日本館で「生分解性プラスチック」に関する展示の説明を受けられる悠仁さま(9月24日)

 1月14日、皇居で新年恒例の「歌会始の儀」が行われ、秋篠宮家の長男、悠仁さまが初めて出席された。

大学での生物学の学びが表現に生きている

初めてのご出席ですから、私たちも注目していましたが、非常に落ち着いた雰囲気で驚きました。まだ大学に入ったばかりとお若いのに、さすがだなという印象を抱きました」

 と語るのは「歌会始の儀」の選者を務める、山梨県立文学館の館長・三枝昻之さん。

「今回の歌のお題となったのは『明』。“明るい”や“明日”といった似通った歌が多くなりがちで、いかに個性を出すかがポイントとなります。身近であるがゆえの難しさがある言葉でした」

 そんな中、《薄明かり 黄昏とんぼは 橋のうへ 青くつきりと 俊敏に飛ぶ》と、大好きなトンボを題材に選ばれた悠仁さま。大学での学びがこの歌にしっかりと生きていると三枝さんは分析する。


「黄昏の薄明かりですから、視界は決して明瞭ではない。その中で、トンボを“青くつきりと”“俊敏に飛ぶ”という、光景が目に浮かぶような捉え方をしているところが、この歌の巧みな点です。大学で生物学を学ぶという選択をされたことが表現にも生きていると感じました。自然を見る目の細やかさをお持ちですから、今後、歌人として可能性が広がるのが楽しみです

 公務と学問の両立を不安視する向きもあったが、一歩ずつ成長されているようだ。三枝さんは今後の悠仁さまの歌にこんな期待をしている。

今の若い歌人たちは、自分の心を表現することに夢中で、自然描写は敬遠されがちですが、実は自然描写こそ心を繊細に表現する手段の一つです。悠仁さまもいつか自然描写を経て“恋心”を詠まれることがあるかもしれません

 悠仁さまの歌に、秋篠宮さまとの“親子の絆”を感じたと話すのは、『皇室の窓』(テレビ東京系)で放送作家を務める、つげのり子さん。

秋篠宮さまは《夜明け前 一番鶏の鳴く声に アンルーナイの 一日始まる》と詠まれました。秋篠宮さまは“鶏”、悠仁さまは“トンボ”というそれぞれの研究テーマが入っています。加えて、秋篠宮さまは“夜明け前”、悠仁さまは“黄昏”と時間を表す言葉が入っているんですね。おふたりの歌がぴったりと重なり、父と息子でシンクロしているようにも感じられます。おふたりで相談されたのか、悠仁さまがお父さまの歌をお手本にされたのか……。親子の絆を感じさせる歌でした

 新時代の皇室を担う悠仁さまの確かな成長と、そこに宿る新しい感性に、大きな期待が膨らむ新年となった。
 

つげ のり子 西武文理大学非常勤講師。愛子さまご誕生以来、皇室番組に携わり、現在テレビ東京・BSテレ東で放送中の『皇室の窓』で構成を担当。著書に『素顔の美智子さま』など

三枝昻之 歌誌『りとむ』発行人。山梨県立文学館館長を務め、「歌会始の儀」の選者でもある。'21年に旭日小綬章を受章した。新著に新潮選書『百年の短歌』がある