人間関係、生活習慣、美容や健康─さまざまな悩みを抱えて新年を迎え、「今年こそ心機一転、頑張ろう!」と誓いを立てた人は多いはず。
だけど、振り返ってみれば、昨年も年始に目標を立てたものの、三日坊主……。ストイックに自分を追い込める性格なら良いけど、私にはやっぱり無理かも……なんて、弱気になっていませんか?
脳をコントロールする手段を身につけよう
そんな不安を「脳を味方につければ、大丈夫!」と一蹴してくれたのは、40万部超えのベストセラー『科学的に証明された すごい習慣 大百科』が話題の明治大学教授、堀田秀吾さん。
「何か始めようとしても続かないのは、意志の弱さや根性がないせいだと自分を責めがちですが、実はその精神論、科学的根拠のない間違いです」(堀田さん、以下同)
ハーバード大学など世界中の研究機関では、脳や心理に関する研究が日々進んでいる。
「悩みを解決したいなら、科学的な最新情報を知り、脳の仕組みを理解して、それをうまく利用するのが吉!」
今回は、読者の多くが悩むトピックス別に、あっさり解決に導くテクニックをご紹介したい。ポイントは3つ、「脳の機能を利用する」「脳をだます」「脳に入る情報の解釈を変える」。難しく考えず、簡単な方法で脳をコントロールする手段を身につけよう。
《お悩み1・疲れやすくてぼーっとしがち》
脳テクで解決!歯磨き&背すじピンッ!
家事や仕事に追われ、疲労がたまりやすく、日常的にぼんやりしてしまう。そんなときは、食後に限らず、歯磨きをすると良いという。
「実は歯磨きをするだけで、脳が活性化されるんです」
このテクの効果を実際に確かめたのが、千葉大学と花王ヒューマンヘルスケア研究センター。計算問題をやった後に歯磨きをした人と、しなかった人では、歯磨きをした人のほうが明らかに脳の疲労が回復し、リフレッシュ効果が高まったそう。
「これには、2つの理由が考えられます。まず、歯磨きをした後は口の中が爽やかになり、その感覚で脳もだまされてリフレッシュした気分になること。もう1つの可能性が、歯磨きというさっきまでとは異なる行動をしたこと自体が脳への刺激となり、良い影響を与えたことですね」
同じ理由で、「冷たい濡れタオルで顔を拭く」のも効果的。こちらも、電力中央研究所の実験で効果を検証済みだ。
そのほか、歯磨きセットや濡れタオルが用意できない場面でもすぐにできる方法がある。背すじをしゃんと伸ばすことだ。
「背すじを伸ばすのは、動物の威嚇や攻撃行動に似た状態です。猫が毛を逆立てて大きく見せるのと同じ。この姿勢をとることで、血中のストレスホルモンであるコルチゾールの値が下がったり、勇気や元気に関わる男性ホルモン(テストステロン)を分泌させたりして、気分もしゃんとするのです」
ものを覚えるのは左脳で、ものを思い出すのは右脳
《お悩み2・疲れやすくて家事や仕事で集中力が続かない》
脳テクで解決!かわいい写真を1分見つめる
家計簿をつけたり、片づけをしている合間に、SNSを見始めたり、ドラマを見たり、集中力が途切れて、ついダラダラ……。そんなとき、おすすめの脳活テクがこれ。
「子犬や子猫の写真を眺めるだけです。かわいいものを見ると、人は本能的に興味がわいて、“もっと見たい!”と感じることで、自然と集中力が高まります」
かわいければ、成犬や成猫でもいい気がするけど、あくまでも子犬や子猫であることが大事だそう。これは、広島大学の入戸野氏らの研究で明らかにされている。
同様の研究をペンシルベニア大学のグロッカー氏らも行っていて、赤ちゃんの写真を見ると、やる気や集中力をつかさどる脳の部位が活性化すると証明された。
