《黄色系のダウンジャケットに色不明の長ズボンを着用、見た目は60歳前後で白髪交じり、自転車を使用》
そんな手配で行方を追われたのが“自転車通り魔男”だ。
自転車で通り魔
茨城県水戸市のJR水戸駅北口ロータリーで1月30日午後6時10分ごろ、自転車に乗ったまま次々と通行人の顔面を殴ったり、自転車で体当たりするなどして重軽傷を負わせ、逃走した。
「被害者は17~59歳の男女4人です。市内在住の女性パート店員・Aさん(44)は顔を殴られて口唇裂傷、50代の2人は鼻の骨を折るケガ。女子高生は両ひざに擦過傷を負いました」(捜査関係者)
茨城県警は水戸署と県警捜査1課、機動捜査支援課などで合同捜査班を組んで傷害事件の捜査に着手。防犯カメラが捉えた男の画像を翌31日に公開すると、2月1日、Aさんに対する傷害の疑いで同県つくば市の無職・沼尻吉記容疑者(45)を逮捕した。
県警によると、同容疑者は「自転車に乗りながら女性の顔を殴ったことは間違いありません」と容疑を認めている。
犯行2日後のスピード逮捕だった。
「犯行後の足取りは、つくば市の容疑者宅まで片道約50キロの道のりを自転車で移動しています。自転車移動は考えにくい長距離。画像公開後、約40件の情報提供があり、その中に“県南部で似た人物を見た”と目撃情報がありました。
犯行現場を起点に防犯カメラ映像をつないでいくリレー捜査は、これだけ距離が離れていると相当時間がかかります。容疑者の割り出しにつながる有益な情報でした」(捜査関係者、以下同)
自宅周辺では“要注意人物”
一般的に、ママチャリで1キロ走る所要時間は4分前後とされる。犯行に使われたのはスポーツタイプで、3分前後が目安になる。電動アシスト付きではなかったとみられ、単純計算すると休憩なしで50キロ150分だ。
自宅から約5キロ先には、つくばエクスプレスのつくば駅があり、国内最大級の研究学園都市の拠点として駅前にバスターミナルもあり往来は多い。
「なぜ、わざわざ50キロ以上離れた水戸で犯行に及んだのか捜査中です。犯行前の足取りは、立ち寄り先があった可能性なども否定できないため、少なく見積もっても片道50キロ以上走ったとみています。Aさん以外の被害者との関連も捜査しています」
容疑者は独身で、古びた一軒家でひとり暮らし。自宅周辺では“要注意人物”として警戒されていた。仕事をせず、日常的に何をやっていたかというと─。
「自転車をしゃかりきにこいで、ものすごいスピードを出しているんだよ。何かに取り憑かれたようにビューッと走り抜けていくからおっかない。必ず自転車に乗っていて、歩く姿は一度も見たことないな。どこに行っているのかは知らない」(近所の男性)
自宅周辺には、車1台通るのがやっとの狭い道や農道が少なくない。容疑者はお構いなしに速度を上げるという。
「カーブでもスピードを落とさず、対向車を確認せずに曲がり角に突っ込むんです。周辺の家から住人が道に出てくるかもしれないし、近所では“怖いね”と話していました。周りをまったく見ないんです」(近所の女性)
別の年配の女性住民は、自転車のペダルをこぐ音に過敏になっていた。
「車よりもスピードを出して競輪選手みたいだった。いつもイライラしていて不機嫌そうなの。体格がよくて、昼も夜も自転車をギコギコこいで、目をつり上げて毎日爆走していましたよ。
道を歩いていてギコギコと音がして“来たな”と思ったら、私はすぐ端っこに避ける。逃げ遅れたら轢き殺されちゃうし、避けきれずに倒れたら骨が折れちゃうかもしれない」
地元では、人を殴るなどの行為は確認できず、暴言を吐くこともなかったという。一方で、周辺住民に挨拶はせず、無視するように接点を持とうとしなかった。地域の自治会を脱会し、年に1度の夏祭りにも顔を出さない。冬場はいつも、犯行時に着用していた黄色いダウン姿だった。
こじらせ中年のルーツをたどると、小学生のころまで遡る。土浦市から転居してきて母親、母方の祖母、兄と4人で暮らし始めた。一家には暗い気配が漂っていた。
知人女性による容疑者の生い立ち
母親の知人女性が打ち明ける。
「母親に聞いた話では、吉記容疑者の父親はフィリピンに遊びに行って現地の女性と不倫に走り、その愛人と帰国したんです。それで離婚になりました。母親は実家に戻り、祖母を頼りつつも女手ひとつで息子さん2人を育てたんです。ただ、子どもには構ってあげられず、吉記容疑者は母親の愛情に飢えていたのかもしれません」
土浦市内の県立高校を卒業して、水戸市内の短期大学に進学。学生時代はバスケットボールに熱中した。社会に出ると歯車が狂い始める。
「警察官になりたくて試験を受け、腕立て伏せが苦手で不合格になったと聞きました。仕事をコロコロとかえ、1〜2か月ぐらい働いて辞めるの繰り返し。
自動車の運転免許を持っていないため宅配便の仕分け作業などに従事し、母親は免許を取らせて自立を促すことも考えましたが、費用が工面できずに断念しました。お兄さんは実家を出て自立しています」(知人女性、以下同)
母親はスーパーの警備員をして家計を支えていた。吉記容疑者に結婚歴はないというが、以前は自宅に恋人を連れてきたことがあったという。
「その彼女は遊びに来ると祖母の手料理を食べるだけ食べて、後片づけをせず、挨拶もしないで裏口からソーっと帰っちゃうらしいんです。母親は“いつまでもお客さんのつもりでは困る”とたしなめたそうですが、結局別れてしまいました。やがて吉記容疑者は勤労意欲がなくなり、母親は“私が悪かったんだ、私が悪かったんだ”と後悔していました」
祖母は亡くなり、母親は5年ほど前に入院。家事などまったくできない吉記容疑者のひとり暮らしが始まった。
「見かねたお兄さんが時々お小遣いをあげていたみたいです。そのうち何かやらかすのではと心配していたんです。罪を償って立ち直ってほしいんですけどね。母親がいなくなって寂しかったのかな」
自転車爆走の行き着く先が犯罪だったのだろうか。自らの罪に、しっかりと向き合ってもらいたい。
