事件が発生したのは、1月15日午前10時ごろだった。
「まず救急車、パトカー、覆面パトカー、消防車が駆けつけ、“人が刺されたようだ”との情報が駆け巡りました。路上には大量の血だまりがあって、目撃した男性は“見たくないものを見てしまった”とショックな様子で……」
と振り返るのは近所の女性。
家賃滞納による立ち退きの強制執行で
東京都杉並区和泉のアパートで、家賃滞納による立ち退きの強制執行で訪問した東京地裁の60代の男性執行官ら2人が住人の男に包丁で刺された。執行官は胸を刺されてケガを負い、家賃保証会社の社員・小栗壽晃さん(61)は背中を刺されて死亡した。
「担架で救急車に乗せられる様子を続けざまに見ました。1人目はスーツっぽい服装にダウンを羽織ったメガネの男性で、救急隊員の呼びかけに呼応するように無言で片手を上げました。2人目はまったく動かず、心臓マッサージを受けながら救急車に乗せられました」(前出の女性)
犯行後に逃走し、北方面に約600メートル先の住宅街で身柄を確保されたのは職業不詳の山本宏容疑者(40)。目撃した女性によると、抵抗するそぶりはなかったという。警視庁高井戸署は殺人未遂容疑で現行犯逮捕し、容疑は殺人に切り替わる見通しだ。
「家賃は月6万円台。'24年10月から全額滞納で、総額は100万円弱になるそうです。裁判所の退去命令を受けて当日は部屋の明け渡し期限でした。荷物の搬送業者を含め計10人態勢で執行にあたり、一部が呼び鈴を押したところ、ドアを開けた山本容疑者が煙の出ている段ボール箱を持って“荷物はこれだけです”と言ったそうです。危険を察知した執行側が逃げ出すと、爆発音がして、追いかけてきた山本容疑者が2人を刺したのです」(全国紙社会部記者)
「コロナ禍以降は就職する気になれなかった」
段ボール箱には、カセットコンロ用のガスボンベや着火剤、ネジなどが詰められていたという。アパートは約10平方メートルが焼けた。
「室内でトイレットペーパーに火をつけ煙を吸い込んで自殺を試み、息苦しさに耐えきれず廊下に出たそうです。“住むところがなくなって終わりだと思った。自分も死んでもいいと思った。目に入った2人を刺した”と述べています。以前はIT企業で働いていたようですが、退職後は貯金を取り崩してしのぎ、生活保護を受けるに至りました。スキマバイトを始めると生活保護は打ち切られ、家賃を催促されても無視したり、開き直ったり。“コロナ禍以降は就職する気になれなかった”そうです」(前出の記者)
同じアパートの女性住人は「部屋の中まで焦げた臭いや煙が入ってきて、どこが火事かと思ったらここ。“避難したほうがいい”と言われて逃げました」と振り返る。
近隣住民によると、騒音やゴミ出しマナーなどのトラブルはなく、あまり外出せずに静かに生活していたようだ。
「“こんにちは”程度ですけど、日中や夜間に何度かすれ違って挨拶しました。挨拶は返してくれましたが、おとなしい印象ですね。おしゃれでも不潔でもない小太りのおじさんで、夏はTシャツに長ズボン姿。冬は黒っぽいダウンかジャンパーを着ていました」(同じアパートの男性住人)
スキマバイトは、履歴書や面接が不要で即日払いの案件が少なくない。容疑者は空いている時間はいくらでもあったはずで、スキマバイトにこだわる理由は見当たらない。
現場周辺では「やり直せない滞納額ではない」「働けばいい」「甘ったれている」「夜逃げのほうがまだマシ」と憤りの声が聞かれた。なぜ、このような凶行に走ってしまったのだろうか─。
