『豊臣兄弟!』に出演する池松壮亮(左)と仲野太賀

 1月4日にスタートした今年の大河ドラマ『豊臣兄弟!』(NHK)。2023年に放送された松本潤主演の『どうする家康』以来となる“戦国大河”に今、大きな期待が寄せられている。

 11日に放送された第2回は、オンエア中にもかかわらずXのトレンドで「#豊臣兄弟」が第1回に続いてワードの1位に急上昇。改めて注目度の高さを見せつけた。

大河ドラマで見たい歴史上の人物は

『豊臣兄弟!』は豊臣秀吉(池松壮亮)の弟、仲野太賀演じる豊臣秀長を主人公に農民から下克上を経て天下統一を成し遂げる戦国バディものである。まるで少年漫画の冒険ものを思わせるワクワクドキドキする展開に、平均世帯視聴率も前2作を上回る好スタートを切っている。

「今作はジャイアン・織田信長(小栗旬)からむちゃ振りされた無理難題を、のび太・秀吉がドラえもん・秀長に泣きつきながら乗り越えていく。まるで漫画『ドラえもん』を地で行くような世界観がとてもわかりやすく親しみやすい。久しぶりに高視聴率が期待できそうです」

 そう語るのは大河ドラマに詳しい映像プロデューサーの島右近さん。

 豊臣兄弟の“バディもの”でスタートダッシュに成功した今年の大河ドラマ。それならば、大河ファンが本当に待ち望んでいる歴史上の人物はいったい誰なのか。全国40代~60代の男女300人にアンケート調査を行ってみた。はたしてその結果やいかに!?

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 大河ドラマの主人公にふさわしい“歴史上の人物”アンケート。5位には、15票を獲得して元連合艦隊司令長官の山本五十六がランクイン。

これまで役所広司や香取慎吾などがドラマや映画で演じてきた山本五十六

「指揮官としてすごい見識を持ち合わせていたが、幼いころと青春時代はどこで何をしていたのか知りたい」(石川県・男性・69歳)

「勝ち目のない戦争の司令官を任された、指揮をとった際の心境を見てみたい」(兵庫県・男性・64歳)

 といった意見が寄せられた。もしNHKでドラマ化するのなら、'09年から'11年にかけて放送された国民的作家・司馬遼太郎原作の日清・日露戦争を舞台にした『坂の上の雲』あたりが、きっと参考になるに違いない。

「当初『21世紀スペシャル大河ドラマ』として制作される予定で、日本各地はもちろんのこと、日露戦争の舞台となった中国やロシア、アメリカ、イギリスなどで3年にわたる大々的なロケを敢行しています。

 これだけの大作となると制作費もかかるため、戦後90年、100年に向けて、今から準備しておかなければ間に合いません。大河ドラマの枠では難しいでしょうね」(島さん)

誰もが知っている偉人が2位に選出

 4位には25票で医師・野口英世がランクイン。小学生のころ“偉人伝”の本で読んだ人も多いのでは?

世界的な医師・細菌学者でありながら、医師免許取得に必要な資金を放蕩で使い切ってしまったという野口英世

「いちばん好きな医学者。金にはだらしないが尊敬する偉人のひとり」(福岡県・男性・67歳)

「細菌やウイルスに悩まされる時代になったから、時代に合っているように思える」(愛知県・女性・56歳)

 といった声が寄せられている。1876(明治9)年に生まれ、医師となり黄熱病の研究に没頭。自らも病に倒れ1928(昭和3)年にアフリカのガーナで客死したことに心打たれた。

「昭和を描いた大河ドラマは『山河燃ゆ』('84年)はじめ、『いのち』('86年)、『いだてん~東京オリムピック噺~』('19年)などありますが、視聴率的には苦戦を強いられたのも事実です。また千円札にもなっていることから野口英世を誰が演じるのか。そのあたりが問題になりそうです」(島さん)

