黒岩祐治知事

 県政のトップに立っていた人間による、あまりに卑劣な蛮行――。福井県の杉本達治・前知事によるセクハラ問題は、世間に大きな衝撃を与えた。

 杉本氏によるセクハラの報告が上がったのは、2025年4月のこと。外部相談窓口に被害の通報があり、9月に弁護士3名が特別調査委員を立ち上げ、全職員約6,000名に調査を実施。通報者を含む4名から詳細な情報が寄せられ、2026年1月7日に報告書が公開された。

黒岩祐治知事の“下ネタ全開メール”に飛び火

「報告書によれば、杉本氏のセクハラ行為は2007年から2025年まで20年弱行われていたとのこと。被害職員は約1000通にわたる性的なメッセージを受け取っており、さらに飲食店で太ももや尻を触られたという告発もありました。事実であれば、不同意わいせつ罪やストーカー規制法に抵触する可能性も否定できない内容。2025年12月に辞職した杉本氏は“記憶にない”としていますが、被害者らの証言は信頼性が高いと判断されています」(全国紙政治部記者)

 被害者は、杉本氏からのセクハラを上司に報告していたにもかかわらず、人事課に情報が伝わっていなかったことも明らかになっている。この事実を受け、調査委員は報告書で「福井県庁にはセクハラ被害を通報しにくい組織風土がある」と指摘している。

 白日の下に晒された、福井県庁の醜聞。世間では、この問題が思わぬ余波を生んでいるという。

「同じく県知事による女性問題ということで、2023年4月に『週刊文春』で不倫が報じられた神奈川県の黒岩祐治知事に注目が集まっています。元フジテレビ社員の黒岩氏は、前職時代を含む2000年から2010年ごろまで、11年間にわたって一般女性のA子さんと不倫関係にあったそうで、本人も事実を認めて謝罪しています。報道では、不倫相手へ送信した“下ネタ全開メール”の文面も公開されており、杉本氏のセクハラメッセージからこの件が再び想起されたのでしょう」(スポーツ紙記者)

 メールの文面は、「本番前のホンバン?バッカァ~!!生放送の前のナマだよ~!!ニュルニュル~」「A子の料理ってどんなかな?アワビにバナナをさしたやつとか」「放送では絶対に言えないから、A子だけに本音を放出!ドッピュー!!」など、目を覆いたくなるようなものばかり。報道当時、黒岩氏は2期目を目指す県知事選の真っ只中。不倫関係について謝罪したものの県知事選の撤退は否定し、その後なんと見事、“再選”に至っている。

杉本氏による「許されざる被害」

 杉本氏と同じく、信じがたいような性的メッセージが明らかになったにも関わらず、県民の票を集めた黒岩氏。政治ジャーナリストの大谷昭宏氏は、彼が再選に至った理由をこう語る。

「黒岩知事の場合は、あくまで特定の女性との個人的なやりとりであって、犯罪的要素はない。不倫関係にあった女性はある意味において被害者ですが、妻帯者である黒岩氏と交際していたわけですから、女性の側にも不貞行為に加担したという落ち度がある。杉本氏によるセクハラの被害者には何の落ち度もありませんから、根本の部分が違っています。

 杉本氏はセクハラだけじゃなく、不同意わいせつ罪の可能性も問われています。痴漢行為によって、被害女性を身体的に傷つけている可能性もあるわけです。さらに、複数の被害者に対して20数年にわたって1000通以上のセクハラメッセージを送っているという、異常な状態。県政において許されざる被害が出ています。一方、黒岩氏の不倫問題は、県政への直接的な被害があったわけでもないので、県民にとって許容の範囲だと受け取られたのでしょう」

福井県・杉本達治前知事

 また、黒岩氏が神奈川県知事だったことも理由の1つだという。

「地方都市である福井県と首都圏にある神奈川県では、県民の認識も大きく異なります。人口が80万人に満たない福井県民にとって、誰が知事であるかは非常に大きな問題です。生活圏も県内にとどまる人が多く、知事がどのような行政を進めるかというのは、県民の生活に直結していますから。対して、900万人を超える人口を誇る神奈川県では、知事1人によって行政が大きく左右されるということはあまりない。職場や学校生活を、すべて神奈川県の中で完結させられている方は少ないでしょう。よって、県民にとって知事という存在がそれほど大きくなく、選挙で投票する人たちも“こんな人が知事だと、たまったもんじゃない”という認識はあまりないのです」(大谷氏、以下同)

 セクハラが明らかになった杉本氏は現時点で今後の展望を明らかにしていないが、“出直し出馬”の可能性は極めて低いようだ。

「1000通にわたるメールの内容が明らかになって、これだけの騒動になりましたから、まず出馬すること自体が不可能でしょう。出たところで、女性の票なんて1票も入らない。いずれにせよ、風通しの悪い現状を変えられるかどうかにおいて、前知事の出番はありません」

 黒岩氏が不倫報道によって県民の信頼を損ねたのは、言うまでもないだろう。しかし、一方的なセクハラ行為で女性職員らを傷つけた杉本氏の罪は、遥かに重い。