左から小泉今日子、斉藤由貴、鈴木保奈美

 秋篠宮妃紀子さま、小室佳代さん、藤島ジュリー景子氏、鈴木保奈美、小泉今日子、斉藤由貴、RIKACO……。今年還暦を迎える彼女たちが、生まれながらに背負わされた俗説、それは「丙午(ひのえうま)」――。

豪華メンバーが揃う“丙午生まれ”

 このたびエッセイストの酒井順子さんが、そんな丙午伝説の正体を丹念に追った書『ひのえうまに生まれて 300年の呪いを解く』(新潮社)を刊行した。

「丙午」とは、十干の「丙」と十二支の「午」が組み合わさった年のこと。「丙」と「午」どちらも火の性質を持つことから、丙午は火の力を象徴する年とされている。

 そして、この年生まれの女性は「男(夫)を食い殺す」「気性が荒くて気が強い」「不幸をもたらす」などといわれてきた。まったくの迷信なのだが、1966(昭和41)年の丙午では産み控えによって出生数が前年より25%も減少したという。

 歴史を紐解けば、「江戸時代に大火事をもたらした八百屋お七は丙午生まれだった」といわれたことから丙午の迷信が広がり、明治の丙午(1906年)に生まれた女性たちは、結婚難に絶望した丙午女性同士の「丙午心中」や、結婚を諦めて仕事先を探す「丙午求職」があったとか。結婚できたとしても、丙午生まれということで嫁いびりのネタにされたなどの話も……。

 だが、自身も丙午生まれである酒井さんはこう語る。

「『丙午生まれだから』とネガティブなことを言われたこともないですし、それを負い目に感じたこともありませんでした。むしろ特別な年に生まれたと誇りに思っていました。

 出生数が少ない分、人数が他の年代の人たちよりも少ないので『受験に有利だよね』と言われたり、大学卒業時はバブル期で景気もよかったので就職先に困ることもなく、他の年に生まれた人たちと比べて特段、不幸だと思ったこともありませんでしたね」

 酒井さんといえば、2003年に刊行した『負け犬の遠吠え』がベストセラーに。当時の自らも踏まえた、30代以上・未婚・子どものいない女性を指す「負け犬」という言葉は流行語にもなった。

「丙午の迷信は、『みんなと同じが一番』『周囲が言うことに従っておくことが正しいこと』という、日本特有の同調圧力、特に女性に対する『こうあるべき』という感覚が大いに関係していると思います。そこから女性がはみ出さないように、『自己主張が強い女性は不幸になる』という丙午伝説がつくられたのでしょう」(酒井さん、以下同)

 実際、冒頭に挙げた女性たちに、自我が強いイメージを持った人もいるのでは。

「どの年に生まれた女性でも強いイメージの人はいるので、丙午だけが特別ではありません(笑)。昨今の傾向を考えれば、今年もおそらく出生数は減少するでしょう。それは、みんなが『今年は丙午だから』と産み控えしたわけではなく、少子化が続いているせい。

 このように迷信は消えていくでしょうが、300年続いた丙午現象を知ることによって、人は根拠のないことをいとも簡単に信じ込んでしまうことを考え合わせてほしいですね」

 丙午はまったくの迷信であるし、幸せは人それぞれなのだ。