 誰もが知っている偉人だけに、大河ドラマ化するには問題山積みなのかも。

 2位には、28票を集めた2人が並んだ。1人は聖徳太子。彼推しの意見として、

「『日出処の天子』を大河ドラマ化してほしい」(京都府・女性・57歳)

「日出づる国の代表者であり、大国の中国を相手に渡り合った人物の生涯を見てみたい」(石川県・男性・61歳)

 やはり'80年から連載され、漫画史に残る傑作といわれた山岸凉子による漫画『日出処の天子』の影響がかなり色濃く出ているようだ。

幼少期から仏法を学んだり、いろいろな逸話が残っている聖徳太子

「'01年には本木雅弘主演のスペシャルドラマ『聖徳太子』が全2話構成で制作され、話題になりました。あれから四半世紀がたち、歴史的な研究が進み新たな発見もあるはず。いずれ大河ドラマになる可能性は十分にあります」(島さん)

 ちなみに大河ドラマ史上、最も古い時代を題材に取り上げた作品は何か? 正解は'76年に放送され、今は亡き加藤剛さんが平安前期に活躍した平将門を演じた『風と雲と虹と』である。

 もし飛鳥時代の『聖徳太子』が大河ドラマになったら、一万円札の顔にもなった聖徳太子が大河ドラマ史上、最古の主人公になる。

トップ5以下にも名だたる偉人が

 そしてもう1人は1975年から始まったアニメ『一休さん』で知られる一休宗純。こちらには、

「アニメではなく、実写で一休さんの物語が見てみたいから」(三重県・男性・41歳)

「漫画で知られる一休さんとは、まったく違う実像があるので、それを実写でドラマ化してほしい」(青森県・男性・61歳)

 といったコメントが寄せられている。一休さんとは、いったいどんな人物だったのか。

禅僧として戒律にとらわれない生き方を貫いた一休宗純。幼少期のとんち話はアニメにもなった(東映アニメーションHPより)

「一休宗純は、室町時代の臨済宗大徳寺派の僧であり詩人としても知られています。一説によると後小松天皇のご落胤ではないかといわれている高貴の出自。詩や狂歌、書画を楽しむ風流人として天皇にも親しく接せられ、民衆にも慕われていました。

 戒律や形式にとらわれない人間くさい生き方が共感を呼び、江戸時代には彼をモデルにしたとんち話『一休咄』が生まれ、それがアニメに登場する一休さんのモデルになったというわけです」(島さん)

 さて、1位に目を移す前に僅差でトップ5に入らなかった人たちにも触れてみよう。

 6位には、14票で平安時代の陰陽師・安倍晴明が。夢枕獏の小説『陰陽師』シリーズが陰陽師ブームを巻き起こして何度もドラマ化・映画化されてきた。'24年、山崎賢人主演で映画『陰陽師0』が公開されたことは記憶に新しいところだ。

「原作が伝奇小説でありSF的な要素もふんだんに取り入れなければなりません。予算もスケールアップして、こちらは大河ファンタジー枠で見てみたいものです」(島さん)

夢枕獏の小説で注目を浴びることになった安倍晴明。ドラマや映画などで映像化されている(映画『陰陽師0』HPより)

 7位以下には大河ドラマの“王道”といわれる戦国・幕末時代の豪傑たちが名を連ねている。7位には戦国の英雄“越後の虎”と呼ばれた上杉謙信、9位には前田慶次郎の名前が。

「『敵に塩を送る』の逸話でも知られる謙信は、私利私欲に溺れることのない義の武将として今も高い人気を誇っています。大河ドラマに限ってみても、石坂浩二('69年『天と地と』)、柴田恭兵('88年『武田信玄』)、GACKT('07年『風林火山』)、阿部寛('09年『天地人』)らイケメン俳優などが演じてきました」(島さん)

 そして9位の前田慶次郎だが、名前を聞いても、誰のことやらピンとこない読者もいるのでは?

