立憲民主党と公明党が結成した新党『中道改革連合』が19日、国会内で綱領を発表。党の理念として前面に打ち出したのは「生活者ファースト」という言葉だ。しかし、このフレーズに対しSNSでは「参政党のパクリだろ」など国民や識者から疑問の声が相次いでいる。“生活者”とは一体誰を指し、新党が描く国民像とは何なのか─。
綱領で示された「生活者ファースト」
『中道改革連合』は19日午前、立憲民主党の安住淳、公明党の西田実仁両幹事長が記者会見を実施し新党の綱領を発表した。綱領では「生活者ファーストの政策を着実に前へと進める中道政治の力が求められている」と明記。持続的な経済成長への政策転換、現役世代も安心できる新たな社会保障モデルの構築、選択肢と可能性を広げる包摂社会の実現、現実的な外交・防衛政策と憲法改正論議の深化、不断の政治改革と選挙制度改革の5つの柱を掲げた。
安住幹事長は会見冒頭で、「対立をあおり分断を深める政治ではなく、生活者ファーストの政策を着実に前へ進める中道政治の力が求められている」と続け「高市総理の目指す社会とは違うものである」と改めて強調した。立憲民主党の野田佳彦代表も16日の会見で「生活者の視点に立ち、生活者ファーストの視点で現実的な政策を打ち出す」と述べ、消費税減税を政策の柱にする意向を示している。
新党が使用する「生活者ファースト」という表現は、従来の政治用語である「国民」や「市民」という言葉を避けている点が特徴的だ。この用語選択についてX上では「生活者ファーストなんですね。国民ファーストじゃなくて」「彼らの言う『生活者』とは『日本で生活する人全員』だと思います」「生活者ファーストの対義語が日本人ファーストだそうです」と、国民から批判的な反応が飛び交っている。
中央大学法科大学院教授で弁護士の野村修也氏は19日、自身のSNSで中道改革連合の「生活者ファースト」について言及。野村氏は「中道が掲げる『生活者ファースト』って、例えば『防衛費を増やすくらいなら給付金を配れ』とか、『中国からレアアースが来ないと困るので、領土問題は二の次に中国には逆らわないようにしよう』みたいな感じかな。こうしたポピュリズムを前に、領土を守る大切さを説くのが国会議員の仕事ではないのか」と投稿し、新党の掲げる理念に疑問を呈した。
野村氏は『情報7daysニュース・キャスター』(TBS系)などのコメンテーターとしても知られ、法学の専門家として政治問題について鋭い分析を行ってきた。今回の指摘は、「生活者ファースト」という言葉が目先の利益を優先する政策に偏る危険性を示唆したものと受け止められているようだ。
世論調査では意外な結果
日本経済新聞は16日付の記事で「新党は分配に偏るリスクがある」と指摘。両代表とも中道改革の一例として「生活者ファースト」という言葉を繰り返したことを挙げ、「物価高が続く状況で家計を手厚く支援する方針とみられる。衆院選を控えて『ばらまき』に傾きかねない」と分析。
また、同紙は「16日の記者会見は具体的な目玉政策にほとんど触れなかった。新党が政策実現ではなく、選挙での集票を目的とする結集とみなされる可能性がある」とも報じた。19日、記者会見で五つの柱を掲げたが「生活者ファースト」「選挙のたびに高齢層に向けた耳障りの良さそうなことを言う」といった国民の疑念は深まるばかりのようだ。
朝日新聞が17日、18日に実施した世論調査では、中道改革連合が高市政権に対抗できる勢力になると思うかとの問いに対し、「ならない」が69%を占め、「なる」はわずか20%だった。新党結成の電撃的な発表にもかかわらず、有権者の期待は限定的と言える。
自民党幹事長の鈴木俊一氏は16日、「エネルギー政策、原発どうするか、あるいは安全保障の問題、こういったものをこれから作るようでございまして、そういうものが後回しになった選挙互助会のような組織であると思えてなりません」と批判。立憲民主党内からも反発があり、原口一博衆議院議員は新党に参加せず、自身の政治団体を政党化する意向を示している。
27日公示、2月8日投開票と見込まれる次期衆院選に向け、新党は「生活者ファースト」という理念をどこまで具体的な政策に落とし込めるのか。その中身が問われることになる─。
