『豊臣兄弟!』に出演する池松壮亮(左)と仲野太賀

 NHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』の放送が始まった。初回視聴率13.5%は、大河としてはそれほど高い数字ではなかったが、前作『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』の12.6%、前々作『光る君へ』の12.7%を上回り、視聴者の反応も「面白い」と概ね高評価だった。

『べらぼう』の功績と反省点

『どうする家康』(2023年)以来、3期3年ぶりに主人公が“戦国武将”となる。当然、舞台は戦国時代。大河ドラマの王道であり、オールド大河ファンが大好きなテーマだ。

『光る君へ』と『べらぼう』は、大河の中でも異色のドラマだったということに異を唱える人はいない。特に『べらぼう』は、「R-18」指定かと思えるようなシーンがあったり、検索しないと理解できない言葉や人物が登場し、「NHKが攻めている」「挑戦的、試験的だ」という声が聞こえたほどだ。新鮮味に加え、主演の横浜流星や俳優陣の好演もあってドラマは好評だったが、最終的に全48回の平均世帯視聴率は関東地区で、9.5%(個人視聴率5.5%)だった。『光る君へ』(世帯10.7%)を下回り、2019年の「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」(世帯8.2%)に次ぐ過去2番目の低さだった。

「主人公が町民で合戦シーンはまったくなく、それでいて話の展開も速かった。民放の痛快時代劇のような色合いもあり、また“大人向け”の演出もあって、古くからの大河ファンだけでなく新たなファンを獲得することができました。もちろん、横浜さんのファンである女性たちも。ただ、ドラマが初まったころは、知らない、あるいは聞いたことのない言葉や書物、歴史上の出来事を検索しながら視聴することが楽しい部分もあったのですが、難解すぎたのか視聴者も疲れてきたのでしょうね。後半は“もういいや”という声が聞かれるようになりました。その辺りが、視聴者離れに繋がったのだと思います」(テレビ誌ライター)

『べらぼう』においては、そんな視聴者のために蔦重や書物、当時の背景などを解説する番組まで放送された。そんな轍を踏まないようにというわけでもないだろうが、『豊臣兄弟!』に難解さはどこにもない。歴史を学んだ人なら、主人公はもちろん、ドラマに登場する人物の名前たいてい聞いたことがある。また、歴史を学んでいなくとも、この兄弟の名前を聞いたことがある人は多いだろう。

“リメイク作品”を見る感覚

 乱暴な言い方かもしれないが、“誰でも知っている主人公”とその主人公が活躍した時代が描かれるドラマであって、視聴者は気楽にドラマ自体を楽しむことができる。だが、これまで大河を含め何度もドラマ化されている、所謂『太閤記』の焼き直しに、視聴者は「またか」とならないのだろうか。

 ベテラン映画記者はこう語る。

「映画で言うなら、“リメイク作品”を見る感覚だと思います。キャストや演出の違いを前作品と比較してみる楽しみがあります。映画でも何度もリメイクされている作品もあり、大まかなストーリーは同じで話の流れがわかっていても、キャストが変わった新鮮さもあり、面白さという点では前作を超えるものも多い。大河でも、以前放送された作品とテーマに大きな違いはなくても、フォーカスする人物が違っていますし、俳優も違いますから既視感を感じることはないでしょうね」

 王道に回帰した『豊臣兄弟!』には、これまでの大河と違う目新しい点がいくつかある。

『豊臣兄弟!』出演中の仲野太賀と白石聖(公式インスタグラムより)

第1話を見て感じた人が多いと思いますが、兄弟のやり取りがコミカルであったり、兄弟の母親や姉、妹との触れ合いはどこかホームドラマっぽく、当時の農家の生活感も出ていて、戦国時代が舞台であるにも関わらず殺伐感が薄くなっていると感じました。かといって大河ドラマの真骨頂、合戦シーンは手抜きになっていません。

 さらに、戦国武将が主人公となると、まわりにいる女性たちの描き方が浅くなりがちですが、今作では、お市役の宮崎あおいさんを始め、浜辺美波さん、白石聖さん、宮沢エマさん、吉岡里帆さんなど、顔ぶれが非常に豪華ですから、あっさりという感じにはならないと思います。

 大河ドラマや朝ドラでは、主人公の幼年期から成人までの過程を何話かに渡って描く場合が多いですが、今作はいきなり青年期から始まっていて、それが展開の速さ、テンポの良さに繋がっていたり、若いふたりの兄弟の青春ドラマのような要素もあります。また、ドラマは好きでも大河や時代劇に興味がなかった人たちにも刺さる演出となっています。元々ある大河の魅力に加え、前作『べらぼう』で評価された点と、朝ドラ、そしてヒット作を連発している夜ドラのまさに“いいとこ取り”ですね」(同・映画記者)

 やはり、NHKの攻めの姿勢は変わっていないようだ。実は配信視聴も好調で、NHK ONEでは、2025年10月のサービス開始以降に配信された番組の中で、『第76回NHK紅白歌合戦』を除き、初めて再生回数が100万回を超える番組となったという。

 ここから先は歴史に残る“事件”が立て続けに起き、合戦シーンも増えることだろう。始まったばかりの『豊臣兄弟!』だが、ファンの期待はますます膨らむ――。