出動回数が増加する救急隊(東京消防庁の公式Xより)

 12月中旬、X上で東京消防庁が【東京消防庁からのお願い】と題した投稿が広告として表示され、拡散されていた。

東京消防庁『何でも屋じゃありません』

「東京消防庁は《お酒を飲む前に、遊ぶ前に、少しでいいので自分に問いかけてみてください。「楽しい会で救急車を呼ぶことにならないように」》と綴り、忘年会シーズンに向けて過度な飲酒に対する注意喚起を行いました。

 投稿にはリンクが貼り付けられており、リンク先には『何でも屋じゃありません』としたうえで、《タクシーのように行きたい所へお連れできませんし、壊れた水道を直すこともできません。ただ、人の命を救いに行くことができます。それが私たち、救急です》と記されていました」(全国紙社会部記者、以下同)

「何でも屋じゃありません」東京消防庁の訴え(公式サイトより)

 東京消防庁からの悲痛な訴え。同庁によると、2024年の救急隊の出動回数は約90万回に及び、3年連続で過去最多を更新しているとのこと。

「過度な飲酒がきっかけで、救急車を呼んでいる人が多いというのは、当然のごとく、大問題です。救急隊の出動回数が増加し、負担を与えるだけでなく、本来、救われるはずだった命が失われてしまう危険性があります。忘年会・新年会でお酒を飲む機会が増えていくでしょうが、適度な飲酒を心がけていきたいですね」

 本投稿を広告運用した意図について、東京消防庁の広報課に問い合わせてみると、

「近年救急車の出場が増えており、当庁では救急車ひっ迫アラートの発信等を含め、救急車の適時・適切な利用にご理解をいただくための広報を展開しています。特に年末年始にかけては飲酒の機会が多くなり、つい飲み過ぎてしまい救急車の要請をすることになる方もいらっしゃるかと思います。

 病気やケガと異なり、お酒の場合は飲む前に少し意識していただくだけで救急車の要請までは至らないような状況が作れます。社会全体で協力して救急車を真に必要な方のもとへ向かわせるため、この時期に広報をして理解を深める機運を高めたいと考えています」

 と回答があった。

東京消防庁からのお願い

 同庁の公式サイトによると、『急性アルコール中毒搬送人員』は、2024年で、約14000人に上るという。2025年度の出動件数については、

「今年の年間救急出場件数についてですが、例年どおり高い水準で推移しており、現時点(2025年12月19日)での集計や過去の傾向を踏まえますと、概ね前年と同程度の93万件程度となる見込みです」(前出・東京消防庁広報担当者、以下同)

東京臨海病院の近くを走る救急車

 最後に東京消防庁からのお願いとして、次のように話す。

「冬季は、脳卒中や心臓疾患等、緊急度や重症度の高い方の救急搬送が多くなるのに加え、インフルエンザをはじめとする感染症の流行も重なり、一年で特に救急需要が高まります。当庁では、緊急度や重症度の高い方のもとへ一刻も早く救急車を向かわせるため、非常用の救急隊を増強して出場させる等、万全の体制で対応しております。

 日頃から救急車の適時・適切な利用推進にご理解をいただいているところですが、飲酒に伴う救急要請の中には、未然に防げるものも少なくありません。年末年始は、飲酒に伴う嘔吐や歩行困難、転倒による怪我等の救急事故も多くなります。 過度な飲酒は体調不良や怪我に繋がる恐れもありますので、お気を付けください」

 救急車を呼ぶか迷ったときの対応については、

もし、意識がはっきりしない、呼吸が苦しい等、いつもと違う場合や様子がおかしい場合は、ためらうことなく119番通報してください。

 また、病院に行くべきか、救急車を呼ぶべきか迷った時は、インターネットで病気やけがの緊急性を判断できる『東京版救急受診ガイド』をご活用いただくか、『東京消防庁救急相談センター(♯7119)』に電話してください」

 つい浮足立ってしまう年末年始の飲み会。ひとりひとりの心掛けが誰かの命を救うことに繋がるかもしれない。