深海(FUKAMI)タレント、スタイリスト。東京服飾専門学校講師。2012年、スタイリスト野崎美穂氏に師事、'15年よりスタイリストとしてキャリアをスタートし、国内外のファッションショー、ファッション誌、テレビ番組、広告、ライブなどのスタイリングなどをはじめ、アパレルブランドのクリエイティブディレクション、アドバイザーやコンサルタントなど幅広いフィールドで活動している。Instagram:@stylist_fukami

 かつて兄と共に双子タレント「広海・深海(ひろみ・ふかみ)」としてバラエティー番組などで活躍していた深海(FUKAMI)さん。現在はスタイリストとして活動の幅を広げる傍ら、SNSでの発信も精力的に行っている。

 深海さんのエッセイ『たどりついた リトル・ピース』(ワニブックス)は、先日婚約を発表したアメリカ人男性との関係や自分自身を愛せるようになった現在について、率直な言葉で綴られた一冊だ。

“オープンリレーションシップ”を取り決めた

「最初に書籍のお話をいただいたときは予定もなかったのに、制作の途中で結婚が決まって自分でもびっくりしました。愛についての本を作ろうとしていたら本当に婚約するなんて、人生って何が起こるかわからないから面白いですよね」(深海さん、以下同)

 パートナーはもともと友人だったというニューヨーク在住の男性。婚約した現在も遠距離恋愛は変わらず、日本とアメリカを行き来する日々を送っている。

「遠距離恋愛は慣れたものだけど、国際結婚って本当に大変! 複雑な手続きだらけで落ち込んだり感情がジェットコースターみたいな日々を送っています。ちょっとマリッジブルーなのかも(笑)。

 でも『この人ほど私を愛してくれる人はいないだろうな』という相手に出会えたことは、幸せだなと感じています」

 著書では、パートナーと“オープンリレーションシップ”を結んでいることも明かされた。昨今はオープンマリッジという単語だけが独り歩きしている印象だが、深海さんとパートナーの間にあるのは良好な関係のための前向きな決め事だ。

「オープンリレーションシップでは、カップルが2人でルールを決めて、そのルールに沿って関係性を築いていきます。誰とでも肉体関係を持ってOK、というわけではなくて、そのルールや内容はカップルごとに異なるんです。私たちの場合は、キスはダメ、デートもお泊まりもダメ、同じ人はダメ、心が動くようなことは、とにかくダメ。

 でも勢いだけでいたしてしまった場合はOK、と決めました。あとは他の人と関係を持ったら相手に報告すること。隠し事をされるより、なんでも正直に言い合えたほうが私たちはお互いを信頼できるんです

温かく受け入れてくれた彼の家族たち

 過去の恋愛では傷つくことを恐れ、相手と真剣に向き合うことから逃げていたという深海さん。パートナーと本音で語れるようになったのは、セラピーを受けたことの効果も大きいと話す。

「日本ではセラピーって重く捉えられがちだけど、海外ではカジュアルでごくごく普通のこと。今通っているセラピーの先生は私の話をひたすら聞いて、そのときにどう思ったのか?を掘り下げて思いを引き出してくれるので、自分の感情や新しい視点に気づけて、とてもスッキリするんです。

 幼いころから嫌なことや感情に蓋をする癖がついていたけど、セラピーはその蓋を一つひとつ開けていくような感覚。おかげで本当の自分を徐々に受け入れられるようになった気がします。

 以前は悩んだときは占いにかなりお金をつぎ込んでいました。でも、セラピーは背中を押してくれるだけでなく、自己理解も深まるので、悩んだときの選択肢のひとつとして私に合っていました

 日本では察することが美徳とされ、本音を口にしない人も多いが、本音を話してこそ深い関係を築けるのではないかと深海さんは言う。

年末年始は兄弟2人でエジプトを旅行した広海・深海

「自分の思いをのみ込んで相手を思いやる日本の文化はすごく優しくて素敵だけど、結局カップルだって夫婦だって他人だから、言葉にしなくちゃ伝わらないことも多いじゃないですか。『こういうことをしてほしい』とか『してほしくない』を相手に素直に伝えられれば、関係もより深まるはずです。

