青木さやか

 「節約が苦手で、50歳のとき貯金はほぼゼロだったんです」青木さやかさんが、浪費癖、貯金ゼロの現実、そして家計の見直しに踏み出したリアルな道のりを明かしてくれた。「怖かったけど、見ないふりはもうできなくて」。50代からでも人生は立て直せる。その実感が詰まった“お金の話”をお届けします。

50歳のときには貯金がほぼゼロに

一時期は銀行口座に8000万円くらい貯金がありました。それが2年前の50歳のときにはほぼゼロに。私、貯められない女なんです

 2003年にお笑い芸人として大ブレイク。「どこ見てんのよ!」の決めゼリフで一世を風靡した青木さやかさん。多忙ゆえ使う暇なく貯まったという大金は、その後減るばかり。お金を使うのを得意とし、自他共に認める浪費家の性分が発揮された。

「賃貸マンションの住まいをどんどんグレードアップさせていったんです。『大きな家に住むと大きな仕事が来るぞ!』と昭和のジンクスが囁かれていたから。

 高額な家賃に加え広くなった部屋に合わせてオーダーで絨毯やカーテンを作ったり、家具、絵画、車などを購入したり。一番の浪費は、お金が貯まるダイヤのネックレスなるもの。当然ながら効果はありませんでした(笑)」(青木さん、以下同)

 このままではまずい……と思ったのは同年代のマネージャー。お金の知識がなく貯められない青木さんを目覚めさせるべく、ファイナンシャルプランナーに指導を受けるマネー連載企画を始めることに。

 同連載ではアプリで家計簿をつけることを第一歩とし、効果はすぐに表れた。

自分が何にいくら使っているか、把握できるようになっていきました。同時に、食費や光熱費、交際費などの支出項目が並ぶ中、この項目は落とせる、この項目は落とせないとの判断もできるようになったんです。そして最終的に、“私は月にいくら必要な人間なんだ”ということがわかったのは大きかったです

 節約は苦手なものの、意識していなかったわけではない。スーパーでちょっと安いものを買うなどしていたとか。

ただ、家計にとってどのくらいの節約になっているか、さっぱりわかっていませんでした。家計簿で支出を見極めたことにより、節約の正しい道筋が見えてきたのでしょう

 青木さんは仕事で外出の際、コンビニに行くことが多かった。昼ごはんや飲み物のほか、余分なものも買っていたこの行動をまず封印し、手作りのおにぎりや、水筒を持ち歩く生活に切り替えた。

必要なお金は削らない

おにぎりの具材や水筒の中身のお茶は自分の好きなこだわりのものにします。そうすると、節約しつつ豊かな気持ちになれるんですよ

外出の際は節約のためにおにぎり、水筒、即席スープなどを持参。この日は塩おにぎりともずくスープ 写真提供/青木さやか

 ストレスがたまると衝動買いの欲求にかられる。こちらは抑えられないため、“置き換え”の作戦を実行。

以前は洋服屋を衝動買いの場としていたのを、JA(農協)や道の駅に置き換えました。野菜であれば単価が安いから衝動買いしても財布は痛まずにすみ、新鮮かつ美味しい食材も手に入る。一石二鳥といえます

 洋服はサブスクを利用したり、娘さんと古着を買いに行いくことが増えたそう。

洋服のサブスクは1か月3着限定で、何が届くかワクワクする。古着は娘とお店を巡る時間ができ、安い1着を見つけられる。どちらも節約しながら楽しみがあります

 そのほか、ふるさと納税やポイ活にも挑戦。節約とともにおトクを手にしている。

一方で交際費は削らないし、娘の教育費も削らない。必要なお金ですから。もちろん、ムダな外食などはしませんよ

 節約で浮いたお金は銀行に預けて貯めるだけではない。お金に働いてもらうべく、投資を始めた青木さん。新NISAやiDeCoによる積み立て投資デビューを果たしている。

証券会社の口座開設に苦労し、口座にアクセスするために必要なパスワードの管理も大変でした。そうした問題を友人の助けを借りてクリアした後は、コツコツと積み立てていくのみ。少しずつ資産が増えていくのを見るのが楽しみでしたね

