平岳大 撮影/山田智絵 ヘアメイク/石川美幸 スタイリスト/安西こずえ ニット5万600円(ヘリル/にしのや) シューズ10万1200円(パラブーツ/パラブーツ青山店) 問い合わせ/にしのや電話:03-6434-0983 パラブーツ青山店 電話:03-5766-6688

 故・平幹二朗さん、佐久間良子という大御所俳優の両親を持ち、会社員経験もあるという平岳大。今や世界で話題の作品に出演し続ける彼の素顔は、意外なほどに自然体だったー。今回出演した話題作『レンタル・ファミリー』の魅力とともに、今後について伺った。

サービスの背景には切実なニーズが

 2月27日に公開される話題の映画『レンタル・ファミリー』。アカデミー賞俳優のブレンダン・フレイザーが、東京で“レンタル家族”の仕事を請け負う役を演じ、家族のかたちを問い直す温かな物語が感動を呼ぶ。

 子役のゴーマン シャノン 眞陽も鮮烈な印象を残し、映画初出演ながら「クリティクス・チョイス・アワード」の若手俳優賞にノミネートされている。

 個性豊かな日本人キャストが集結し、平岳大もその一人だ。今回はレンタル家族サービスの会社を経営する社長役で、「クライアントの事情に踏み込まない」信条がどう変化していくのかも見どころだ。

 平は近年ハリウッドでも活躍し、2025年はドラマ『SHOGUN 将軍』でエミー賞にノミネートされた。今や世界中で引っ張りだこの存在だが、この作品に出演を決めた理由はなんだったのか。

台本を初めて読んだとき、強い共感を覚えました。僕は15歳で渡米して10年ほど向こうに住んでいたので、外から日本を見る視点を自分の中にいつも持っていました。今回その思いを具現化してくれる作品と初めて出合い、自分と似たような経験をした人がここにもいるんだと感じたんです

 と平は語る。レンタル家族サービスの会社は全国で300社ほどあり、役作りに際して、平は実在する会社に取材をしたという。

ある年輩の女性が、娘と同じくらいの年齢の人をレンタルして、『寂しいから隣の部屋で寝ていてほしい』と依頼した話を聞きました。それは人間として自然な感情だと思いましたし、サービスの背景には切実なニーズがあることがわかったんです

 日本では依頼料が自由で自分を貸し出している「レンタルなんもしない人」も有名だ。「一人で入りづらい飲食店に同行してほしい」「周りには話しづらいことを聞いてほしい」など、彼にさまざまな依頼があることがSNSからわかる。

同じ映画業界にいても父とは違う道を歩んでいる

 一方で、海外ではこのサービスは考えられない、と平は言う。

レンタルのサービスを受ける人と提供する人の間に、揺るぎない信頼関係が必要で、ちょっとでも邪な考えがあれば成り立ちません。安全が保証された上で成り立つビジネスは、日本だからこそできるんじゃないかなと思います

『レンタル・ファミリー』 2月27日(金)より全国公開 監督:HIKARI 出演:ブレンダン・フレイザー/平岳大/山本真理/柄本明/ゴーマンシャノン眞陽ほか 配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン (C)2026SearchlightPictures.AllRightsReserved

 映画の中では平が演じる社長の意外な一面も描かれている。

ビジネスに徹していた社長自身が実はいちばん寂しさを抱えていたんじゃないか。そういう複雑な人物像を意識して演じました

 映画はオール日本ロケだったが、HIKARI監督はアメリカで活躍しており、外国人スタッフも多く、撮影現場はインターナショナルな雰囲気だったそうだ。

HIKARI監督の印象は、ひと言でいえばエネルギッシュ。アイデアがポンポン出てきて、実験的で、粘り強くて、本当に芝居が好きなんだなと感じました

 ブレンダン・フレイザーとの初めての共演も特別な体験になった。

俳優としてうまいのはもちろんですが、ブレンダン自身の人のよさが、演技を超えて画面に出ています。ぜひ映画を見て確かめてみてください

 家族といえば、平の父親は故・平幹二朗さん、母親は佐久間良子で、俳優一家で育ったことが知られている。10歳のときに両親が離婚し、平は15歳で渡米。アメリカの高校・大学を卒業し、外資系企業に就職したが、27歳で俳優に転身した。

