日本人の2人に1人ががんになる時代。日々の食事の工夫で少しでも、がんになりにくくなるのなら、それに越したことはない。がん専門医で、帝京大学福岡医療技術学部教授の佐藤典宏先生に、誰でも簡単にできる食事の工夫を教えてもらった。
がんの発症リスクを上げる食材がある
「これまでは、がんと食べ物の関係はあまり詳しくわかっていませんでしたが、近年、世界中で研究が進み、がんの発症リスクが上がる食材、つまり、がんになりやすくなる食材が徐々にわかってきました。そういった食材をなるべく避けることで、がんのリスクを減らすことができます」(佐藤典宏先生、以下同)
では、具体的に要注意な食材を見ていこう。
ハムやベーコンと脂身が多い肉
がんのリスクを上げる、つまり、がんになりやすくなってしまう食材の筆頭は、ずばり加工肉だ。加工肉というのはベーコン、ハム、ソーセージ、コンビーフなどのこと。
「鮮やかでおいしそうな赤い色にするため、製造過程で食品添加物の一種である発色剤が加えられているものがほとんどです。そのため、世界保健機関の専門組織は、加工肉をタバコやアスベストと同じく、“発がん性の十分な証拠があるグループ”に分類しています」
ただ、加工肉を食べたからといってすぐにがんになるわけではない。
「研究によると1日の摂取量が50グラム増えると大腸がんのリスクが18%増えることがわかっています。毎日のようにハムを3~4枚食べていたり、ウインナーを2~3本食べていると、食べていない人に比べて約2割、大腸がんになりやすくなるということ」
また、加工していない肉のなかにも食べ過ぎ注意なものが。
「それは脂身の多い肉。豚バラ肉、牛カルビ、鶏肉の皮などが代表格です。サーロインステーキやホルモンも脂が多いので要注意。肉の脂に含まれる飽和脂肪酸はがんのリスクを確実に上げるのでできるだけ避け、鶏むね肉や豚ひれ肉など、脂身が少ない肉がおすすめです」
脂肪分の多い乳製品と1日2個以上の卵
乳製品とがんとの関係も注目されている。最新の研究で2000人以上の大腸がんの患者さんを調べたところ、脂肪分の少ない乳製品の摂取量が多いグループは再発リスクが40%低下していたのに対して、高脂肪の乳製品だと大腸がんの一種である結腸がんの再発リスクが60%増加していた。
「同じ乳製品でも脂肪分によって真逆の結果が出ているので、乳製品の“がんリスク”は脂肪分がカギを握っていると考えてよさそうです」
また、乳がんと乳製品について気にしている人も多い。乳がんと乳製品の関連についてはさまざまな説があるが、しっかりとした研究結果を見る限り、こちらも、高脂肪の乳製品が乳がんの再発リスクを上げるというデータがあるので、やはり高脂肪の乳製品に要注意ということ。
「牛乳やヨーグルトはもともと脂肪分が少なく、低脂肪タイプの商品もあるのであまり心配ないが、生クリームやバターはどうしても高脂肪になりがち。控えめにするのに越したことはありません」
さらに、身体に必要なさまざまな栄養素を含んだ卵に関しても控えめにしたほうがいいという研究結果が。
「4686人の日本人女性を15年間にわたって調べた結果、卵を1日に1個食べるグループに比べて、1日に2個以上食べるグループでは、がんによる死亡リスクが3・2倍になっていました。アメリカの研究でも卵の摂取量が増えると、がんによる死亡リスクが高くなっているので、卵は1日1個までがおすすめです」
ご飯、パン、うどんといった糖質の多い主食
ご飯やうどん、パンといった主食も要注意。それらには糖質が多く含まれるため食べると血糖値が上昇するが、血糖値が高い状態が続くと、がんが進行する恐れがあるのだ。
「がん細胞にブドウ糖を与えると細胞の増殖や転移に必要な運動能力が高まり、血糖値が上昇すると分泌されるインスリンも、がんを進行させることがわかっています。実際に、多くの研究で高血糖のがん患者さんは生存率が低いことが報告されているので、血糖値の上がりすぎを防ぐことはとても大事です」
ただし、極端に糖質を制限することはおすすめできないという。
「日本人約9万人に詳しい食事のアンケートを行い、炭水化物の摂取量とがんの発症リスクを調査したところ、摂取カロリーのうち炭水化物が占める割合が少ないグループは、がん全体のリスクが8%増加していたので、糖質制限の“やりすぎ”は避けたほうがよさそうです」
なお、糖尿病や膵炎、肝硬変、腎機能が低下している人は、糖質を制限すると危険
な場合があるので、事前に必ず主治医に相談するようにしてほしい。
菓子パンやカップ麺など食品添加物の多い食べ物
