テレビ番組の人気を測る物差しとして長年、存在してきた「視聴率」。番組やCMが放送されていた時間に、どのくらいの世帯が見ていたかという指標だ。だが、Netflixなどのストリーミング配信や、YouTubeをはじめとした動画共有プラットフォームが普及し、テレビ番組を見ない、いやテレビそのものを持たない若者が増える現代で、この数字にどれほどの意味があるのだろうか。
令和のイマ、視聴率の価値は?
視聴率調査の仕組みは意外とシンプルだ。メディア調査会社「ビデオリサーチ」が全国32地区、1万800世帯に専用の測定機器を設置し、誰が何の番組を見ているかを1分単位で記録している。
これらの世帯は年齢、性別、職業などが日本全体の縮図になるよう「選ばれし世帯」なのだ。彼らの日常的な視聴行動が、番組、そして放送するテレビ局の命運を左右している。
では、視聴率1%とは何人が見ていることになるのか。関東地区の場合、約40万人に相当する。たった1%と侮るなかれ、この数字には恐ろしいパワーがある。視聴率はただ単に出演者の人気の物差しという役割だけでなく、CM料金に直結するからだ。
例えば、ゴールデンタイムの視聴率10%の番組のCM料金が数十万円だとしたら、20%なら倍増する。いくら面白いCMを制作しても、目につかなければ意味がない。スポンサー企業にとって、視聴率は広告効果の投資基準なのだ。
ビデオリサーチは2015年から、「タイムシフト視聴率」の提供を開始。録画して後で見た視聴者もカウントされるようになった。
「リアルタイムでテレビを見る人が減少しているため、今やリアルタイム視聴率だけで番組価値を測ることはできません。録画はもちろん、Xでのトレンド入りや、ワンセグでの視聴率、配信での再生数なども含めないと、本当の影響力を知ることはできないでしょうね」(テレビ誌編集者)
実際、2025年のリアルタイム視聴率が1位の番組は『NHK紅白歌合戦』だったが、Xにおけるポスト数ランキングの1位は『M-1グランプリ2025』(テレビ朝日系)だったという。
「とはいえ、ビデオリサーチ社が管理しているリアルタイム視聴率は、地域や視聴者層が明確な信頼できるデータですから、スポンサーの意思決定に大いに影響力があることは事実です」(同・テレビ誌編集者)
このような「視聴率至上主義」が崩壊しつつある現状を、現場の番組制作者はどう考えるのか。
「現場では昔も今も、まず『面白いものを作る』が出発点。数字は結果の一つに過ぎない。ただ、スポンサー企業の意思決定には、今しばらくは視聴率が基準になるだろうから、その現実も無視できないでしょう」(大手テレビ局プロデューサー)
現在の視聴率は万能ではないが、消え去ることもない。数字に踊らされず、本当に面白いコンテンツを作ることが、これからのテレビに求められている。
