故・ジャニー喜多川氏から受けたとされる性加害について話す田中純弥さん

「もしSTARTO社が本当に“本件の解決を目指す責任”があると考えるのであれば、私が訴訟提起したアメリカの裁判で、正々堂々と向き合ってほしいです」

 2025年12月3日、故・ジャニー喜多川氏による性加害問題をめぐる訴訟の第1回口頭弁論が、東京地裁で行われた。この裁判は、STARTO社ことSTARTO ENTERTAINMENTが、損害賠償の債務が存在しないことの確認などを求めているもの。冒頭は、被告となった元ジャニーズJr.の田中純弥さんが明かした胸中だ。

「旧ジャニーズ事務所であるSMILE-UP.(以下、SMILE社)は、性加害の被害者に対する補償金の支払いを約束しているものの、その内訳は不明瞭。田中さんは、日本では明らかになっていない情報を開示させるために、より証拠が求められ、性被害の時効が存在しない米・ネバダ州で訴訟を起こしました。ネバダは、田中さんが被害を受けたと主張する“事件現場”でもあります。しかし、これを受けて、SMILE社とSTARTO社は田中さんらを相手に民事訴訟を起こしました」(スポーツ紙記者)

 世間を大きく騒がせたジャニー氏の問題。被害者が訴えられるとは驚きだが、補償金をめぐるやり取りから、いったいどのような流れで現在の事態に至ったのか。田中さんに話を聞くと、憤りながら重い口を開いた。

金額は人には言わないでください

「補償金の金額は『被害者救済委員会』が決めるのですが、約40分の面談ですぐに“じゃあ、あなたはこの金額です”と。内訳の確認をお願いしても、“見せられません。金額は人には言わないでください。サインしなければ、お金は払いません”と告げられました。“もし何か不満がある場合は法廷で”というスタンスで、半ば合意を急かすような態度を取られ、不信感を抱きました

 ほかにも、内訳の開示を望んで補償金を受け取らなかった人が訴えられたという。

おそらく、ネバダの裁判を止めるためでしょう。日本の性加害の民事での時効は短く、被害当時に子どもだった人が今、闘おうとしても難しい。私としては、時効がなく法の下で裁ける場所でやってほしいと主張しているのですが“それはできない”と。彼らは“法を超えて、時効を過ぎた人にも補償する”と主張していたはずなのですが……」(田中さん、以下同)

長年にわたって性加害行為を行ってきたジャニー喜多川氏。自宅マンションの水槽に映る姿は不気味(元ジャニーズJr.の被害者男性提供)

 アメリカで裁判をしたかった人はほかにもいるのでは、と田中さんは推測する。

ジャニー社長と一緒にアメリカに行ったことのある、売れていた子たちから順に補償金にサインさせたのが、彼らの戦略だと僕は思っています。SMILE社は、すごいスピードで補償金を払っており、アメリカで訴訟をしたくてもすでにサインをしているので、できないのです」

 こうした一連の対応に関しては、違和感を感じるという。

「なぜ被害者が訴えられなくてはならないのか、今でもわかりませんが、“お前が悪い”とファンの人たちから誹謗中傷が大量に来ます。でも、そもそも悪いのは、当時のジャニー社長と幹部たちなのではないでしょうか。被害者に許された唯一の手段が訴えを起こすということであり、それさえもこのように圧力でフタをされてしまうと、勇気を出して訴えたいという人が出てこられなくなってしまう。これは人権侵害でもありますし、誹謗中傷で亡くなった子もいます」

「ジャニーの痕跡なくしたい」の矛盾

 STARTO社とSMILE社に対して、田中さんはこのように求める。

嘘をつかないでほしいです。STARTO社は“私たちは旧ジャニーズ事務所とは別々だ”と主張していて、ジュリー社長も会見で“ジャニーの痕跡をいっさいなくしたい”と話していましたが、テレビでは後輩が先輩たちの曲を堂々と引き継いでいます。そこに不満はありませんが、“ジャニーズと別々”というのは矛盾していますよね」

 時がたち、忘れ去られつつある現状についても、不信感を抱いている。

「私が国連の人権フォーラムに出たことも、裁判のことも、どこか映像メディアが報じましたか? 圧力や忖度で“掘り返すのはやめておこう”というのが現状で、それを変えるのは僕らでは難しいのかもしれません。でも、誰かが声を上げ続けていかないと、何も変わらない」

 取材の終わりに、田中さんはSTARTO社の問題点を強く指摘した。

旧ジャニーズ事務所は、子どもたちが助けてほしいという声を見て見ぬふりをした。“それが当たり前だよ。よかったじゃん”という人までいた。見殺しにしてきた大人たちが、“私たちは関係なく、ジャニーだけが悪かった”と言ってSTARTO社を作って、みんなそちらに移籍して、それは罪ではないのかと。そんな人たちが、今でも子どもたちを扱っているんです。彼らは子どもにいっさい関わってはいけない

'25年2月に行われたSMILE社との1回目の裁判終了後には、報道陣を集めて囲み取材を行った

 SMILE社に、今回なぜこのような訴えを起こしたのか聞いてみると、以下のような回答があった。

「民事訴訟を提起したのは、お相手の方に被害者救済委員会が算定した補償金額をお伝えしたところ、弊社を通じて同委員会に対して再評価を求める予定である旨の連絡があった後、実際には再評価の申立てが行われず、特段のご連絡をいただいていない中で、報道等により、米国での訴訟を提起されたとの情報に接したことから、弊社としては、法的手続によって弊社に補償を求めるご意向があるものと認識したためです。弊社としては、お相手の方が補償を求められている以上は本件の解決を目指す責任があると考え、適切な管轄地である日本の裁判所に提訴いたしました。従前日本にお住まいの方からの日本企業である弊社に対する請求であるため、米国の裁判所には管轄は認められないと考えております」

可能な限り具体的に説明している

 補償金の内訳を開示しない理由については、

「被害者救済委員会は、弊社ウェブサイトにおいて「補償金額算定に関する考え方」を公表しており、その中で、①被害の程度・被害の凄惨さとともに、②その後の被害者の生活・人生に及ぼしたいわゆる後遺障害等の影響、の2つの要素を考慮して補償金額を算定することをご説明しています。また、個別の説明を希望する被害者の方に対しては、補償内容を検討するにあたり考慮した事情等を可能な限り具体的に説明しております。以上のとおり、被害者救済委員会においては、補償金額の算定について必要な情報を開示・説明しているものです」(SMILE社)

 田中さんの指摘する、当時、売れていた子から補償金の案内を促し、アメリカでの訴訟を阻止したのではないかという指摘に対しては、

「そのような事実はございません」(SMILE社)

 と回答した。

 STARTO社にも田中さんとの裁判について同様の質問状を送ったところ、

「係争中のため、コメントは差し控えさせていただきます」

 とのことだった。

 田中さんとSTARTO社の次回の裁判は、2月24日。被害者との向き合い方が今一度、見極められている。