令和7年九州場所で初優勝し大関に昇進したウクライナ出身の安青錦関(写真/共同通信)

 大相撲初場所で新大関・安青錦が2場所連続優勝を飾った25日、表彰式と並ぶ千秋楽の華である三賞(殊勲賞・敢闘賞・技能賞、賞金各200万円、横綱と大関は対象外)の選考をめぐり、相撲ファンの間で議論が広がっている。

 三賞の内容として、殊勲賞は横綱や大関から白星を挙げた力士、敢闘賞は敢闘精神旺盛な力士に、技能賞は決まり手の数が豊富な力士や、奇手を繰り出す力士として技能が優秀だったものに与えらえるものだが─。

相撲協会が発表した条件付き受賞

熱海富士 土俵では厳しい表情だが、キュートな笑顔は相撲中継や会場で要チェック! 撮影/共同通信

 千秋楽当日の午後1時に相撲協会が発表した三賞の内訳は、

《殊勲賞》熱海富士(12勝で優勝すれば)、義ノ富士(千秋楽勝てば)
《敢闘賞》熱海富士、霧島(千秋楽勝てば)、阿炎(千秋楽勝てば)、欧勝海(千秋楽勝てば)
《技能賞》該当者なし

 と、確定していたのは熱海富士の敢闘賞のみ。

 この発表を受け、「今日勝てばが多すぎる」「技能賞の該当なしは本当ですか?何を見てましたか?」「熱海富士に素直に殊勲賞あげないの?いつもひどいけど、今場所は特にひどいな!」といった“条件付き”に疑問を呈する声が殺到した。

 結果、義ノ富士が欧勝馬を押し出し殊勲賞、霧島が阿炎戦を制して敢闘賞を獲得し、今場所の三賞は敢闘賞の熱海富士を入れた3力士だった。

「実は去年11月、安青錦が初優勝した大相撲九州場所でも似たような条件付きでの三賞でした。殊勲賞は安青錦(優勝した場合)、敢闘賞は霧島と一山本(どちらも勝った場合)、技能賞は安青錦と義ノ富士で、全員クリアして見事各賞を受賞しました。しかし、横綱・大の里と優勝した安青錦に完勝した義ノ富士に殊勲賞獲得を予想する声が多かったのですが、条件すら付かず受賞しませんでした。このときも、選出基準に不満の声が上がりましたね」(相撲ライター)

藤ノ川の落選に解説者も首をかしげる

両国国技館

 初場所も“条件”に疑問を抱くファンが多い中、特に議論を呼んだのが幕内最年少20歳の藤ノ川の落選だった。西前頭7枚目の藤ノ川は千秋楽で時疾風を破り、初の2桁となる10勝を挙げた。小兵ながら真っ向勝負を貫く取り口は場内を沸かせ、NHK中継の解説を務めた琴風浩一氏(元大関)と舞の海秀平氏(元小結)も高く評価していた。

 藤ノ川が10勝目を決めた直後、舞の海氏は「技能賞ぐらいあげたかったですね」と語り、琴風氏も「なんでダメだったんだろう。いい相撲とってると思いますけどね」とコメント。現場で相撲を見続けてきた解説者の疑問は、多くのファンの思いと重なり「ハァ!?藤ノ川は!?」「日々両国を沸かせてる藤ノ川さんもいない」と、ファンも不満のようだ。

 三賞の選考は、審判委員や維持員、記者の中から理事長が委嘱した選考委員会が千秋楽に開催し、出席者の過半数の賛成で決定される。受賞には勝ち越しが前提条件で、相撲内容が重視される一方、近年は10勝しても受賞できないケースが増えているのが実情だ。

「条件付きは以前からありますが、すでに勝ち越している力士に『今日勝てば』という条件を付けることには疑問を感じざるを得ません。千秋楽が大事なのは理解できますが、それまでの積み重ねも重要です。特に藤ノ川のように、体格差を技術と気迫でカバーして10勝を挙げた若手を評価しないのは、相撲界の活性化という観点からもマイナスなのではないでしょうか」(同・相撲ライター)

 三賞を受賞した力士には200万円が贈られるため、一部では協会の懐事情が背景にあるのではとされている。

 三賞は1947年秋場所から実施され、時代とともに選考基準は変化してきたがファンから《技能賞該当者なしは寂しい》という声に加え、選考基準や選考理由について公表してもいいのではないかという指摘も上がっている。

 何年も続く条件付き授与のあり方について、そろそろ見直しの時期に来ているのかもしれない─。