『魔女の条件』(1999年・TBS系・最高視聴率29.5%)、『やまとなでしこ』(2000年・フジテレビ系・最高視聴率34.2%)、『家政婦のミタ』(2011年・日本テレビ系・最高視聴率40.0%)など、かつては出演するドラマが高視聴率を連発し、“視聴率女王”と呼ばれていた松嶋菜々子。
主演からは遠ざかっていた松嶋菜々子
だが2016年の『営業部長 吉良奈津子』(フジテレビ系)が平均視聴率7.1%に留まった後は、連ドラでは脇にまわり、主演からは遠ざかっていた(現在なら平均7.1%は決して悪い数字ではないが、当時としてはもっと低い印象だった)。
それが10年ぶりに連ドラ主演を決めたのが、2026年1月8日に放送が始まった『おコメの女』(テレビ朝日)だ。果して勝算はあるのだろうか?
筆者から見ると、2つの点で勝機があると感じた。
1つ目は、松嶋自身が昨年、朝ドラ『あんぱん』で奔放な母親役を好演し、世間的にも再注目を浴びていたこと。10年ぶりの主演には絶好のタイミングといえる。
2つ目は、大人向けのドラマ作りがうまいテレ朝の木9枠であること。米倉涼子の『ドクターX』や天海祐希の『緊急取調室』など、固定ファンが付いている枠でもあり、ベテランになった俳優がフジやTBSからスライドするには絶好の枠だ。
以上の理由から、大いに勝算はありそうに見えていた。
連ドラで主役を張るのは大変なことだと思う。企画や脚本がイマイチで視聴率が低迷しても、敗因は主演俳優に負わせられがちで、しかもイメージは長くついて回る。その危険を回避するため、連ドラを避けて映画を活動の場の中心にする俳優もいるようだ。
その点、松嶋は舵取りが上手な人に見える。人気が落ち着いた時期は、慌てずに活動ペースを緩め、2021年にはUber EatsのCMでMattのような厚化粧をしてコミカルな一面を発揮し、それまでのイメージを打ち破って見せた。
そして機が熟すのを待ち、満を持して主演した『おコメの女』は初回世帯平均視聴率10.0%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録。最近ではTBSの日曜劇場以外ではなかなかお目にかかれない2ケタ視聴率で、人気の高さを示して見せたのは見事だった。今後は2話以降、よくあるパターンで視聴率を下げてしまうのか、高値安定で上げていけるのかが気にかかる。
『おコメの女』ではなく『ザッコクの女』?
『おコメの女』1話を観たところ、個人的には若干企画が粗いような気もした。
どうやら東京国税局資料調査課という、隠語で「コメ」と呼ばれる部署は実在するようだが、松嶋演じる米田正子が米が大好きで、職場に炊飯釜を持ち込んでいきなりご飯を炊きだしたり、怪しい人物に対して「ヌカの匂いがする」と言ったり、「おコメ」に無理やり寄せている気がしないでもない。
何より正子は、資料調査課から新しい部署「課税第二部複雑国税事案処理室(通称ザッコク)」を創設するのだが、その部署については「マルサもコメも介入しない事案を調べ上げるのがザッコク」だというセリフがあった。
だったらタイトルは『おコメの女』ではなく『ザッコクの女』なのでは? と思ってしまったのだが、どうだろう?
ここ2年ほど、米の価格が高騰して、国民の注目が「米」に集まっているのにあやかろうとしたのかな、などと要らぬ深読みもしてしまう。
だが、高橋克実や大地真央ら芸達者な俳優が脇を固めるアンサンブルは魅力的だ。正直、脱税の内容やトリックにはそれほど新味を感じなかったが、悪を暴いていく過程の見せ方は、さすが木9の手慣れた演出で、テンポがよく面白かった。松嶋自身もポケットに両手を突っ込んで歩いたり、頭をかきむしって日本酒に歓喜する姿が新鮮で、2話以降を見てみたいと思わせられた人も多かっただろう。
振り返ると『家政婦のミタ』の時は、“笑わない女”で新境地を開き、社会現象にまでなった。2011年頃、既にドラマの視聴率が下がり始めていた中で40%という驚異的な数字を叩き出した時は、「テレビもまだまだやれるんだね」と編集者と言い合ったものだ。
ぜひ『おコメの女』には松嶋の新たな代表作になってほしいし、その鍵を握るのは脚本だと思うので、さらなる面白い脚本を期待したい。
