大相撲の幕内力士・玉鷲一朗(片男波部屋公式HPより)

 東京・両国国技館で1月26日、大相撲の幕内力士・玉鷲一朗(41=モンゴル出身・片男波部屋)にギネス世界記録の公式認定証が贈呈された。2004年1月場所の初土俵から一度も休まず、2026年初場所終了時点で1763回の連続出場を達成。約21年間にわたる「無休の鉄人」として、大相撲史上最多連続出場の記録保持者となった─。

大相撲の玉鷲41歳がギネス世界記録

ギネス世界記録の公式認定証が贈呈されてご満悦の玉鷲(ギネス公式アカウントより)

 モンゴルから駆けつけた両親と姉を前に、玉鷲は万感の思いを口にした。

「ずっと頑張ってきて良かった。今まで応援してくれた皆さんの力が合わさって、ここまでできた」

 家族との記念撮影で父・バトジャルガルさんは、涙を流しながら息子の偉業を見守った。

 サッカー界のキング・カズこと三浦知良(58)や、スキージャンプのレジェンド葛西紀明(53)も50歳を超えて現役を続けているが、これらの競技と大相撲では身体への負担が根本的に異なる。1トンともいわれる衝撃が発生する力士同士のぶつかり合い、連日繰り返される激しい稽古、連続15日間、年6場所も戦い抜く過酷さは、他のスポーツとは一線を画す。

「力士の平均引退年齢は30歳前後とされ、幕内力士でも30代前半で引退するケースが多いです。元大関の魁皇(現・浅香山親方)は2011年に38歳11か月、元関脇嘉風(現・中村親方)は2019年、37歳で引退。これでも当時は“長く現役を続けた”と評されました。玉鷲が41歳で、しかも関取として土俵に上がり続けていることが、いかに異例であるかがわかりますね(相撲ライター)

 昭和以降で40代まで現役を続けた幕内力士は玉鷲を含めわずか6人。戦後に限れば、モンゴル出身の旭天鵬(40歳10か月で引退=現・大島親方)と玉鷲の2人だけだ。旭天鵬は2015年7月場所、37歳8か月で優勝を果たし、当時の最年長優勝記録を樹立したが、玉鷲はさらにそれを更新。2022年秋場所で37歳10か月での優勝を成し遂げている。

 2024年秋場所3日目、玉鷲は元関脇・青葉城が保持していた1630回の連続出場記録に並び、翌日にこれを更新した。この瞬間、大相撲の新たな歴史が刻まれた。

玉鷲「50歳は無理です」

 玉鷲は取材に対し、昨年の巡業中に世界記録に載ったことを知らされたといい「まだ頑張りたい。50歳?いやそれは無理です」と苦笑いでコメント。

 SNSで公開された認定賞授与の投稿にも「鉄人・玉鷲関の徹底した自己管理と精神力の賜物です」「初土俵から休まず土俵に上がり続ける姿、素晴らしいです!」「今の勢いなら50歳までいけますよ」と祝福のコメントが相次いだ。

「単に怪我をしないということだけではなく、番付を維持し続ける実力はもちろん、体調管理、精神力、周囲のサポート体制、すべてが揃わなければ不可能だと思います。玉鷲関は30代になってから初優勝、上位定着した力士で、年齢を重ねてもなお進化を続けていると感じます。今場所は痛めていた腰が影響したのか5勝10敗と負け越しましたが、勝ち星を挙げているのは事実です。いつまで現役を続行するかはわかりませんが、当分この記録は抜かれることはないのではないでしょうか」(同・相撲ライター)

 通算連続出場歴代2位となった2023年9月の大相撲秋場所、日刊スポーツの報道によると玉鷲は「膝、首、背中。年を取って痛むところも多くなった。『いつ土俵で死んでもおかしくない』と思うようになった。だからといって、ビビって引いたり、逃げたりはしたくない。それは『玉鷲の相撲』じゃない(中略)。『いつ土俵で死んでもいい』」と鉄人らしい覚悟を口にしている。

 この言葉が発せられてから2年弱。玉鷲は約束どおり、一度も引くことなく土俵に上がり続けた。そしてギネス世界記録という形で、その覚悟が公式に認められることになった。

 ギネス記録はあくまで通過点に過ぎない。41歳の玉鷲は、来場所も当たり前のように土俵に上がり、頭からぶつかっていくだろう─。