「人間や動物の赤ちゃんの幼い顔立ちを見ると、本能が強く刺激されて“見守りたい”モードになるからかもしれませんね。ちなみに、眺めるのは1分~1分半にとどめて。ダラダラながめていると、脳が慣れてしまいますからね」
《お悩み3・物忘れが気になる。予定を覚えられない》
脳テクで解決!タオルをぎゅっと握って
このところ物忘れが多く、家族がいつもより早く出る日、お弁当が必要な日、自分の仕事の予定などをうっかり忘れてしまい、「しまった!」と落ち込むことが……。
そんな人のために、モントクレア州立大学のプロッパー氏らによる研究で証明済みの脳活テクを教えてもらった。
「何か大事なことを覚えたいときは、直前に90秒ほど右手でゴムボールなどをぎゅーっと握るんです。ゴムボールがなければタオルなどでもOK。そして、思い出したいときは左手で何かをぎゅーっと握って。ものを覚えるのは左脳で、ものを思い出すのは右脳。人間の神経は交差しているので、左脳を活性化したいときは右手を、右脳を活性化したいときは左手を刺激するといいんですよ」
堀田さんも、このテクをユーチューブ動画で、タレントの女性と一緒に試してみたそう。女性がまったく知らないオランダ語の単語を覚える実験だ。
「何もしない状態だと単語が10個中6個しか覚えられなかったのに、ボールを右手で握ってもらってからだと、10個すべて覚えられたんです。勉強や仕事でも応用してみては?」
ダイエットには「小さいスプーンを使う」というテクも
《お悩み4・食べすぎ、間食がやめられない…》
脳テクで解決!古畑任三郎式おでこトントン
「今日はこのおやつを半袋だけ食べて、明日にとっておこう」と自分に言い聞かせているのに、やめられない、止まらない。
そんなときに有効な、意外な脳活テクがある。かつての人気テレビドラマ『古畑任三郎』のお決まりのシーンのように、ゆっくり集中しながらおでこを指でトントンと30秒ほどタッピングするのだ。
ニューヨーク市聖路加病院のウィル氏らの研究では、「おでこをタッピング」「耳をタッピング」「つま先で床をトントン」「何もない壁を見つめる」の4アクションで比較したところ、「おでこをタッピング」がいちばん効果的だった。なんと食欲が3分の1から半分程度に減ったという。
「おでこは、脳の中でも大切な場所なので、その部分に指先が触れるだけで自然と神経が集中します。ほかの場所を刺激するよりも緊張が高まり、そちらに脳の注意が向くことで、結果としてもともと活発だった本能(食欲)のエネルギーが鎮まるのでしょう」
脳の深部でわき起こる食欲は、脳の別の場所を働かせることでごまかせるというわけ。
「同じ仕組みを利用して、パズルゲームのテトリスを3分するという方法もあります。こちらも科学的に証明済み。簡単なパズルに取り組むことで、論理的に考える脳の部位が働きます。人間ならではの脳の使い方で、本能(食欲)に関わる部分の脳のエネルギーを奪うのです」
さらに、本格的にダイエットをしたい!という人におすすめの脳活テクがもう1つ。
“小さいスプーンを使う”という方法だ。
「ひと口あたりの食べる量が減ると、自然と速度がゆっくりになるといったことから、食べる量が8%減ることが、ラフバラー大学の研究でわかっています」
食べながら、イヤホンをして音楽を聴いたり、テレビを見ている人は要注意! これが食べすぎにつながるリスクになる。これは、コロラド大学ボルダー校の研究で判明したことだ。
「何かをしながら食べるのではなく、目の前の食事をひと口ひと口じっくり味わって楽しむことで摂取カロリーを減らせます。スマホやテレビを見ながらではなく、料理の味や香り、そして自分の満腹感をしっかり五感で感じながら、食事をする習慣をつくるといいですね」
だまされたと思って、今日から早速お試しあれ!
