「私たちの口の中には、たくさんの細菌がすみ着いています。その種類は700程度、数にすると数百億〜1000億個にも上ります」
と、歯学博士の照山裕子先生は説明する。人体の中でも腸と並んで細菌が非常に多い場所だからこそ、適切なケアが必要。
口の中の汚れが全身の病気を招く
「口腔内は温度が一定に保たれ、唾液で潤っているため、細菌にとって居心地のよい環境なのです。食べかすが残って口の中が汚れていたら、虫歯菌や歯周病菌となる細菌が集まってきて虫歯や歯周病を発症させます。
近年では、歯周病菌が糖尿病を悪化させたり、心筋梗塞のリスクを高めることが明らかになって、口腔環境が全身の病気に関わることがわかっています」(照山先生、以下同)
口腔内の環境悪化が虫歯や歯周病の原因となることは知られているが、そればかりではないということだ。
「歯茎に炎症が起きると、歯茎が腫れます。これは身体に備わった免疫反応で、ばい菌と闘っている証拠。歯茎の毛細血管から歯周病菌が血管内に入って全身を巡るだけでなく、炎症に反応した物質が、糖尿病などさまざまな病気に悪影響を及ぼすのです」
それを防ぐには、日頃から口腔内を清潔にしておくことが重要だ。
「口の中をきれいにする方法として、まずは歯磨きが第一です。食後などに歯磨きをしている人は多いと思いますが、食事のたびに歯磨きをするのは難しい。プラスアルファの習慣としておすすめなのが、『うがい』です」
「ブクブク」「ゴロゴロ」2つのうがいで口内洗浄
「うがいといっても、数回軽くゆすぐだけだと口腔内をきれいにする効果はありません。上下左右の4方向に、口の中で水を勢いよく『ブクブク』と音を立てて10回ずつ、7秒を目安にゆすぎます。次に、のどの奥でうがいをする『ゴロゴロうがい』を7秒間行います。これで、風邪などの感染症予防にもなります」
照山先生は、これを「7秒うがい」と名づけているそうだ。食事後など、一日の中で定期的に行うことを推奨している。
抗菌作用のある緑茶でうがいをしてもよいが、茶渋が歯についてしまうので、普通に水やぬるま湯で行うのがおすすめとのこと。
うがい薬や洗口液を使用する場合は、まず歯と歯の間の汚れを歯間ブラシなどで取り除いてから使用するのが効果的。使用は1日2回ぐらいにとどめたほうがよいという。
フロスと歯磨きを加えオーラルケアを
「虫歯や歯周病などが発症するのは、ばい菌が食べかすをエサにして増殖し、ぬめり汚れ(プラーク)をつくるから。歯磨きをしていない場合、飲食後、約8時間でプラークができ始め、2日程度で硬い歯石になります。歯の表面や歯茎に白っぽい塊が見えたら、それがプラークです」
プラーク1mgの中には、約10億個のばい菌が存在する。プラークをつくらないためにも、食後の「7秒うがい」が有効だが、朝晩は「きちんとした歯磨きをしてほしい」と照山先生は強調する。
「夜寝る前に、フロスや歯間ブラシで歯と歯の間や歯茎と歯の境目の汚れを取り、それから歯磨きをします。その後、『7秒うがい』をする。それが完璧なオーラルケア(歯や歯茎、舌、頬の粘膜など口腔内全体のケア)になります。
就寝中は無意識に口をポカンと開けてしまうことが多く、口の中が乾燥しがち。菌が増殖しやすくなるので、寝る前のオーラルケアがもっとも大切。朝起きたら、就寝中に増殖したばい菌を洗い流すために、『7秒うがい』を行います。
特に冬は乾燥しているので、口腔内が渇き、汚れが口腔内にとどまりやすい季節。積極的にうがいをして、口内の潤いを保ちましょう」
プラークができると、唾液に含まれるカルシウムやリンなどと結合し、歯石になってしまう。そうなると歯科医院での除去が必要となる。日頃からのオーラルケアは重要なのだ。
うがいで表情筋が鍛えられるメリットも
「高齢になると、モノを飲み込む力が弱くなり、食べ物や唾液が気道に入る、誤嚥を起こす人が増えてきます。ばい菌が気道に入ると、誤嚥性肺炎になってしまいます。『7秒うがい』を習慣化すれば、舌や唇の筋肉が鍛えられて、嚥下機能の衰えを予防することができます」
口のまわりの筋力が低下すると、口が半開きになって口呼吸になりがちに。直接口内からほこりやウイルスが侵入して感染症にもかかりやすくなるそうだ。
しかも、頬の筋肉がたるんだり、ほうれい線が目立つようにもなるので、美容的なデメリットも。
「7秒うがい」で、健康美人を目指そう。
「うがい」の健康効果
・虫歯や歯周病の予防
・感染症(風邪、インフルエンザ等)の予防
・誤嚥性肺炎の予防
・糖尿病の予防、悪化を防ぐ
・動脈硬化や心筋梗塞・脳梗塞のリスク軽減
・表情筋のトレーニングで、フェイスラインの引き締め
「歯周病の人はそうでない人より、14%もがんになりやすい」「糖尿病の合併症に歯周病があるほか、歯周病が糖尿病の要因にもなる」「歯周病の人はそうでない人の2.8倍、脳梗塞になりやすい」など、多くの病気と歯周病の関係が明らかになっている。
照山裕子先生
歯科医・歯学博士。口腔にまつわる予防医学の重要性を提唱し、『歯科医が考案 毒出しうがい』(アスコム)は13万部のベストセラーとなる。クリニックで診療を行うかたわら、テレビなどのメディアに多数出演。口腔ケアの大切さを広めている。
