実家が廃墟化しているケースも増加中 撮影/編集部

 もう誰も住んでいない“実家や土地”をどうするか、頭を抱える人が増えている。すぐに売却できればいいが、買い手がいなかったり、親族間で処分方法が決まらなかったりしたら、税金や費用はかさむばかり。実家を「負の相続」にしないためには、どうすればいいのか。不動産相続の専門家に話を聞いた。

親子で一度話しておくべき

 地方だけでなく、都心でも放置されたままになっている空き家を見かけることがあるだろう。実家に住んでいた親が亡くなって、子どもたちは遠方の家に住んでいるというケースもあるが、そもそも持ち主が曖昧なままの家も多いという。

きょうだい、親族間で相続がもめて、家を放置せざるを得ないケースです。相続人が決まっていないので、売ることもできないのです

 と話すのは、不動産相続の専門家・高橋大樹さん。このような「空き家対策」を打開するため、2024年に相続登記が義務化された。これまで任意だった相続登記が、相続発生後3年以内に土地の所有者を明確にし、登記しなければならなくなった。

最近は相続した不動産が『負動産』となる問題も生じています。必要な土地・不動産ならいいのですが、住む予定のない元実家や土地の場合は、固定資産税を払い続けなければならないなどマイナス面しかないケースも多いのです」(高橋さん、以下同)

 それならば、すぐに売却すればいいと思いがちだが、そこにも損を生む落とし穴があるという。

実家を賢く売るためには、土地の価値を正しく知っておく必要があります。不動産会社に任せっぱなしにすると、相場よりも安く売られてしまったり、納得のいく取引ができないこともあります

 きょうだい間で、実家の処分について意見が分かれたり、親の死後、実際にもめることは多いようだ。そのときになって、「親の意向を聞いておけばよかった」と悔やんでも時すでに遅し。

親が元気なうちは相続の話はしにくいと思いますが、自治体で実施している相続相談会などを利用して、親子で一度話しておくべきです。『友達の親が亡くなったとき、相続のことで苦労したらしい』などと話をすれば、親も乗り気になってくれるのではないでしょうか

 元は、家族で暮らしていた家や土地。少しでも有効に活用して、プラスの相続にしたいものだ。

相続した不動産を売るときに知っておくことは?

1・不動産価値を知る目安は?

 毎年、国が発表している「路線価」を参考にするとよい。路線価は国税
庁のHPなどで確認できるが、時価の8割程度になるため、路線価を1.25倍すると、だいたいの時価が算出できる。ただし、土地の形など個別条件によっても変わるので、不動産会社に査定してもらうのが一番。

不動産相続(実家など)のデメリット面

2・昔とが建築基準が変わっているケースも

 以前は家の建築が許されていた土地でも、建築基準法が変わって、家の建て替えができないこともある。また目の前の道路幅が4mに達していない場合は、建て替え時に4mになるように敷地の一部を道路にしなくてはならないことも。私道に接する場合は、私道の保全や下水管などの維持管理も確認。

3・家の片づけは業者に依頼すべき? その価格は?

 家財道具の整理を自分でやるとなると、思い出の品などの処分に悩み、時間がかかる。貴重品や重要なものだけを持ち出し、あとは遺品整理業者などの専門業者に任せるとよい。普通の一軒家なら30万~100万円の費用が目安。荷物が多いと100万円以上になるケースも。

4・家は解体してから売ったほうがよい?

 住宅地と更地だと、翌年の固定資産税が約6倍違ってくるので、家が売れるまでは解体しないようにする。建物ごと売却し、解体工事は買い主に任せるのも一つの方法。解体費用は一般的な戸建てで200万~300万円。近年、機材や人件費の高騰により値上げ傾向。

5・不動産会社に査定依頼するときの注意点は?

 不動産会社も売却案件の受注をしたいので、高めの売却金額を提示してくることも多いが、その金額で売れるわけではないので要注意。高めの査定で、あとで値下げを提示されることも。また、相続に関する知識がない担当者もいるので、不動産会社に確認しながら売却を任せるように。

相続した不動産が売れないときは、どうする?

 売却したくても買い手が現れないことがある。毎年、税金や建物の維持費を払うことを考えれば、何としてでも処分したい人もいるだろう。その場合の最終手段を紹介。

不動産会社が買い取ってくれることも

1円でも無料でも、とにかく手放す

 その土地の隣家なら、値段次第で買い取ってもらえるケースも多い。ただし、欲張らないこと。毎年の固定資産税などの費用を考えると、無料で手放す人もいる。低額であれば、不動産会社が買い取ってくれることもあるので相談してみるとよい。

負の相続イメージ写真 撮影/編集部

 

 

相続土地国庫帰属制度を利用する

 「更地である」「土壌汚染がない」などの要件を満たせば、国に土地を引き取ってもらえる可能性がある。ただし、審査手数料、10年分の土地管理費相当額など、数十万円の費用負担は発生する。土地の種類、面積に応じて違ってくるので、市区町村の窓口で確認。

不動産引き取り業者(民間)に有料で引き取ってもらう

 引き取り費用は土地の場所や状況によって異なる。50万~200万円程度が目安。子どもに負担をかけないように、自分の代で“負の遺産”を処理したいという人などが利用。まだ確立されていない業界なので、会社概要をきちんと調べてから相談すること。

「相続空き家特例」とは?

取材・文/佐久間真弓

高橋大樹さん 宅地建物取引士。一級建築士。不動産相続アーキテクツ株式会社・代表取締役。住宅建築会社、不動産会社などを経て、相続に特化した不動産会社を設立。不動産の相続対策、相続発生後の不動産売却・有効活用提案などを行う。「相談者の立場に立った不動産相続対策の提案力」には定評がある。