「人気作家・隆慶一郎による小説『一夢庵風流記』で一躍“傾奇者”として人気を呼んだ武将で、'02年の大河ドラマ『利家とまつ~加賀百万石物語~』ではミッチーこと及川光博が熱演。原哲夫による漫画『花の慶次-雲のかなたに』やアニメ化、舞台化、さらには『CR花の慶次』としてパチンコ・パチスロにも登場しています。

 近頃は、刀剣乱舞などの育成シミュレーションゲームやスマホゲームから火がつき、人気者になった戦国武将も結構いるんですよ」(島さん)

謎が多いからこそ魅了される!?

 一方、江戸末期から幕末に目を向けると、「ジョン万次郎」「伊能忠敬」といった面々が名を連ねている。そんな中、島さんが注目したのが、土佐の足摺岬沖で遭難し、アメリカに渡ったジョン万次郎である。

「アメリカで英語はもちろんのこと、数学や測量、航海術、造船技術を学んだ万次郎は、帰国後に活躍。軍艦教授方、遣米使節団の一員として咸臨丸に乗り込み、明治維新に参画。爪痕を残しています。バイタリティーあふれるパイオニア。その行動力には、目を見張るばかりです。

 大河ドラマでは'08年『篤姫』で勝地涼、'10年『龍馬伝』でトータス松本、'18年『西郷どん』で劇団ひとりが熱演。俳優・北村一輝は万次郎役をぜひ演じたいと公言してはばかりません」(島さん)

 そして44票を獲得し、ダントツの1位に輝いたのが、「邪馬台国」の女王・卑弥呼。『魏志倭人伝』に伝わる、3世紀ごろの倭の国を治めていたといわれる謎多き人物だ。

人前には姿を現さず、弟にしか姿を見せなかったといわれている謎の多い卑弥呼。ミステリアスゆえに魅力があるのかも

「日本の起源をひもとく、謎の人物だから」(東京都・男性・67歳)

「史料が少なく難しいかもしれませんが、古代を舞台にした女性が主役の大河ドラマを見てみたい」(大阪府・女性・53歳)

「歴史上でいちばん謎めいた人だから」(大分県・女性・66歳)

 といった声が寄せられた。

 シャーマンとしてもその名を残す神秘的な女王・卑弥呼こそ、古代史のロマンに彩られた真の女王。視聴者の心をつかんで離さなかったのもうなずける。しかし大河ドラマとして成立するのか、気にかかるところ。

「邪馬台国をめぐっては江戸時代から、九州説と畿内説に分かれ論争を繰り返してきました。邪馬台国の場所すらはっきりしない主人公を大河ドラマのヒロインとして取り上げるのは、やはりハードルが高そう。

 '16年から'18年にわたって放送された綾瀬はるか主演の『大河ファンタジー 精霊の守り人』(NHK)シリーズのような形なら、可能性があるかもしれません」(島さん)

 大河ドラマの主人公への道は、やはり厳しいものだ。実は大河ドラマの主人公決定には、あるプロセスがあると島さんはこう続ける。

NHKには全国47都道府県から、大河ドラマの主人公に関する企画書が山のように寄せられ、プレゼンや審査のプロセスを経て、晴れて主人公が決定しています。ランキングに名を連ねていない豊後の国の名将・立花宗茂や、下克上の先駆けとなった北条早雲にもこれからチャンスは十分にあると私は見ています」

 '63年に『花の生涯』で産声を上げた大河ドラマ。戦国の三傑、維新の元勲ばかりが取り上げられては新鮮味に欠ける。ジョン万次郎や立花宗茂、北条早雲のような新たな主人公の登場こそ、待たれて久しいのではないか─。

大河ドラマ主人公で見たいランキング 全国40代~60代の男女300人にアンケート調査

取材・文/KAPPO INLET GROOVE