「ようやく先が明るく見えてきて、今、楽しく稽古をやっています」
2月7日からスタートする舞台『プレゼント・ラフター』にギャリー役で主演を務める稲垣吾郎。1942年の初演以来、世界各地で上演されているイギリスの劇作家ノエル・カワードの傑作だ。稽古が佳境に入った時期に話を聞くと、穏やかな表情でこう語ってくれた。
「役に合っている」はいちばんうれしい言葉
ウイットに富んだ風刺的喜劇で、セリフの量がとにかく膨大なのだが、「そういう覚悟でみんなやるものだと思いますよ」と、涼しい顔。
「活字で読んだときより、実際にしゃべったときのほうが短く感じるものですしね。台本を読んだ段階では難しく感じた部分も、実際に声に出し、身体を使ってお芝居をすることで、クリアになっていく。そこが戯曲のすごいところでもあると思います。小説だったら、たぶん読みにくいですよね。カギカッコの中が、ものすごく長い小説なんて(笑)」
誰からも好かれるスター俳優のギャリー。だが、人気者ゆえの孤独を抱えていたり、私生活でも演技をしてしまったり、仲間内では偏屈でかんしゃくを起こしたりと、なかなかの変わり者。ノエル・カワードの半自伝的作品ともいわれているが、稲垣に当て書きされたようにも思えるくらいハマっていると前評判も高い。
「役に合っているというのは、やっぱりいちばんうれしい言葉です。それが“演じる”ということですから。でも実際の自分とは全然違いますね。世間のイメージとして似ているというのは、自分を客観的に俯瞰して、なんとなく見えてはいるので、わかりますけど」
ギャラリーをはけ口に楽しんで
今作は大人のラブコメディーでもあり、モテ男のギャリーは女性から「鍵を忘れちゃった」と言い寄られ、家に泊めてしまう。そこから騒動に発展していくのだが、女性にこう言われてしまうと回避できないものなのだろうか?
「いや、回避する術はいくらでもあると思いますよ(笑)。でも彼は、頭ではダメだとわかっていても、本能的な部分で微かな期待があったというか。
本当にダメだと思っていたら、回避できる。みんな、そうでしょ? ダメだとわかっていてもやってしまうのは、潜在意識でやりたいと思っているから。そこが人間の面白いところですよね。今はこういうことを厳しく断罪されてしまう世の中だから、ギャリーをはけ口にして楽しんでいただければと(笑)」
まさに、それがお芝居の醍醐味なのかもしれない。
「実際の生活ではできないことや言えないことでも、エンターテインメントの世界でやる分には炎上もしないですしね(笑)。あくまでもフィクションですから。そんな楽しみ方もいいですよね」
ちなみに、登場する女性はギャリーをあしらう系の元妻、秘書、家政婦と、言い寄る系の若い女優志望の女性、友人の妻で魔性の女、というタイプの違う5人。稲垣自身は誰派かと尋ねると。
「どうでしょう? でも、それぞれに合わせて楽しめそうな自分がいるかも。“自分はこういう人と恋愛する”と決めつけるのはつまらないんじゃないかと思うんです。そのときそのときで、いいなと思うタイプが変わる。色恋って、そういう予測不可能なところが面白いんじゃないかな」
孤独を恐れ、寂しがり屋に見えるギャリー。「あまり孤独を感じない」と話していた稲垣だが、寂しがり屋ではないのだろうか?
「いや、そういう感情がゼロではないですよ。人間ですから。一人の時間を楽しむのも好きだけど、ずっとそうだったら人恋しくなるというか。お話を聞いてもらいたい、聞きたいというのは絶対に出てくるもの。孤独を愛するとか一人がいいということでは、全然ないです。ただ、一人だと寂しくて生活できないとか、外食できないということはないですけどね。
あと、ギャリーは大勢の人に囲まれてはいるけど、本当の気持ちを言えず、埋められない孤独がある。すごく不器用な人かもしれないと思ったりします」
そんな愛すべき主人公を舞台でどう見せてくれるのか。開幕が待ちきれない!
もうすぐバレンタイン!
「バレンタインではないんですけど、この間、平井理央さんにチョコレートをいただいたんです。彼女がプロデュースしている、ほろ苦なビターチョコレート。健康志向のものだそうで、すごく美味しかったです。チョコって、カカオにリラックス効果もあるし、いいですよね。昔と比べてどんどん美味しくなってるように感じます」
撮影/廣瀬靖士 取材・文/今井ひとみ ヘアメイク/金田順子 スタイリスト/黒澤彰乃
