「子どものころから日本が大好きで、10年以上日本語を勉強してきました。日本のテレビ番組、しかも朝ドラに出演できるなんて、言葉が出てこないほどありがたいです。夢が叶った気持ちです」
と、笑顔で話すのは朝ドラ『ばけばけ』で、ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)をモデルとしたレフカダ・ヘブンを演じているトミー・バストウ。
何よりのギフトだと思っています
大きな反響への感想を求めると、
「撮影はしていても、放送前はあまり人生が変わった感じはしませんでした。でも(本格出演となった)11月から一気に変わりました。ヘブンとトキ(高石あかり)の関係を見守り、愛してくれる視聴者にすごく感動しています。今は外にいると声をかけていただくこともあります。自分にとって何よりのギフトだと思っています」
当初は“ジゴク!”を連発していたヘブンだったが、トキを女中に雇ってからは少しずつ変化が。ヘブンは、いつからトキに惹かれたんだと思う?
「トキに大寒波の説明をしてもらったとき、ヘブンとして、トミーとしてキュンとしました(笑)。あかりさんのお芝居は、ジェスチャーも表情もとても可愛い! 病気になったヘブンは、トキの看病のおかげで元気になった。きっと“いいお嫁さんになるだろうな”と思ったはずです。
そして、ヘブンがトキに怪談を語ってもらう中で、未来がはっきり見えるようになったんだと思います。僕自身、バンド活動をしていますが、メンバーとは“お互いに、よりいいものをどんどん作っていこう”というスタンス。ヘブンは“一緒に何かを作り上げられる”という点で結婚を決めたんだと思います」
ヘブンとトキは松江を離れ、熊本で新生活を送り始める。夫婦になってからの演じ方の変化について尋ねると、
「ヘブンもトキも、幼少期から大変な思いをしてきましたから。ふたりで“もう1回、子どものころを楽しもう”と労わり合う関係なんだと思います。ただ、あかりさんのお芝居は夫婦になってからちょっと変わりましたね。落ち着いて、大人っぽくなった。そのおかげで僕の芝居も自然と変わっていったのかなと思います。すごいね、あかりさんは!」
トミー自身は、ヘブンよりも日本語が堪能。取材中は通訳も同席したが、ほぼ日本語でのやりとりだった。
「箸を使うのも、西洋人にしては下手ではないと思います(笑)。『ばけばけ』では、箸を持つ部分をだんだん上にしていきました。ヘブンが日本語や日本文化に慣れていく中で“今はどの段階か”を考えながら演じました。たまに、ちょっとうまくやりすぎちゃって、調節したり(笑)」
ヘブンは片言の日本語をしゃべるため、単語のセリフが多い。
『SHOGUN 将軍』のオーディションは5年前くらい
「セリフを覚えるのは難しいし、思った以上に時間がかかります。文の中で、単語の順番があちこちに飛ぶので。でも『SHOGUN 将軍』('24年)の撮影のほうが大変でした。日本語が流暢な役だったので(笑)。『SHOGUN 将軍』のオーディションは5年前くらいで、今より日本語が話せなかったのに“ペラペラです!”って言っちゃったから(笑)。今回の『ばけばけ』ではリラックスしながら撮影できています」
イギリスで生まれ育ち、14歳から俳優活動を始めた。
「僕の教科書は映画です。子どものころから、父は僕に世界中の映画をたくさん見せてくれました。日本映画で好きなのは三船敏郎さんの出演作。その中から強いて選ぶなら『用心棒』('61年)ですね。俳優として仕事がない時期はかなり長く、生活が厳しくなることもありました。だから『ばけばけ』で、1年間ずっと働かせてもらえることはとてもありがたいです」
今後は『SHOGUN 将軍 シーズン2』(配信時期未定)の撮影に参加するという。日本での活動について聞いてみると、
「『ばけばけ』の撮影がすごく楽しかったから、これからも日本で働きたいと思っています。映画でもテレビドラマでも、チャンスがあれば。よろしくお願いします!」
マツノケ、オモシロイ
ヘブン、トキ、司之介(岡部たかし)、フミ(池脇千鶴)。いつもにぎやかな松野家だが、撮影中はどんな感じ?
「毎日のように面白いことが起こります。この間、岡部さんが梅干しを差し入れしてくださったので食べてみたら“うおっ!”となりました(笑)。好きなフリさえできなかったですね(笑)。そして、みんなは大爆笑。
たまに会話についていけなくなるときもありますが、みんな優しいから、僕が理解できるまで何回でももっと簡単な日本語に言い換えてくれて。すごく優しい家族です」
取材・文/池谷百合子