 それは日常生活だけでなく、夜の営みに関しても同じ。性のことについて話すのはふしだらで恥ずかしいことと思う人は多いけど、そういう話し合いができればセックスレスにもなりにくいと思うんです」

 LGBTQ+への理解が広まっているとはいえ、パートナーの家族は同性婚をどのように受け止めたのだろうか。

「アイリッシュ系のお母さんもユダヤ系のお父さんの家族たち(お父さんは故人)も、温かく迎えてくれました。彼のファミリーは兄弟も親戚も大勢いて、とても仲良しなんです。大切な日にはファミリーみんなで食卓を囲んで盛り上がる……家族が広海ちゃんしかいない私にとって、その光景はまるで映画の世界だったし、彼の愛情深さはこのご家族からきているんだと納得しました。

 でも今は、結婚式の参列バランスがおかしなことになっちゃうのが悩み(笑)。彼は世界中から親戚が集まるけど、私の親族は広海ちゃんだけだから」

別れと始まりがあってこれからの変化がある

 両親の育児放棄や児童相談所からの脱走、ADHD当事者として周囲に理解されないつらさを経験するなど、ハードな幼少期を過ごしてきた深海さん。その隣にはいつも双子の兄、広海さんがいた。

 広海さんは現在、デジタルマーケティング会社の代表取締役としても多忙な日々を送っている。愛情深いパートナーは、そんな兄ともどこか重なる部分があるという。

「こんなこと恥ずかしいから言いたくないんだけど、やっぱり彼と広海ちゃんには似ている部分を感じることも。今までの恋愛では弱みを見せられなくて、どこかカッコつけていた部分もあったけど、彼なら私のありのままを受け入れてくれるっていう安心感があるんです」

 強い絆でつながった双子の2人だが、結婚について兄・広海さんがどう感じたのか、実はまだ心の内をしっかり聞けていないそう。本書では広海さんの思いが以下のように綴られている。

《僕達の今の状況を見て思うのは、「扉を閉めれば、また新しい扉が開く」ということ。同時にふたつの扉を開けることはできなくて、前に進むためには、やっぱり過去をちゃんと手放さないといけないんだなってことは強く感じています。(中略)

 本当に、まだ実感が湧いていないから未来を想像するのも難しいんですけど。この先もずっと僕と深海ちゃんの関係は変わらないと思います。こんなこと言うと、なんだか照れ臭いけど、僕達は本当に一緒に、力を合わせながらいろんなことを乗り越えてきたから。ちょっとやそっとのことで、この関係性が変わるとも思えないしね》

「去年は広海ちゃんが10年付き合っていた恋人とお別れして、私にとっても家族同然の存在と離れることになってしまったので、とてもショックな年明けから始まったんです。その後に彼が私にプロポーズしてくれて、結婚が決まって……、1年で人生が大きく変わることを実感した年でした。

 だから毎日が同じことの繰り返しのように感じている人も、人生いつ何が起こるかわからないわよ! 私自身もまたこの1年どんな変化があるのか、すごく楽しみなんです」

《幸せのカタチを知らなくても、幸せになれる》という一文が印象的だった本書。波瀾万丈な人生を歩んできた深海さんがたどり着いた“小さな幸せ”に、心から祝福を送りたくなる。

深海(FUKAMI)タレント、スタイリスト。東京服飾専門学校講師。2012年、スタイリスト野崎美穂氏に師事、'15年よりスタイリストとしてキャリアをスタートし、国内外のファッションショー、ファッション誌、テレビ番組、広告、ライブなどのスタイリングなどをはじめ、アパレルブランドのクリエイティブディレクション、アドバイザーやコンサルタントなど幅広いフィールドで活動している。Instagram:@stylist_fukami
深海(FUKAMI)タレント、スタイリスト。東京服飾専門学校講師。2012年、スタイリスト野崎美穂氏に師事、'15年よりスタイリストとしてキャリアをスタートし、国内外のファッションショー、ファッション誌、テレビ番組、広告、ライブなどのスタイリングなどをはじめ、アパレルブランドのクリエイティブディレクション、アドバイザーやコンサルタントなど幅広いフィールドで活動している。Instagram:@stylist_fukami
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取材・文/片岡あけの 写真提供/深海さん