令和7年大相撲・秋場所

 もはやこうなると、“溜席プロモーション”“砂かぶりプロモーション”である。

 東京・両国国技館で熱戦が繰り広げられている大相撲初場所。取り組みの注目度もさることながら、土俵下における著名人・芸能人・有名人の映り込み映像が、スポーツ紙のウェブサイトで記事化されている。

土俵前の溜席に芸能人がズラリ

デヴィ夫人や俳優の西岡徳馬に高橋克実に山口いずみ、高須克弥院長といった著名人のお姿が連日目撃され、記事になって話題になっている。彼らが座る席は、溜席(たまりせき)、いわゆる砂かぶり席という土俵下(チケットには「土俵前」と表記)の席で、ほぼテレビに映る。記事なれば、ちょっとした宣伝ですよ、芸能人にとっては

 と話すのは好角家のプロダクション幹部。東京場所では必ず姿を見せるデヴィ夫人や山口いずみ、紺野美沙子(横綱審議員)といった著名人は、相撲ファンには好角家としてよく知られている。

 彼らが座る席は、いわゆる維持員席という溜席で、「維持員は日本相撲協会の制度で、個人や法人、後援会などが維持員になっている。芸能人はそのどれかになっているか、有力力士の後援会会員になって案内されているようです」とスポーツ紙記者は解説する。 

 芸能人の映り込みを写真付きで報じるのは、主にスポーツ紙。理由は簡単で、カメラマンが取材に入っているからだ。カメラマンは取り組みの合間に溜席に芸能人がいるかどうかを確認し、撮影したりする。また2階にもカメラマン席があるため、全体を見渡すことができ、芸能人を見つけやすい。

「両国の場合溜席は300席とさほど広くありませんから、すぐ全体を確認できますよ」(前出・スポーツ紙記者)

 芸能人は写真を撮られ記事化されるが、それに関してはネットには時折「隠し撮りじゃないですか」「ギャラ払ってるんですか」といった、メディア批判が書き込まれたりするのだが「お門違いです」そう退けるのは相撲好きの編集者だ。

「相撲興行は『相撲競技観戦契約約款』により運営され、維持員が相撲競技に立ち会う際もルールを守らないといけないのです。禁止事項や注意事項が結構あって、たまり席では飲食ができませんし、携帯電話、カメラの使用はできません。実際、スマホでちょこっと撮影したりしますけどね。

 それらの注意事項の中に『映像収録及び中継につきお客様が映り込む場合がございます』と書かれているんです。つまり、溜席で観戦している人は芸能人、一般人に関わらず、映り込むことを了承しているということです

高橋克実は『おコメの女』懸賞視察

 前出・スポーツ紙記者によれば、過去、映り込みを記事化したことによって、当事者の芸能人並びにその関係者からクレームが来たことはないという。

 その場所に行けば映るかもしれない。しかも芸能人が相撲観戦を楽しんでいるという記事は、まず間違いなく好意的なものばかりだ。

「ひと目に触れてなんぼ、というところが芸能界にはありますから、記事なることはいいプロモーションみたいなものですよ。誰も変装したりしないでしょう?」(先出・プロダクション幹部)

 実際、3日目(13日)にテレビに映り込んだ高橋克実は、出演中のドラマ『おコメの女』(テレビ朝日系)がこの初場所で懸賞をかけているため「“ザッコク”の室長・古町豊作役 高橋克実さんが代表して見に行きました!」と、公式Xが“宣伝ツイート”。高橋が土俵をバックに笑顔でピースをする写真付きだ。

 かくしてスポーツ紙のカメラマンやテレビ観戦の大相撲ファンにとって、“溜席に誰かいないか?という確認は、相撲観戦の楽しみのひとつで、撮られる芸能人にとっては、ちょっとした宣伝プロモーションになっている。

取材・文/渡邉寧久(わたなべ・ねいきゅう)
エンタメコラムニスト・エンタメライター・演芸評論家
新聞社文化部記者、テレビ局エンタメウェブサイトの記者、デスクなどを経て、現職。文化庁芸術選奨、浅草芸能大賞、花形演芸大賞の選考委員などを歴任。台東区主催『江戸まちたいとう芸楽祭』(名誉顧問ビートたけし)の実行委員長をつとめる。1月20日に演芸業界のリアルをまとめた新刊『落語家になるには』(ぺりかん社)が発売される。