《お悩み5・ストレスで家族に八つ当たり…》
脳テクで解決!10分間だけ「手浴」して
毎日あまりにも忙しく、ストレスがたまるせいか、イライラしがち。つい家族に八つ当たりしてしまう……。温泉でリフレッシュできたらいいけど、そんな時間もお金もない人は家で“手浴”をする習慣をつくるのがおすすめ。
「38度のお湯を洗面器に張って、10~15分、手首から先をつけるのです。温泉に負けない効果が得られます」
これは、北海道大学の矢野氏らが脳血管障害の患者を対象にした研究を行い、わかったこと。手浴をすることで、ほかにも「痛みが和らぐ」、「気持ちがすっきりする」、「ポジティブな言葉を発する」、「病気を治そうというやる気がアップする」といった効果がみられたのだ。
「特に手には多くの神経が集まっているため、一部だけ温めているのに、全身浴のような気持ちよさを感じるのでしょうね。これも脳の勘違いを活用したテクニックといえるでしょう」
脳をだましてポジティブな気持ちに
《お悩み6・つい友人に嫉妬してしまう》
脳テクで解決!空を見上げて微笑む
仲のいい友人が自分よりうまくいっているとき、「おめでとう! うらやましい! いいなぁ~」と素直に思えるならいいけれど、「あの子だけずるい。なんで私だけうまくいかないの……」と黒〜い嫉妬感情にとらわれてしまうことも。
そんなときは、頭上に広がる空を見上げてみよう。
実はこれも、れっきとした科学的に証明された解決テクだ。視線を上げながら、考えごとをするとポジティブな思考に導き、うつむくとネガティブなことを考えがちという研究結果があるのだ。上を見る、下を見るという単純な動作に脳が釣られるという。
「身体の動作感覚に感情が釣られるなんて、脳って単純ですよね。ドロドロした嫉妬にとらわれそうなときは、上を向くほかに、笑顔をつくるのもいいですよ。これも脳を“楽しい!”とだますテクで、ポジティブな気持ちになれます」
《お悩み7・最近、家庭内がギスギスしている》
脳テクで解決!ぬいぐるみをハグしながら話す
「夫婦や親子間で、愛情はあるはずなのに、なんだか最近ギスギスしていてつらい。そういう時期ってありますよね。そんなときは、ハグをしてみましょう。穏やかな気持ちになります」
カーネギーメロン大学の研究では、誰かをハグした人は、人間関係でもめた後でも、ネガティブな気持ちになりにくいことがわかっている。
「家族や友人をハグするのが難しければ、ぬいぐるみが相手でOK。スキンシップしたと脳がだまされてくれます」
国際電気通信基礎技術研究所の研究では、見知らぬ人と電話で話すときに抱き枕をハグしていると、ストレスホルモンのコルチゾール値が低下し、幸せホルモンのオキシトシンが増加することがわかっている。
「自分が穏やかな気持ちで相手に接すると、『感情の伝染』という心理的な効果で、相手の気持ちもやわらぎますよ」
ほとんど笑わない人はよく笑う人に比べ死亡率が2倍に
《お悩み8・友人や同僚と仲良くなりたい》
脳テクで解決!テーブルにスマホを置かない
友人や同僚との関係性を深めたい人に、いくつかおすすめのテクニックがある。まず、相手と会っているときに、スマートフォンをテーブルの上に置かないことだ。
「バージニア工科大学の研究では、テーブルの上にスマホを置いているカップルは、お互いに親近感や共感が低下すると判明しました。親密な関係であるほど、スマホが共感に与えるダメージは大きく、大切にされている感覚が低下したという結果が出ています」
スマホはバッグにしまって相手との会話に集中しよう。さらに、相手との親密度を高める驚きの方法がある。カフェやファミレスで注文するメニューに悩んだら、“温かいものを選ぶ”という方法だ。
「冷たい飲み物が入ったコップを持つよりも、温かい飲み物が入ったカップを持った状態で会話をしたほうが、一緒にいる相手を“優しい”“思いやりがある”と感じる傾向があるのです。これも脳をだますテクニックのひとつ」
相手と仲良くなりたいシーンでは、ホットコーヒーやシチューなど、身体も心も温まるメニューを選んでみては?
