年が明け、人的被害は減っているように思われるが(写真はイメージ)

 ここ何年かで急激に増えてきた、クマの市街地への出没。昨年末には冬眠に入っている時季のはずなのに、人間の生活圏内で姿を現したというニュースが毎日のように流れていた。しかし年が明けてからは、クマ出没についてのニュースはほとんど見かけない。

“クマ騒動”は収束に?

「市街地など、人間の生活圏に出没するクマの数は今年に入ってから激減しています」

 こう話すのは、森林総合研究所・東北支所で動物生態遺伝担当チーム長を務める大西尚樹さん。すでに冬眠に入っていると語る。しかし、人間の生活圏に来なくてはいけないくらいにエサが少なかった昨年。冬眠の途中で、空腹を覚えて起きてしまうということはないのだろうか?

「そういうことはほとんどないと思います。たくさん食べる秋は、冬眠に備えて人間でいえば満腹中枢が機能していない状態です。ホルモンの状態が、とにかく脂肪をつけるために食べ続けるようになるんです」(大西さん、以下同)

 そのホルモンのバランスの“スイッチ”が切れると冬眠に入っていくという。

「その切り替わりは気温ではなく、おそらく食べたエサの量だと思います。昨年のようにエサが少ない年は、例年に比べて早く冬眠に入ることが知られています」

 だが、昨年は年末まで「クマ出没」が報じられていたが─。

「市街地に現れていた個体については、自分の“エサ場”だったのでしょう。山の中では早くにエサがなくなってしまいましたが、人間の生活圏なら木になった果実など、エサとなるものはまだまだありましたので。それを食べ尽くしたということで、冬眠に入ったのだと思います」

 とりあえずは一段落した感のある“クマ騒動”だが、冬眠から目覚めれば、またエサを求めて人里に……。

「クマが活動を始めるのは、だいたい3月から4月くらい。春先にも市街地などに出没してくると思いますが、数は夏以降に増えるでしょう」

 東北地方でいえば、市街地などに出没する数は、特に若いオスの個体が増えると大西さんは予測する。

「昨年の今くらいに子グマがたくさん生まれています。実際、東北地方で子連れの親子グマによる事故が全体の2割くらいを占めていました。

 その子グマが親離れするのが夏です。メスは生まれた場所にとどまるのですが、オスは自分の居場所を求めて離れます。ただ、山の中には当然自分より強いクマがたくさんいるので、そういう個体を避けていくと、どうしても市街地など人間の生活圏に近くなる可能性があります」

 大西さんは、今年のクマ出没の日本全体の傾向としてこう話す。

「昨年は東北地方でのクマ出没が多かったのですが、今年は西日本が多くなると思います。クマのエサになる木の実などが、昨年は東北地方で不作でした。今年は西日本が不作になるという予想が出ています。ここ何年かの傾向なのですが、1年ごとに不作と豊作が入れ替わっているんです」

 山の恵みは自然任せ。エサに困るほど数が増えすぎてしまったクマ、そして人間の“受難の時代”は、まだまだ続きそうだ─。


取材・文/蒔田稔