2025「がっかり」ドラマ大賞TOP5

 大河ドラマに朝の連ドラ、民放各局による話題作に異色作まで。今年もさまざまなドラマが誕生し、善かれあしかれ世をにぎわせてきた。そこで、30代~60代の男女1000人にアンケート。2025年の「がっかり」ドラマは何ですか?

 漫画家でドラマウォッチャーのカトリーヌあやこさんと共に、ランキングを発表しよう。

謎が多すぎてついていけなくなった?

2025年11月3日、ドラマ『ちょっとだけエスパー』撮影に参加した大泉洋

 がっかりドラマのランキング。ワースト5は─。

 5位は『ちょっとだけエスパー』(テレビ朝日系)。

「エスパーとしては中途半端な物語だった」(神奈川県・67歳・男性)、「都合よく進む展開に飽きがきた。コメディー色が強すぎ」(愛知県・33歳・男性)、「設定は面白いのに内容がふざけすぎ」(大阪府・49歳・男性)と、25票。

 ヒットメーカーの野木亜紀子脚本、主演は大泉洋と、人気者を集めたものの、

「花を咲かせたり動物と話せたり、緩い超能力者の話かと思っていたら、地球が滅ぶようなシリアス展開になって驚き」とカトリーヌさん。イメージしていた物語とのギャップに戸惑った、と振り返る。

「それはそれで面白いのだけれど、謎が多すぎて、いきなり見ると全然話がわからない。うかつに途中から入れない。それで脱落してしまった人も多かったのではないでしょうか」

NHK連続テレビ小説『あんぱん』ヒロインの今田美桜

 4位は「よかった」部門でトップの『あんぱん』。

「描写が安っぽく改悪されていてがっかり」(大阪府・36歳・女性)、「やなせさんがあまり良く描かれていなかった」(三重県・40歳・女性)、「やなせさんを主人公にしたほうが良かった」(愛知県・64歳・女性)と、43票。

「みなさん興味があるのは、やなせさんがどうやって作品を生み出してきたかということ。でも奥さんが主人公なので、彼女の姉妹の恋愛だとか、余分なエピソードが入ってくる。それよりもっとやなせさんの人生を見たい、という方がいたのでは」とカトリーヌさん。やなせ夫妻をモデルとしたオリジナルストーリーで、事実と反する部分もあった。

「積極的なのぶとちょっと情けない嵩が子ども時代に出会い、物語が始まる。でも史実は違って、2人は大人になってから新聞社で出会う。そうした創作部分に違和感を覚えるところがあったのかも」

3位ドラマの主演は櫻井翔

櫻井翔主演、日本テレビ『放送局占拠』では顔を隠した武装集団の正体が回を追うごとに明かされていく

 3位は『放送局占拠』(日本テレビ系)。

「間延びしすぎ。犯人がすぐわかり展開がお粗末」(東京都・65歳・男性)、「占拠シリーズはもういい」(東京都・61歳・女性)、「ワンパターンでつまらない。続編をする意味がわからない」(神奈川県・57歳・男性)と、49票。

『大病院占拠』『新空港占拠』に続く占拠シリーズ第3弾で、主演は櫻井翔。

「人質が誰も逃げられないというシチュエーションで、派手な仕掛けもありすごく漫画的。全然面白いとは思わないけれど、ついつい見ちゃう」

 とカトリーヌさん。それなりに固定ファンがついていたといい、その理由をこう話す。

「犯人は仮面をかぶっているので、あれは誰なんだろうと考察がはかどる。櫻井さんの決めゼリフが『嘘だろ』で、今回は何回『嘘だろ』と言うか、それらをただ楽しむドラマ。けれどシリーズ第3弾まできて、さすがに飽きたと言われると、そうだよなって思う」

『べらぼう』主演の横浜流星

 2位は『べらぼう〜』。

「江戸幕府も絡んでいて理解するのが難しかった」(千葉県・56歳・男性)、「大河ドラマにしてはスケールが小さく内容がイマイチ」(岩手県・69歳・男性)、「通常なら良いドラマだが、テーマが大河に合わない」(兵庫県・67歳・男性)と、62票。

「いわゆる定番の大河ドラマを求めている人にはちょっと厳しかった。大河とは戦国時代だ、幕末だ、という思いがあると、楽しめなかったかもしれない」

 とカトリーヌさん。大河には合戦のシーンが欠かせない、とはよくいわれるところ。

「浮世絵や江戸カルチャーに興味がないと入り込めない。テーマがターゲットを狭めてしまったところがあった」

大物脚本家と豪華俳優が出演もがっかり

ドラマ『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』キービジュアル(公式サイトより)

 1位は『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』(フジテレビ系)。

「スケールが大きくて話が飛びすぎ」(栃木県・42歳・女性)、「前評判に期待したが、見ていると疲れる」(岡山県・63歳・男性)、「脚本がテレビドラマには向いていなかった。舞台なら面白かっただろうと思うと残念」(東京都・69歳・女性)と、96票。

 三谷幸喜のオリジナル脚本、主演は菅田将暉と、鳴り物入りでスタートしたが。

「テーマは演劇、舞台は'80年代の渋谷で、シェイクスピアをストリップ劇場でやる。ターゲットが狭く、共感しにくかった」

 三谷の自伝的物語で、若き演出家の奮闘を描いた。

「小栗旬さんが蜷川幸雄役で出てきて、その顔を見た瞬間にもう全部許せちゃった(笑)。ただ、そういうことも含めて、'80年代と演劇に対して思い入れがないと興味が持てない。テーマの間口が狭くて、みんながついていけなかった」

 2025年を振り返り、カトリーヌさんが総論を語る。

「今年は流行語大賞にノミネートされるような大きな話題作がなかった。テーマが限定されがちで、みんなが見るようなドラマがありませんでした。誰もがテレビを見る時代ではなくなり、コアな層に刺さればよしとして制作されたドラマもあった気がします。小粒だけど、絞ったテーマをじっくり描く、そんなドラマも面白い。それを感じた一年でした」

 さて、2026年のドラマは? どんなヒット作、問題作が生まれるか─。

2025年「よかった」ドラマTOP5はこちら

<取材・文/小野寺悦子>

カトリーヌあやこ 漫画家&テレビウォッチャー。著書にフィギュアスケートルポ漫画『フィギュアおばかさん』(新書館)など