大掃除や忘年会などで何かと忙しい年末年始は、腰痛を訴える人も少なくない。腰の痛みの主な原因は、実は“腰の使いすぎ”にある。
ゆるレッチで柔軟性を高めれば劇的な改善も
「日常のちょっとした動作で、本来なら使われるはずの胸(胸椎)と股関節がうまく使われず、代わりに簡単に動きやすい『腰』ばかりに負担がかかり、痛みが生じるのです」
そう解説するのは、腰痛治療の世界的名医で、徳島大学医学部教授の西良浩一先生。腰痛の根本的な原因は、身体がバランスよく使えておらず、胸や背骨、股関節などの動きが悪いせいなのだそう。そこで、胸や股関節の柔軟性をチェックする方法を教えてもらった。
「椅子に座って両腕を水平に組み、腰を使わずに顔と胸だけを左右にひねってみてください。脚が一緒に動いてしまうなら腰を使いすぎている証拠です。脚が動かなければ胸椎が使えているということ。また、座ってお腹と背中に手を当てた状態で左右交互にひざを上げ下げしたとき、背中が丸まらないなら、股関節が使えていることになります」(西良先生、以下同)
これらがうまくできない人は日常生活でも腰に過度な負担がかかっている可能性が大。西良先生提唱の腰痛解消ストレッチ“ゆるレッチ”で柔軟性を高めれば、劇的な改善が期待できる。ただ、すべての腰痛に当てはまるわけではないので注意。
「一般的な腰痛の約85%はぎっくり腰など筋肉や姿勢、ストレスなどが要因となっている、原因が特定しにくい腰痛(非特異的腰痛)です。腰痛以外に下半身にしびれがあるなら、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などの原因が特定できる腰痛(特異的腰痛)の可能性もあるので、整形外科の受診をおすすめします」
それ以外にも割合は少ないが、安静にしていても痛みがあったり、発熱や胸部痛、感覚異常などがある場合はがんや命に関わる感染症、背骨の神経圧迫などの可能性もあるので、放置は厳禁。特に高齢者は寝たきりになるケースもあるため、「年のせい」と決めつけず、適切な診断を受けることが重要だ。
腰痛+下半身のしびれがある場合は病気が隠れている可能性が
筋肉や姿勢などが要因の腰の痛みであれば、十分に対処が可能。西良先生の患者の8〜9割は、ストレッチで改善しているという。
腰痛+下半身のしびれがある場合は病気が隠れているかも…
《前屈時痛のある場合》
・椎間板ヘルニア
椎間板の中にある「髄核」が椎間板から飛び出て、神経を圧迫することが原因。20~40代でもなりやすい
・椎間板性腰痛
椎間板の外壁にヒビが入ることで炎症が発生。30~40代に多く、椎間板ヘルニアより鈍痛が長引くのが特徴
・椎体骨折
骨粗しょう症が原因で、椎体がつぶれる“いつの間にか骨折(圧迫骨折)”。セキやくしゃみで折れることも
・腰椎終板炎
椎体と椎間板が接する部分の炎症による痛み。40代以上に多く、身体が温まると痛みが軽減しがち
《後屈時痛がある場合》
・脊柱管狭窄症
背骨の中の神経の通り道・脊柱管が加齢によってつぶれ、神経が圧迫される。歩行中に足腰に痛みやしびれが出る
・椎間関節性腰痛
椎間関節の炎症。ゴルフやテニスなどのスポーツ経験者に多く、腰を反らしながら左右にひねると痛む
・腰椎分離症
背骨の後部の椎弓に入るヒビが原因。スポーツをする小、中、高校生がなりやすく、背中の下部を押すと痛む
・バーストラップ病
背骨の突起部分(棘突起)同士がぶつかって炎症が起こる。反り腰の高齢者やよく腰を反る人がなりやすい
腰痛改善に有効な3つのゆるレッチ
ギックリ腰などの急性のものを除いて、慢性的な腰痛には2種類がある。
「顔を洗ったり靴下をはいたりなど、前かがみになったときに痛む『前屈時痛型』と、高いところのものを取るときなど身体を反らしたときに痛む『後屈時痛型』があります」
前屈時痛型は、座りすぎや長時間の車の運転など、日常的に前かがみになりがちな生活の人がなりやすい傾向にあり、日本人に多い。悪化すれば椎間板ヘルニアや椎間板性腰痛などにつながることも。
一方の後屈時痛型は加齢が主な原因だが、ハイヒールをよく履いている人は「反り腰」が一因となることも。こちらは脚に症状が出る脊柱管狭窄症や椎間関節性腰痛などの病気になる危険性がある。
今回、紹介する腰痛改善に有効な3つの“ゆるレッチ”は、筋肉や骨格を意識しながら体幹を鍛えるエクササイズ、「ピラティス」をもとに西良先生が考案。前屈型・後屈型のどちらのタイプにも有効で、硬くなった上半身や股関節、太ももの筋肉をほぐし、正しい身体の使い方を取り戻すためのもの。

「できれば起床時と寝る前、1日2回行うといいでしょう。10回で違いを感じるようになり、30回で身体が変わるという声が多いです。効果を実感するために1か月は継続してみて」
姿勢がよくなれば見た目の若返り効果も
さらに日頃、意識すべき点もアドバイスしてくれた。
「腰を真っすぐにして、胸椎や股関節を使う意識を持ちましょう。物を持ち上げる際には腰を曲げるのではなく、ひざを曲げて股関節を使う意識で持ち上げます。また、座りっぱなしは腰に負担がかかるので、1時間に1回程度、腰は固定したまま上半身を左右に伸ばすストレッチをするといいでしょう。猫背になりやすい人は高めの椅子を選んだり、腰をサポートする機能のある椅子を選ぶのも効果的です」
姿勢がよくなれば腰痛改善以外に、見た目の若返り効果も期待できる。寒さで腰まわりが一層こわばりやすい季節、「胸と股関節」を意識して、腰痛知らずの身体を目指そう。
取材・文/荒木睦美 イラスト/たかツキ なほり(『腰ゆるめストレッチ』より)
教えてくれた人・西良浩一先生
徳島大学医学部運動機能外科学(整形外科)教授。徳島大学病院病院長。腰痛治療のスペシャリスト。腰痛タイプやストレッチ法をさらに詳しく知りたい方は、近著『腰ゆるめストレッチ』(KADOKAWA)をチェック!
