12月17日、茶色のジャケットにロングブーツを合わせた全身ブラウンのコーディネートに身を包んだ愛子さまが現れたのは埼玉県越谷市の埼玉鴨場。16か国の駐日大使を相手に鴨場接待に臨まれた。
「鴨場接待とは、皇室の方々が日本伝統の鴨猟を紹介しつつ、賓客をおもてなしする冬の伝統行事です。鴨場の池に飛来する野生のカモを傷つけずに捕獲する鴨猟を行った後、印をつけて放鳥するもので、過去には天皇陛下や雅子さま、子さんや佳子さまも経験されています」(皇室担当記者、以下同)
国際親善に関わる公務に合計で13回臨まれた
愛子さまは、冷たい空気を感じさせない和やかな面持ちで接待役を務められた。
「午前10時前に会場に到着すると、大使一人ひとりに“お会いできてうれしいです"と英語で挨拶をなさいました。その後、鴨猟を体験されたのですが、放鳥の際にカモが地面に横たわって動かなくなってしまうハプニングが。なかなか飛び立とうとしないカモに、心配された愛子さまは職員に“大丈夫ですか?”と声をかけ、横たわるカモの羽を時折そっと撫でられました。そのしぐさには愛子さまの優しさがあふれていました」
おひとりでの鴨場接待は愛子さまにとって初めて。それでも抜群の安定感で接待役を務めることができたのは1年を通して磨かれた外交力があったからだろう。
「2025年、愛子さまは国際親善に関わる公務に合計で13回臨まれました。2月は佳子さまとの鴨場接待、11月はラオスご訪問など、外交にまつわる初めての公務も多数経験される1年となりました」
ラオスには5日間滞在され、国家主席への表敬訪問や晩さん会に出席されたほか、現地の学校や小児病棟などを視察された。現地での愛子さまのお振る舞いについて、象徴天皇制に詳しい名古屋大学大学院人文学研究科の河西秀哉准教授はこう振り返る。
「愛子さまのまじめなご性格が随所に見られました。事前に多くのことを勉強され、晩さん会の挨拶も直前まで見直し、修正されていたそうです。現地の方々が天皇陛下の娘を迎えるにあたってさまざまな準備を重ねたことを理解し、相手側がどのようなことを自分に求めているかを意識したうえで、期待に応えようと努力されていたことが端々から伝わりました」
日本赤十字社の勤務との両立は当たり前ではない
特に晩さん会のおことばからは両陛下譲りの外交力がうかがえ、印象的だったという。
「愛子さまは晩さん会でのご挨拶にラオス語を交えていらっしゃいました。これは天皇陛下が各国を訪問し、おことばを述べられる際に必ず取り入れている手法です。さらに、愛子さまは用意した原稿を、ただ読み上げるのではなく、ラオス語の部分などは暗記されていたのです。ここに相手国への思いやりや高い外交力を感じましたし、国際派でいらっしゃるご両親の影響が見てとれました」(河西准教授)
鴨場接待やラオス訪問のご様子は大々的に報じられ、注目を集めた。その一方で、'25年の愛子さまは国民の目には留まりづらい場面でも卓越した外交力を発揮していた。
「各国の要人の来日に当たって御所で開かれた晩さん会や昼食会、お茶会の席にご両親とご一緒に合計で10回出席されたのです。愛子さまは学習院高等科のころから、お茶会や晩さん会終了後の懇談の場に顔を出し、ご両親と賓客との会話に加わられていました。学習院大学を卒業した2024年からは、そうした場へ正式に出席されるようになったのです」(前出・皇室担当記者、以下同)
ただ、2024年に海外の賓客を招いた席に愛子さまが立ち会われた回数は2回。それと比較すると今年は6倍以上と、飛躍的な増加を見せた。愛子さまが高い外交力をお持ちとはいえ、こうした席への立ち会いは誰にでもできることではないという。
「お茶会や昼食会では、賓客に失礼のないもてなしを行うだけでなく、会話の内容や所作にまで心を配り、相手国への深い敬意を示すことが求められます。そのためには、事前に相手国の歴史や文化について学んでおく必要があります。日本赤十字社での勤務と内親王としての公務を両立されている愛子さまにとって、準備の時間を確保することは容易ではありません。さらに、お茶会や昼食会は両国の友好関係にも影響を及ぼしかねない重要な場であることから、両陛下や皇太子が出席されることが多いのです。公務を担い始めて間もない愛子さまが、これほどの回数、ご出席されていることは、当たり前のことではありません」
愛子さまが出席されることは強力な外交
それでも愛子さまが各国の賓客を招いた席に積極的に出席される理由を前出の河西准教授は2つ挙げる。
「1つは雅子さまをサポートするという側面があると思います。雅子さまは2004年に適応障害を公表されており、ご体調はいまだ万全とは言いきれません。一方で、雅子さまは外交官として活躍された方。海外公式訪問や各国の要人をもてなす場で成果を発揮することは自信やモチベーションにつながるはずです。愛子さまは雅子さまが国際親善の場で気兼ねなく活躍できるようお支えしたいというお気持ちで同席されているのでは」
もう1つの理由は相手国との友好を最大限に考えられているからだという。
「以前まで海外の賓客を招いた席には主に両陛下、時折、皇太子夫妻が出席することが通例でした。しかし今は皇太子がおらず、それに値する皇嗣職の秋篠宮さまは今の天皇陛下の直系ではありません。秋篠宮ご夫妻がこうした場に出席されることもありますが、それに加えて陛下の直系である愛子さまが出席されることは強力な外交となるのです。天皇のひとり娘がおもてなしをされることは、賓客に対し“あなたたちを重視しています”という強いメッセージになります」(河西准教授)
国際親善の最前線に立ち続ける愛子さまの心中には、世界各国との友好を願う思いと母である雅子さまへの深い愛が息づいている─。
河西秀哉 名古屋大学大学院人文学研究科准教授。象徴天皇制を専門とし、『近代天皇制から象徴天皇制へ―「象徴」への道程』など著書多数