インスタントラーメンやスナック菓子などは味や見た目をよくする、あるいは長期間常温で保存できるように、多くの添加物や保存料を加えた「超加工食品」と呼ばれる食品。超加工食品を最も多く食べるグループはがんの発症リスクが20%以上高くなっていたという研究もあるが、注意したいのは菓子パンや袋詰めのパン、また、ミートボールやチキンナゲットなどの成型肉も超加工食品だということ。
「毎朝のように袋詰めの甘いパンを食べていたり、お弁当に調理済みのチキンナゲットをよく入れているとがんのリスクを上げるので要注意。ファストフードのハンバーガーも成型肉なので、当然、食べ過ぎ注意です」
また、添加物のなかでも最も発がんリスクが指摘されているのは亜硝酸塩と硝酸塩。代表的なのは亜硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウムの3つだ。
「フランスの研究で、添加物としての硝酸塩を最も多く摂取していたグループでは、最も少ないグループに比べて、乳がんのリスクが24%増えていました。さらに、添加物としての亜硝酸塩を最も多く摂取していたグループでは、最も少ないグループに比べて、前立腺がんのリスクが58%増えていたという結果もあります」
亜硝酸塩と硝酸塩はハムやベーコンといった加工肉のほか、明太子やたらこ、筋子といった魚卵製品の色をよくするためにも使われている。少量をときどき食べるくらいなら問題ないが、明太子やたらこを週に何回も食べている人は要注意だ。
身体によさそうな100%フルーツジュース
フルーツジュースは一見すると健康によさそうな気がするが、じつはがんのリスクを高めることがわかっているという。
「フルーツジュースの多くは砂糖が入っていますが、フランスの大規模な研究では、砂糖入りフルーツジュースなどの清涼飲料水の摂取量が1日100ミリリットル増えると、がんの発症リスクが18%高くなっていたのです」
では、果汁100%で砂糖が入っていないフルーツジュースならどうだろう。それなら問題なさそうだが、たとえ果汁100%でもがんの予防につながる食物繊維などが取り除かれているため、成分のほとんどが果糖と呼ばれるもの。
「糖にもいろいろな種類がありますが、ある研究では液体の果糖、特にフルーツジュースの果糖が最もがんのリスクを高めるという報告がありますので、100%でも要注意。フルーツはそのまま食べるのがおすすめです」
どうしてもジュースがいいという場合は、ミキサーを使って自分で絞り、食物繊維ごと飲むようにしたい。
サラダ油やグレープシードオイル
料理のときに使う調理用の油。ここにも“がんリスク”が潜んでいる。
まずは最も一般的なサラダ油。原料に大豆油が多く使われているものが主流で、大豆油にはリノール酸という脂肪酸が多く含まれているが……。
「リノール酸はオメガ6脂肪酸というタイプの脂肪酸ですが、これが要注意。がん細胞を増殖させる作用があることが報告されているのです。約3万8000人の女性を対象にした調査では、この脂肪酸の摂取量が多いほど、ホルモン依存性の乳がんリスクが高くなりやすく、摂取量が最も少ないグループに比べて多いグループは乳がんリスクが2・94倍高かったと報告されました」
サラダのドレッシングに使うと風味がいいため、健康志向の人に人気の高い油にグレープシードオイルがあるが、これにはオメガ6脂肪酸であるリノール酸が特に多く含まれているので要注意だ。
がんのことを考えた場合は、オレイン酸というオメガ9脂肪酸が多く含まれている調理油がおすすめ。
「具体的にはオリーブオイルやなたね油、べにばな油やキャノーラ油などです。オメガ9脂肪酸には悪玉コレステロールを抑え、大腸がんの成長を遅らせる効果があります。また、スペインの研究では乳がんのリスクが68%低下したり、イギリスからは膵臓がんのリスクが71%低かったという報告も」
なお、ごま油や米油も人気だが、これらにはがんリスクを上げるリノール酸と、がんリスクを下げるオレイン酸の両方が含まれているので、一度がんを経験しているなど、がんの発症リスクを少しでも低くしたい人は、やはり、オリーブオイルやなたね油などのほうがおすすめだ。
食事やおやつは365日、毎日の習慣。食材選びやメニュー選びなど、少し意識するだけでがんのリスクは変わる。摂りすぎ注意な食材と上手につきあっていきたい。
佐藤典宏先生●がん専門医。九州大学医学部卒、帝京大学福岡医療技術学部教授。著書に、がん発症リスクを下げる“抗がん食材”を使ったレシピ集『がんにも勝てる長生きスープ』(主婦と生活社)などがある。