《お悩み9・体調を崩しやすい。免疫力を上げたい》
脳テクで解決!バラエティー番組で思い切り笑う
年齢とともに病気になりやすく、一度風邪をひくと治りにくくなっていく。今年こそ、健康でアクティブな毎日を送りたい! そんな人に試してほしいのが「笑う」こと。
「毎日しっかり笑う習慣をつくるといいですね。バラエティー番組を見たりして、大声で笑うとさらにグッドです」
普段ほとんど笑わない人は、よく笑う人に比べて脳卒中など血管系の病気になりやすく、死亡率が2倍高い。そんな分析結果を、2万人もの健診データから導き出したのが山形大学医学部だ。
また、キリンホールディングスや吉本興業などの共同研究では、お笑い番組を見るときの状態を研究。前頭葉という判断力をつかさどる脳の一部が活性化して集中力がアップする、ストレス状態が改善するといった効果が見られた。
「ポジティブな気持ちでいることも大事です。肯定的な期待をすると、脳の報酬系が働いて、免疫力も上がることがわかっていますから」
実際には面白い、楽しいと感じていなくても、声を出して笑うふりをするだけで脳はだまされ、免疫力を上げることができる。
語彙力はなんと60代後半から70代がピーク
《お悩み10・運動習慣が続かない…》
脳テクで解決!映画館で映画を見る
クリスマスやお正月にたくさん食べて体重が増え、今すぐ運動しなきゃ……と焦る気持ちが芽生える一方で、あまりの寒さで、ウォーキングするのさえおっくう。そんな人におすすめの脳活テクがある。
「映画館に出かけてください。映画鑑賞中の人に心拍センサーを装着して、心身に何が起こったか観察した、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの研究があります。それによると、映画鑑賞中は、早歩きなどの有酸素運動に匹敵するほど心拍数が上がり、脂肪燃焼にも役立つそうです」
ちなみに、自宅で配信映画を見た場合、退屈な感情が増大するという研究結果も。映画館に出向き、心と身体の満足度をアップさせよう!
身体を動かさないのに有酸素運動並みに心拍数が上がるなんて夢のような話だが、さらにびっくりする情報が。なんと、イメージトレーニングするだけで、筋肉を維持できるというのだ。
「オハイオ大学のクラーク氏らは、1か月間ギプスをはめていた人に、毎日10分、週5日、固定された箇所を曲げるようなイメトレをしてもらいました。その結果、イメトレしなかった人よりも、筋肉が弱りにくかったのです」
脳を錯覚させることで、身体まで影響を受ける。この方法で寒い冬は乗り切って、春になったら、しっかり運動を。
「年だから」が口ぐせになってない? 語彙力のピークは60代後半から70代!
新年に「新しいことを始めてみようかな」と思う一方で、「どうせ年だし」と諦めてしまうこと、増えてませんか?
「中高年の方の多くが、年齢による能力の衰えを口にしますよね。記憶力が落ちてきた、新しいことを学ぶには遅すぎる。だから何を始めてもムダ……。実はそれ、単なる思い込みなんです」
ハーバード大学などが行った研究で、50歳を過ぎてからピークを迎える能力があることがわかってきた。例えば、相手の目を見ただけで感情を読み取る能力は、50代がいちばん優れている。語彙力に関しては、なんと60代後半から70代がピークだそう。「年だから」と諦めず、趣味やボランティア、仕事、いろいろなことにチャレンジしてみると、子や孫にもまだまだ負けない、思わぬ伸び代を感じられるかも!
「特に語学の勉強はおすすめですよ。エジンバラ大学のバグ氏らの研究では、50代を過ぎてから新しい言語を学ぶと、脳の新しい領域が活性化されることがわかりました。そして、認知症になった際、新しく発達した脳の部位が頑張ることで、症状の出現を遅らせる可能性まであるんです」
脳を活性化して、老化予防にもつながる“年をとってからの新しい挑戦”、ぜひ始めてみて!
取材・文/鷺島鈴香
教えてくれた人・堀田秀吾さん 明治大学教授。法言語学者。さまざまな論文に精通し、科学的な情報の発信に力を入れている。著書『科学的に証明された すごい習慣 大百科』が話題。
