2024年10月、『豊臣兄弟!』の出演者発表会見

 菅田将暉、竹内涼真、神木隆之介…、今の人気若手俳優を代表するようなメンバーだが、 彼らには共通点がある。それは1993年生まれであること。さらにいうと福士蒼汰、成田凌、間宮祥太朗、竜星涼、そして仲野太賀、彼らも全員93年生まれなのだ。

 そして全員が、連ドラの主演経験がある。これほど主演俳優を輩出する年も珍しく、ちょっと表現は古いが「花の93年組」という言葉がふさわしい。この錚々たるメンバーの中からトップで大河ドラマの主演に到達したのが『豊臣兄弟!』の仲野太賀だ。

遅咲きの仲野太賀

仲野太賀

 神木は5歳の時に出演した『グッドニュース』以来ずっと活躍し、菅田が22歳で『ちゃんぽん食べたか』や『民王』に主演して脚光を浴びたのに比べると、仲野は遅咲きだ。デビューこそ13歳と早かったが端役が多く、20歳を過ぎても売れない時期が続いた。世の中的に認知されたのは、2016年の『ゆとりですがなにか』だろう。主演の岡田将生を悩ませるモンスター後輩社員役で、その憎々しい名演で、「あの俳優は誰だ?」と思わせた。

 以後は『仰げば尊し』や『今日から俺は!!』などの個性的な役柄が続き、2020年に深夜ドラマ『あのコの夢を見たんです。』に山里亮太役で主演。21年『コントが始まる』では菅田、神木と3人でコントトリオを演じ、先行していた2人に追いついた。その後も『拾われた男』『初恋の悪魔』『ジャパニーズスタイル』『新宿野戦病院』と主演作を重ね、ついに大河ドラマの主演俳優にたどり着いたわけだ。

 仲野の魅力は何といっても、人懐こそうな人間味だろう。観ている人に安心感を与えるし、演じる役柄にも血が通って見える。ことに大河ドラマは、一人の人間の一生を約50回にわたって演じるため、人間臭さをさらけ出せるような俳優でないと成立しない。その点、仲野はうってつけといえよう。

 見た目のきれいさよりも人間的魅力が求められることが俳優の世界でもあり、女優でいえば伊藤沙莉がそうで、考えてみれば『虎に翼』の伊藤と仲野の夫婦は、短期間ではあったが絶妙なキャスティングだった。

 加えて父親が俳優の中野英雄でありながら、当初はそれを公表していなかったことなど、自身に物語があるのもNHK好みかもしれない。『いだてん』や『拾われた男』『虎に翼』とNHKでの実績を重ねて、満を持しての『豊臣兄弟!』。歴史上の主役となった豊臣秀吉でなく、その弟の秀長にどう血を通わせていくのか、仲野の力の見せ所だ。

大河に主演しそうな俳優

竹内涼真

 一方で93年組の中で、今後、仲野に続き大河に主演しそうなのは誰だろうか。

 以前は菅田に勢いがあり、大河でも『おんな城主 直虎』と『鎌倉殿の13人』で重要な役を演じていたが、結婚後は少し人気が落ち着き、最近作の『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』が視聴率的に伸び悩んだ印象も強い(本人や作品の良し悪しは別にして)。神木は『らんまん』が好評だったが、その個性として大河より朝ドラのさわやかさが似合う俳優だと思う。

 そんな中、有望なのは竹内涼真ではないだろうか。2017年に『過保護のカホコ』で一躍脚光を浴びたが、ゾンビドラマである『君と世界が終わる日に』がseason3まで続いている頃は、正直停滞感を感じた。それが22年の『六本木クラス』で復活し、『じゃあ、あんたが作ってみろよ』の好演で人間味のある役も出来ることを証明した。

 2026年の1月期も連続で『再会』に主演し、今一番勢いを感じさせる。以前のNHKは数作のお試し起用を経て主演に持ちあげるパターンが多かったが、近年は民放で活躍しているタイミングで、ポンと大役に起用するケースもあるので、充分にあり得る話だと思う。(ちなみに忘れがちだが、竹内は『ひよっこ』でNHKへの出演歴もある)

 その他、間宮祥太朗はなかなかヒット作に恵まれなかったが、25年に『良いこと悪いこと』が後半尻上がりに視聴率を上げたのは、今後の活躍につながりそうだ。福士蒼汰も22歳で『恋仲』に主演後、数多くの主演作に恵まれながら、決定打がないように見えた。しかし、25年末公開の映画『楓』の宣伝でテレビに登場した姿を見ると、以前よりもだいぶ線の細さが消えた印象で、2026年1月期には『東京P.D. 警視庁広報2係』で2年ぶりに連ドラにも主演する。

 本人たちが意識しているかは分からないが、逸材が揃った93年組だけに、その出世競争もドラマファンにとっては楽しみなのだ。

古沢保。フリーライター、コラムニスト。'71年東京生まれ。「3年B組金八先生卒業アルバム」「オフィシャルガイドブック相棒」「ヤンキー母校に帰るノベライズ」「IQサプリシリーズ」など、テレビ関連書籍を多数手がけ、雑誌などにテレビコラムを執筆。テレビ番組制作にも携わる。好きな番組は地味にヒットする堅実派。街歩き関連の執筆も多く、著書に「風景印ミュージアム」など。歴史散歩の会も主宰している。