『ラヴ上等』(NetflixJapan公式YouTubeより)

 12月9日よりNetflixにて配信開始し、23日に最終話の10話まで配信された『ラヴ上等』が日本におけるシリーズ作品の週間TOP10ランキングで1位を獲得。人気にいち早く火がついたのは韓国においてで、韓国での同ランキングでも5位を記録、さらにグローバル週間TOP10 (非英語シリーズ)でも8位を記録している。韓国では日本の独特なヤンキー文化に興味を持つ視聴者が多いようで、ハングルで感想を綴ったポストがSNSでは多数見られる。

非日常的な恋愛エンタメ

恋愛リアリティショー『ラヴ上等』をプロデュースするMEGUMI

 SNSには「マジおもしろかった」「見た目のいかつさとのギャップがジェットコースターのようでずっと楽しい」「登場人物がみんな漫画のキャラクターみたいでキャラ濃い」などのコメントが寄せられており、ヤンキーやギャルたちが繰り広げる熱い恋愛模様が、非日常的なエンタメとして視聴者たちにウケているのだ。

 また恋愛だけでなく、参加者たちの友情も見どころとなっていて、いかつい見た目に反したヤンキーならではの情の厚さに“キュン”とする視聴者も。

 今回は異色の恋愛リアリティショー『ラヴ上等』がヒットしているワケについて、全話視聴した筆者が、その内容に触れつつ考察してみる。

恋リア番組とは思えないハプニングの連続から目が離せない

 本作がここまで話題となっている理由は、恋愛リアリティ番組と銘打っているものの、実際見てみると、恋愛番組らしからぬハプニングの連続で、目が離せない展開となっていることにあるだろう。

 例えば、参加者たちが教室で初めて顔を合わせる場面では、男同士でいきなりつかみ合いの喧嘩が勃発し、番組側が用意しているセキュリティーが止めに入るという恋愛リアリティ番組史上前代未聞のシーンから幕を開ける。

 番組MCを務める芸人の永野(51)も「これ本当に恋リア(恋愛リアリティ番組)ですよね?」、「途中から何見せられてんだろうって」と困惑するが、こうしたシーンの数々こそが恋愛に興味がない人も楽しめるエンタメ要素となっているのだ。

 また、本作の舞台は学校であることから、いくつかの“校則”が設定されている。「暴力禁止」や「カツアゲ禁止」など、恋愛とは関係のない異色のルールが決められていて、これに違反したものは“即退学”となる。

 そして第3話では、早くも退学者が出てしまうのだが、なんと退学通告された理由が、違法薬物の使用を匂わせる発言をしたことだと判明。番組では、退学者の問題となった発言をそのまま配信しており、緊張感のある場面となっている。

 永野の言う通り、本当に恋愛リアリティなのかと疑うようなこのシーンについてSNSでは「早々に退学したヤンボー(退学した参加者)がちおもろい、そんなことある?」、「先が読めなさすぎる!」との声が。

グラスのお酒をぶちまける衝撃シーン

『ラヴ上等』(NetflixJapan公式YouTubeより)

 さらに“衝撃シーン”として話題になったのが、女子メンバーのBaby(25)が、新入生として途中から参加することになった女子のAMO(27)に向かって、グラスのお酒をぶちまけるという場面。

 気に食わない態度を取られたことで、とっさに手が出てしまったというヤンキーならではの気質が垣間見えるシーンなのだが、SNSでは「Babyの水かけられ事件、普通に引くのに登場人物全員バカすぎてその後の恋愛になんの影響も出てないのクソ面白い、どんな世界線で生きてたらあれノーカン(ノーカウント)にできるんだよ」とのコメントが。ちなみにBabyはこのトラブルの後も、男子メンバーから引っ張りだこでモテモテとなっている。

「普通だったら……」という一般常識が通用しない、ヤンキー同士の独特のルールやポリシーが描かれている本作は、大多数の視聴者とは違う世界線で繰り広げられているからこそカジュアルに視聴することができる。

 恋愛離れが進んでいる時代とも言われるなかで『ラヴ上等』がウケているのには、恋愛要素だけではなく、さまざまなハプニング要素も視聴者を惹きつけている理由として挙げられるだろう。

とにかく“今生き” 昭和チックな恋愛スタイルが新鮮で懐かしい

 もちろん恋愛リアリティ番組に欠かせない恋愛要素も描かれているのだが、現代においては珍しいほどに、お互いが遠慮することなく気持ちをぶつけ合う様子がかなり新鮮に感じられるのだ。

 近年は交際相手をスペック(条件)で決めたり、結婚することにメリットを感じない若者が増えてきたりと、“恋愛コスパ至上主義”が進んでいる。しかし、本作においてコスパという言葉はまるで無縁。参加者たちが恥ずかしげもなく各々の感情を素直に表現しており、損得感情ではなく本能や直感のままに行動し、お互いの気持ちが交錯していく。

 例えば、女子メンバーのおとさん(22)は、一途に好きな人を追うものの、途中で束縛や嫉妬といった恋愛における負の感情を素直に相手側にぶつける。その様子は見ていて痛々しくも、恋愛において多くの人が経験してきたであろうフラストレーションを思い起こさせ、共感してしまうのだ。

 SNSには「おとさん、確かにちょっと怖いけどあそこまで誰かに自分の想いまっすぐ伝えて、私だけを見てって言えるのすごいなぁ」、「昔の自分を見てるみたいで頭抱える」などの共感の声があった。

 MCであり、番組を企画したMEGUMI(44)は『ラヴ上等』の参加者たちの様子について「今を生きてるんです。“今生き”なんです、この人たち」と語り、ヤンキー特有の情熱と勢いのある恋愛について評価している。

『ラヴ上等』では、スマホやガラケーが無く、直接思いをぶつける必要があった“昭和の恋愛”のような、熱い感情剥き出しの恋愛模様が繰り広げられていることから、若い世代には新鮮に、そして中高年世代には懐かしく映るのではないだろうか。

 視聴者たちからは「人に感情が動かされることも、ぶつかり合う事もめんどうになって、人と関わることが限られるようになったけど、人って、仲間って、恋愛っていいなと久しぶりに思わせてくれた。熱かった」「恋愛に限らず人との向き合い方とか気持ちの変化の仕方とかいろんなパターン見れて勉強になる」などのコメントがあったが、『ラヴ上等』は、恋愛離れが進んでいる令和の時代において忘れがちになっていた、本来あるべき自然な恋愛の形を示したのかもしれない。

(文=瑠璃光丸凪/A4studio)