 当時は俳優になることに大反対だったという佐久間だが、昨年はエミー賞の授賞式に一緒に参加していたところが放映され話題になった。

授賞式に1名同伴できたので、母を誘ったところ、行くという返事で。でもあんなに母が画面に映るとは思っておらず、ニュースになっていて驚きました。母も喜んでいたので少しは親孝行ができたかなと思います

 父親は10年前に亡くなっているが、名優だった父の影を意識することはあったのだろうか。

若いころは父と自分を比較したこともありましたが、今はまったくないですね。僕は海外で英語で芝居することを課題にしていますし、同じ映画業界にいても父とはまったく違う道を歩んでいるように思います

 平は2020年からハワイで妻と娘と暮らしているが、日本に戻って活動する予定は今のところはない。

この年代で英語ができて、役者経験のある日本人は少ない

「撮影のスケジュールの取り方がアメリカと日本では根本的に違うんです。アメリカは1~2か月撮影が延びることもざらにあり、両方やろうとすると、絶対に日本の作品に迷惑をかけてしまいます。

 海外の作品は、遠くへ行って時間をかけて撮影し、いわば巨大なマグロを釣って帰ってくるようなもの。拘束期間も長く、一度撮影に入れば数か月単位で家族と離れ離れになります。釣れたらデカイけど、釣れないと大変(笑)。そんなしびれるような感覚の中で生きています

平岳大 撮影/山田智絵 ヘアメイク/石川美幸 スタイリスト/安西こずえ ニット5万600円(ヘリル/にしのや) シューズ10万1200円(パラブーツ/パラブーツ青山店) 問い合わせ/にしのや電話:03-6434-0983 パラブーツ青山店 電話:03-5766-6688

 身長183センチと大柄だが、ハリウッドで活動を始めた当初は「外国人に引けをとらないよう、もっと身体を大きくしなくてはならない」と考えていたという。

「プロテインを飲んで、過酷な肉体改造に励んでいました。でも身体を大きくすればオーディションに受かるわけではなく、自分のベストな体形をキープし、役に応じた見せ方をすればいいという考えに変わりました。

 例えば『SHOGUN 将軍』の石堂和成役では、あえて“行く手を阻む大きな石”のような存在感を出すことを狙いました。外国人の視聴者が見た際に、みんな同じ髪形や衣装だと区別がつきません。出てきた瞬間に『あ、でかいやつだな』と視覚的に差別化できる役作りをしたり、日本とは違うアプローチが必要です

 オーディションに合格して役をつかみ取る世界で、競争も激しいのが映画業界だ。

この年代で英語ができて、役者経験のある日本人は少ないので、海外で活動できているのはラッキーなんです。でも韓国人、中国人といったアジア全体での競争はまた別で、オーディションで1回戦を勝ち上がると、2回戦にはもっと強い相手がたくさんいて、どんどん大変になっていくような世界です。今はその戦いに1日でも長くしがみついて、役者を続けていきたいという思いが強いですね

 まもなく『SHOGUN 将軍』シーズン2のロケが始まり、『レンタル・ファミリー』のほかにも複数の出演作品の公開が控えている。50歳を超え、今後やりたいことはあるのだろうか。

演者やスタッフに対してすぐにOKを出しそうなので、統率力が必要な監督業には向いていないと思います(笑)。でも脚本を書いたり、プロデュースはしてみたいですね。ブレンダンのような素晴らしい俳優と仕事をして、できあがったものを見るのは本当にワクワクしますから

 最後に『レンタル・ファミリー』の見どころを教えてもらった。

この映画は、見る人によって感動するポイントがまったく違います。孤独を抱える人が多い世の中で、見終わった後に誰かと話したくなる、誰かに電話をしたくなる。そんなきっかけになればうれしいです。海外でも公開されていますが、特に日本人の感覚にすんなりと響く作品なので、ぜひご覧ください

取材・文/紀和 静

ひら・たけひろ 1974年生まれ。ハワイ在住。父は俳優の故・平幹二朗さん、母は佐久間良子。高校から米国に移住し、ブラウン大学、コロンビア大学大学院に進学。外資系企業に勤務後、27歳で俳優に転身。舞台『鹿鳴館』でデビュー後、NHK大河ドラマをはじめ、数々の作品に出演。2020年より海外で活動し、『Giri/Haji』(Netflix)で英国アカデミー賞主演男優賞ノミネート、『SHOGUN 将軍』(Disney+)でエミー賞助演男優賞にノミネートされる。出演作は『モナーク』『トルネード』ほか多数。