宝泉薫さんによる『週刊女性』の名物連載「人生アゲサゲ分かれ道」。今、ニュースな横浜流星さんを取り上げます!
大河の豊臣秀長と言えば西田敏行の名演が思い起こされる
NHK大河ドラマの新作『豊臣兄弟!』で主人公・豊臣秀長を演じるのは、仲野太賀だ。
といっても、仲野をよく知らない人もいるだろう。次作('27年)の『逆賊の幕臣』における松坂桃李を含め、全66作にも及ぶ大河の錚々たる主演俳優の中でも、知名度は低い部類といえる。演じる主人公自体「豊臣秀吉の弟」という補佐役的存在だし、タイトルにも「兄弟」とあることから、池松壮亮扮する秀吉とのバディものっぽくなりそうな予感だ。
では、なぜ仲野が選ばれたのか、については、ちょっとうがった見方もしてみたい。実父である役者・中野英雄のエピソードだ。
'94年、『徹子の部屋』(テレビ朝日系)に出演した際、父はこんな命名理由を語った。
「太賀っていうんです。(略)大河ドラマに出られるようにと思ったんですけど。ちょっと字は変えてね。僕が無理なんで、子どもにだけは大河出てちょっと主役を張っていただかないとと思って。頼むぞっていう望みを込めて」
当時1歳だった仲野は、この13年後、『風林火山』で大河初登場。『豊臣兄弟!』で早くも6作目の大河だ。
命名エピソードについてはNHK側もどこかで知った可能性が高いし、そういう役者には好感を抱きやすいだろう。親子2代の悲願がかなう主演となれば話題性にもつながるし、そこも決め手になったのではないか。
ただ「僕が無理なんで」という言葉が示すように、父は名前のわりに「英雄」タイプの役者ではない。最大の当たり役は『愛という名のもとに』(フジテレビ系・'92年)で演じた「チョロ」という愛称の証券マン。会社でパワハラに遭い、ルビー・モレノ扮するホステスに騙され、自殺してしまう。
そんな父の芸風と似たところが、息子にもある。
例えば、'20年の主演作『あのコの夢を見たんです。』(テレビ東京系)。これは山里亮太(南海キャンディーズ)が実在の女性芸能人たちをモデルに描いた妄想短編集の実写化だった。同時期には『この恋あたためますか』(TBS系)で、ヒロインに片思いする役を好演。やはり英雄タイプではなく、大河の主役にフィットするかは未知数だ。
と、ミョーに心配してしまうのは、今回が「戦国大河」だからである。『光る君へ』『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』と変化球っぽい作品が続いたあと、王道回帰みたいになったことで、NHKとしても確実に当てたいところだろう。竹中直人に宮崎あおい、小栗旬という大河主演トリオを脇に配しているのも、強化策のひとつと考えられる。
そんな中、痛いのが秀長の妻役に決まっていた永野芽郁の降板だ。代わりに選ばれた白石聖も魅力と実力のある女優だが、永野の華には及ばない。あの不倫騒動が1年遅ければ、いや、それでは中盤に大混乱が起きていたから1年8か月遅ければ、などと人ごとながら悔やまれてしまう。前出の宮崎に浜辺美波、永野で朝ドラヒロイントリオも脇で構成できるはずだったのに、残念だ。
ちなみに、大河の豊臣秀長といえば『おんな太閤記』での中村雅俊が印象に残る。田中好子さんが演じた妻との純愛でも泣かせた。ただ、あの作品では秀吉を演じた西田敏行さんが圧巻で、大俳優へと飛躍するきっかけのひとつとなった。
そんな西田さんは76年の生涯で14作の大河に出演(うち、主演が3作)。現在32歳の仲野は『豊臣兄弟!』を成功させ、文字どおりの「大河の申し子」となっていけるだろうか。
ほうせん・かおる アイドル、二次元、流行歌、ダイエットなど、さまざまなジャンルをテーマに執筆。著書に『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)。
