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 いつも疲れが抜けきらず、身体はぐったり、ヤル気も湧かず─。実はその疲れ、休み方に原因があるのかも。

休み方を間違えると逆に疲れる

休みだからといってダラダラ過ごすのではなく、なるべく通常と同じ時間に起きて、通常と同じような時間に寝ることが大切です

 と言うのは、菅原脳神経外科クリニック院長の菅原道仁先生。

 夜更かしなど生活リズムを乱す行動や、予定の詰め込みすぎ、気を使う人間関係といった行動は、癒すどころか、疲れの要因になる。ただ、中には通常とあまり変わらず過ごしていたのに疲れが取れないという人も多い。

「現代人が慢性的に疲れを感じている最大の理由に、疲れの種類の変化があります」(菅原先生、以下同)

原因はスマホの使いすぎによる疲労

 身体を動かすことで生じる肉体疲労が主だった昔の疲れに対し、現代は生活の利便性が増した反面、デジタル機器の普及やコミュニケーションの高度化により、脳を使い続ける時間が圧倒的に増加。結果、慢性的な疲労につながっていくという。

脳の疲れは身体の疲れと異なり、休んでいるように見えても“情報処理のスイッチが入りっぱなし”になりやすく、回復が難しいという特徴があります。

 また、脳は生命維持のため24時間働き続けていて、適切にメリハリをつけて使わないと疲労が蓄積します。つまり現代人の疲労は、脳の過活動が背景にある本質的な疲れなのです

 脳の過活動の大きな要因となっているのが、スマホの普及とネット社会の発展だ。

「スマホ漬けで、情報のインプットをやめない状態を続ける“常時接続”の生活は、“脳が常にアップデートし続けようとする状態”をつくり、疲れを悪化させます。これにより、不安感、集中力の低下、イライラ、睡眠の質の低下などの不調が表れます。

 また、SNSにおける他者との比較が自己否定や不安を生み、心の疲労を助長しやすい点も問題です」

SNSによる絶え間ない刺激が、結果として精神的ダメージや睡眠の質が低下するなどの不調として表れる ※写真はイメージです

 現代は常に情報が入ってきて、脳を休ませる暇がない。SNSによる絶え間ない刺激が脳に与える影響は大きいため、思い切ってスマホに触れない時間をつくり、情報から距離を置くことが必要だと話す。

スマホを断つだけで心が安らぐ人が多く、情報に追われ続けた結果、脳が限界を迎えている人が増えている印象を受けます。情報の洪水は脳の認知機能を消耗し、注意力の分散や集中力の低下、ストレス増大を招きます。

 情報を取捨選択するためにも、スマホに触れる時間を意図的に減らすことで心が安らぎます

疲れやすさは体質より“脳の使い方”

 脳の疲れは身体の疲れと違い、自分でも気づかないうちにため込んでしまいがち。そのまま脳の疲れを放置していると、「疲れが雪だるま式に増える」危険も。

「疲れを放置すると、自律神経の乱れ・心の不調・身体的疲労が複合的に悪化します。判断力の低下・感情の不安定化・睡眠障害が生じ、さらにストレスホルモンが高まり、記憶力や学習能力にも悪影響を及ぼす可能性があります」

 疲れの慢性化は、心身の不調を慢性化させ、生活の質の低下を招くことになる。そうなる前に、脳の疲れの改善を。

 ちなみに、脳が疲れやすいのはどんな人なのか。

「脳が疲れやすい人と疲れにくい人を分かつポイントは、脳を正しく使えているかどうか。脳の疲れの差は体質が原因となることは、さほどなく脳の使い方と生活習慣の複合によるもの。疲れにくい身体をつくるには、“脳の使い方・生活習慣”を改善することが重要です」

 菅原先生は、「脳回復の7つの習慣」を提案する。

活動と休息のメリハリをつけることが疲れにくさに直結します。さらに、運動は脳機能を高め、脳の疲れも回復させるアクティブレスト(積極的休息)として推奨されています。総じて、適切な栄養・運動・休息の組み合わせが“疲れない脳や身体”をつくるカギとなります

 疲れにくい生活習慣を手に入れて、新たな年を生き生きと過ごしてみてはいかが?

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疲れを感じたら取り入れたい7つの習慣

1:自分を許すこと

「失敗や挫折を経験したとき、自分を責めすぎると、モチベーションの低下やストレスの蓄積を招きます。セルフコンパッション=自分にやさしくすることが、意欲やモチベーションの向上に。またコミュニケーションに悩む人は、疲れを生む人間関係とは距離を置き、“忘れる力”の活用を。音楽を聴く、映画を見る、本を読むなど脳を別のことに使い、物理的に考えることをやめ、心に疲れを蓄積させるのを避けましょう」

2:睡眠への投資

「脳内の老廃物や毒素の排出は深い睡眠(ノンレム睡眠)時に活発に行われます。深い睡眠を十分にとることで、翌日に脳機能は回復します。いかに良質な睡眠をとるかを意識し、寝具にはある程度投資を。就寝の1時間半くらい前に、ぬるめのお湯に15分ほどつかるのもおすすめ。“寝酒”と“寝る前のスマホ”は良質な睡眠を奪うためNG。起床後に朝日を浴びるのも効果的です」

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3:バランスの良い食事を3食とること

「朝食を抜くと、“午前中の認知機能に悪影響を及ぼす”“血糖値が低下して集中力が落ちる”“脳疲労を助長する”といった報告も。ただし食べすぎは肥満を招くので注意。肥満は自律神経の乱れを誘発し、脳の疲弊につながります。理想的なのは、腹八分目ならぬ腹六分目。健康的に朝食を摂取するためにも、前日の夕食を早めに済ませるか、量をセーブし、朝の目覚めとともに空腹を感じるように調整を」

4:中強度の運動を週に数回取り入れること

「“運動は休息とは真逆の行為”という認識は誤り。身体に軽い負荷をかけて新陳代謝を促し、疲労回復を図ることを目的としたアクティブレスト(積極的休息)という効果があり、運動が脳の休息を促進することも。さらに運動は脳の活動を活発化させることが期待できます」

5:自然に触れること

「森林浴をすると、記憶力や学習能力に悪影響を与えるステロイドホルモンの一種・コルチゾールの値が13〜16%低下し、脳機能が改善するという調査結果が近年発表されています」

6:短い休憩をこまめに取り、脳をリセットすること

「“10分の休憩”が脳へのご褒美となり、脳の負荷を劇的に減らすことが明らかに。仕事中でも15分に1回は首を回すなど軽いストレッチや深呼吸をしてショートブレイクを。さらに1時間に1回は10分程度の短時間の休憩を入れるようにします」

7:脳に良いことを66日続けること

「新しい習慣を身につけるために必要な日数は、個人差はあるが平均66日程度という研究結果があります。コツコツ続け、ルーティン化することで脳への負担が軽くなります」

菅原道仁先生●脳神経外科医。菅原脳神経外科クリニック院長。医療法人社団赤坂パークビル脳神経外科理事長。現在は、頭痛、めまい、物忘れ、脳の病気の予防の診療を中心に医療を行う。

教えてくれたのは……菅原道仁先生●脳神経外科医。菅原脳神経外科クリニック院長。医療法人社団赤坂パークビル脳神経外科理事長。現在は、頭痛、めまい、物忘れ、脳の病気の予防の診療を中心に医療を行う。著書に『休息する技術』(アスコム)。

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取材・文/小野寺悦子