 結果、2年弱でトータルの貯蓄額が200万円に到達! 貯められる女へ踏み出すことができたのだ。

一気に稼いだお金より、コツコツと貯めたお金には、私に浪費を躊躇させる力があります。自力・継続の大切さを改めて痛感しました

 そしてもうひとつ気づかされたことがあるという。

貯めることに興味がわいてから、いろんな人とお金の話を突っ込んでするようになったんです。すると、“全然貯めてないよ”と口にしていた多くの人が自分より先に投資をやっていたりして。貯めてないという言葉を信じてぬるま湯につかっていたらまずい。私には夫もおらず、頼れるのは自分だけということをまざまざと考えて生活するようになりました

 青木さんは2012年に離婚して娘と2人暮らし。そして、2017年と2019年に肺腺がんの手術を受けているが、その際にも気づきがあった。がん保険に加入していたものの、保険金が下りたのは2社入っていたうちの1社のみだったそう。

遠くの親戚より近くの他人

がんの治療にはお金がかかります。私のように保険金が下りないケースや、保険では賄えない費用も発生します。治療費以外でいえば、体力がなくタクシー、家事代行を利用、娘の預け先へのお礼。そのほか収入も落ちるという感じ。ですから自由診療も頭に入れつつ、ある程度蓄えておく必要があると思います

青木さやか著『貯蓄が苦手な人こそ読んでほしいお金の第一歩 お金まわりを見直したら人生が変わった』(日経BP)《Kindle版はコチラ

 近年、おひとりさまの老後に不安を抱える人も増えているが、青木さんはどう考えているのだろうか。

「健康な限りは何かしら仕事をしていたいです。老後の生活にいくら必要かはわかりませんが、私の場合、仕事以外にコミュニティーを持っていることが大きな支えになるんじゃないかと考えています。静岡・富士宮市の動物愛護団体です。

 かれこれ15年近く一緒に活動していて、年老いた将来、動物を見ながらみんなで暮らしてもいいよねみたいな話もしているんですよ。いわば“よりどころ”。大勢で暮らすのは得意じゃないけど、最悪の場合それでもいいかなと(笑)

 身近なよりどころとして、近所付き合いも積極的に行っているそう。

やはり遠くの親戚より近くの他人です。私を助けてくれたのはそういう人だったし、自分自身もそばで助けてあげられます。これからも大事にしたいと思います

 日本人は貯金を好む一方でお金を使うのが苦手。楽しみに使わないまま、ただ貯めている人が多い─そんな話をお金の専門家との対談で聞いたという青木さん。

私は将来行きたい場所があったら、早めに行くことにしているんです。見たいもの、食べたいものも同じように前倒しします。楽しみにお金を使うなら、早く実現したほうがいい。そうすれば頑張るモチベーションになるし、楽しい思い出も増えていくから、ポジティブな人生を送れるんです。将来なんていつそのときが来るかわからないですからね

 楽しみを先延ばしにすると、親の介護や自身の病気などで動けなくなり、結局、夢叶わずということも往々にしてある。

何の問題もなく動けるときって、意外と少ないもの。年齢を重ねてつくづくそう思います。どこか行きたいか? 今年はカナダかな。光浦(靖子)さんに会いに。光浦さん、待っててください

取材・文/百瀬康司

あおき・さやか 1973年、愛知県生まれ。タレント、俳優、エッセイスト。フリーアナウンサーを経てお笑い芸人になる。「どこ見てんのよ!」のネタでブレイクし、バラエティー番組に多数出演。現在は高校生の娘を育てながら、テレビ番組、舞台などでの活動に加え、著書に『』(中央公論新社)、『お金まわりを見直したら 人生が変わった』(日経BP社)など。