お金や人間関係、健康、そして老後の不安……。モヤモヤすることばかりでなんだか気持ちが晴れない。でも、それは全部自分の“心”がつくり出しているもの。現実がたとえうまくいかなくても、幸せを感じるのは自分次第! 「人間の健康も運命も心ひとつの置きどころで変わる」と断言する天風メソッドで、ポジティブ人生へと導きます。
心の持ちようが人生を左右する
今の日本を取り巻く状況には明るい話題が少なく、漠然とした不安感を抱えている人も少なくない。そんなご時世に、改めて注目を集めている教えがある。大正・昭和期に活躍した思想家・中村天風の「天風哲学」だ。
「天風先生は30歳のころ、当時不治の病だった肺結核を患い、それを治すためにヒマラヤでヨガ修行を行い、悟りを開いた人物。やがて病を克服して帰国、後半生は自身の得た悟りを『心身統一法』と名づけてその教えを説くことに捧げました」
そう教えてくれたのは、中村天風の最後の弟子・合田周平氏との書籍執筆をきっかけに天風哲学の真髄を学んだ堀田孝之さんだ。
「天風哲学の主軸は『心で考えたことや心の思いが、あなたの人生や健康を決める』というもの。心を前向きに積極的にしていけば、人生もそのようにつくられていく。逆に、『自分は不幸』だと思えば本当に不幸になっていく。つまり、心の持ちようが人生を左右するというのです」(堀田さん、以下同)
天風哲学が支持される要因は、単なる精神論ではなく、その先の「実践法」まで用意されている点。
「ただ、“ポジティブになりましょう”と言われても、実際は簡単ではないですよね。天風先生は“心”を自分の意思でコントロールできる“道具”だと捉え、心を思いどおりにコントロールして人生の主導権を自分が握る思考術や実践法を教えています」
とはいえ、堀田さん自身、当初は天風哲学に対して、半信半疑だったという。
「そもそも僕は極度のネガティブ思考で、むしろネガティブであることを肯定していました。でもそうやって生きてきたら、人生がどんどん悪いほうへ向かってしまい……。仕事は行き詰まり、退職を余儀なくされ、家庭も崩壊。一時はうつ病になって人生を終わらせたいという衝動に駆られたこともありました」
大谷翔平選手や松下幸之助氏なども教えに傾倒
そんな堀田さんを救ったのが天風哲学だった。
「すべてを失ったときに、ふと天風先生の本を読み返したら、その言葉がジワーッと心に染みて。そこから天風先生の教えを実践していったことで、うつからも抜け出し、死を免れることができました。天風哲学に出合えて本当に感謝しています」
天風支持者には、堀田さんのように人生の壁にぶつかっていた人も多い。
「象徴的なのは作家の宇野千代です。晩年、大スランプに陥って十数年書けなかった彼女が、天風先生の言葉に薫陶を受けて以降、蘇生したように傑作を生み出しています」
メジャーリーガーの大谷翔平選手や、松下幸之助氏(パナソニック創業者)、稲盛和夫氏(京セラ創業者)など日本を代表する著名人もその教えに傾倒してきた。
「一流の方たちは、すでに極限まで努力を重ねてきた人たち。『あと一歩、さらなる高みを目指したい』というときに、すべての起点が『心』にあると深く理解しているからこそ、天風先生の教えに共感するのではないでしょうか」
さらに近年は、女性読者も増加。タレントのMEGUMIも、天風先生の教えを実践していると公言。ある美容雑誌の対談で《ネガティブな思考からは距離を置く。後ろ向きな言葉は絶対に言わないように決めた》と語り、それによって気持ちが楽になったと明かしている。
「『ジェンダー平等』とはいえ、いまの女性は妻や母の役割に加え、会社内での男女格差など、多くのストレスを抱えがち。『心をコントロールして人生の主人公になる』という天風先生のメッセージが一層響くのだと思います」
生きていれば、怒りや悲しみを感じたり、誰かと比べて嫉妬をしたり恨んだり……と、心が後ろ向きになってしまう瞬間はあるもの。
『心の大掃除』が必要
「天風先生は、『負の感情を持ってはいけない』と否定するのではなく、怒ったり悲しんだりしたとしても、それを引きずらず『その瞬間』だけの感情にとどめることが大切と教えます。感情に執着して抱えたままでは、心はどんどんネガティブになってしまうからです」
そこで、マイナスな思考を一瞬で切り替える具体的な方法がこちら。
「例えば、怒りや悲しみに襲われたときは、それらが新幹線の車窓の景色のように、後ろに流れ去っていくイメージをします。あるいは、胸元のスイッチをカチッと押して負の感情を消すイメージをしてもいい」
自分なりのやり方でいいので、心がブレたときのルールにして、それを習慣にする。
「最初は難しくても、繰り返すうちに次第に感情に引きずられにくくなります。ただ、それでもネガティブなループから抜け出せないときは『心の大掃除』が必要です」
「心の大掃除」とは、潜在意識の中に蓄積された「消極的な感情のもと」を排除すること。特に年齢を重ねるほど、長年の思考のクセでそれがたまりやすくなっているという。例えば、終わりの見えない家族の介護に疲れ切っている女性の場合。
「介護という過酷な現実は、すぐには変えられないかもしれません。でも、ずっとネガティブな心境でいると心の倉庫は『消極的な感情のもと』でいっぱいになって、介護をしていない時間までマイナスの感情に支配されてしまいます。そこで、たとえ嘘でも“私は幸せ”“あなたは最高に幸せになる”と自己暗示をかけ続けるのです。すると驚くほど心が前向きになっていきます」
この自己暗示が心の大掃除になる。また、孤独を感じている人には、理想や生きがいを持つことをすすめている。
「陶芸や手芸など小さな趣味でいい。特に『何かを生み出す創造の生活』を始めると、心の活性化やアンチエイジングにつながります」
さらに、後ろ向きな言葉が浮かんだら、すぐ「……とは思わない!」と打ち消す。あるいは嘘でもいいから笑ってみる。この繰り返しが心をポジティブにしていくのだ。
「心の持ちようを変えるだけで、どんな環境でも幸せを感じられるようになります。前向きになると、心が楽になって自然と笑顔が増える。すると周囲に助けてくれる人が集まってきて、現実も少しずついいほうに好転し始めます」
今回紹介する具体的な実践法を習慣にして、幸せな人生を踏み出そう。
取材・文/荒木睦美
堀田孝之さん ライター、編集者。中村天風最後の弟子、合田周平氏との書籍執筆を機に天風哲学の真髄を学ぶ。近著『中村天風 人生の「主人公」になる教え』(主婦と生活社)では、現代特有の悩みを手放す考え方や天風考案の実践術を、イラストとともにわかりやすく解説している

