重は今でいうスーパー編集者。私自身、浮世絵や江戸時代のカルチャーに興味があるので、めちゃめちゃ面白く見てました」とカトリーヌさん。蔦重にスポットを当てたことで、従来の大河とはまた違った楽しみも。
「大河ドラマって残りわずかとなると、この先どうなるかわかってくる。織田信長は本能寺の変で死ぬし、新選組は勝てないとわかっているから、予定調和でみんなが知ってる結末に向かう。でも蔦重はどうなるかわからないワクワク感がある。そういう意味でも今までにない大河でした」
有名キャラを生んだ夫婦の物語が1位に
1位はNHK連続テレビ小説『あんぱん』。
「毎日共感できるシーンがどこかにある喜怒哀楽にあふれた作品だった」(東京都・56歳・女性)、「子どもや孫も大好きなアンパンマンの誕生物語を知ることができた」(神奈川県・65歳・男性)、「俳優陣が素晴らしい演技で毎日楽しみに見てました」(埼玉県・62歳・女性)と、134票獲得。
アンパンマンの作者・やなせたかしさんの妻、暢がモデル。今田美桜がヒロイン・のぶを、北村匠海が夫の嵩を演じ、脚本は中園ミホ。
「アンパンマンという誰もが知るキャラクターがいかにして生まれたのか、みんなが興味を持つ題材だった。今田さんと北村さんの若いコンビがひたむきに演じていたのも好感を持たれた」
印象的な場面に、嵩たちが餓えのあまりゆで卵を殻ごと貪り食うエピソードを挙げる。
「戦争とそれがもたらす餓えをなくしたいという思いが、アンパンマンを生み出すきっかけになった。戦争に左右されない正義を心に持ちたい、というテーマを全編通して丁寧に描いたドラマでした」
2025年を振り返り、カトリーヌさんが総論を語る。
「今年は流行語大賞にノミネートされるような大きな話題作がなかった。テーマが限定されがちで、みんなが見るようなドラマがありませんでした。誰もがテレビを見る時代ではなくなり、コアな層に刺さればよしとして制作されたドラマもあった気がします。小粒だけど、絞ったテーマをじっくり描く、そんなドラマも面白い。それを感じた一年でした」
さて、2026年のドラマは? どんなヒット作、問題作が生まれるか─。
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<取材・文/小野寺悦子>
