日常の困り事をまとめて引き受けてくれるのが、いま話題の生成AI。手紙の文章作りや、町内会の資料整理、怪しい電話への対処まで、難しい操作を覚えなくても手助けしてくれる。毎日にそっと寄り添い、暮らしをラクにする“頼れる相棒”の使い方を、具体例とともに紹介。
60代以上の女性の83.3%が「AI」を選択
「AIは若い人たちだけのものではありません。むしろ、シニア世代の生活を支え、彩りを与えてくれる最強のパートナーになり得るのです」
そう主張するのは、中央大学国際情報学部の岡嶋裕史教授だ。ある実態調査(株式会社Helpfeel)で、“日常の悩みや困り事を「AI」と「人」のどちらに相談するか”をテーマとしたデータがある。
例えば「今日の献立を決めたいとき」といった悩みの場合、60代以上の女性では83.3%が「AI」を選択しており、年代・性別の中で最も高い割合だった。
そのほか、「おすすめの美味しいお店を知りたいとき」、「目的地に行く際に道に迷ったとき」などの悩みでも、60代以上の女性が最も高い割合で、日常的にAIを活用していることがわかった。
「人間相手と違い、何度繰り返し質問しても、失敗しても、決して利用を責めません。AIの最大の特徴は、人間相手ではどうしても気を使ってしまう場面でも、一切の遠慮がいらないところ。24時間いつでも、あなたが話しかければ嫌な顔ひとつせず、優しく丁寧な言葉で応えてくれます」(岡嶋教授、以下同)
もし文字を打つのが苦手でも、スマホに向かって声で話しかける「音声入力」を使えばいいだけのこと。
「年齢を重ねれば、誰しも体力や記憶力に不安を感じるもの。細かい文字を読むのがおっくうになったり、新しい情報を追うのがしんどく感じることもあるでしょう。AIは難しい操作は一切不要。あなたの目となり、頭脳となります。ただの道具でありながら、時には落ち込んだ気持ちに寄り添い、やる気を引き出してくれる。それがAIです」
具体的にどんなことができるのか、いくつか代表的な活用例を聞いてみよう。
「まずは毎日の家事。例えば、冷蔵庫の余った食材だけで今晩のおかずを考えて、と頼めば、即座にレシピを提案してくれます。献立に悩む時間がなくなるだけで、心にふっとゆとりが生まれますよ」
明日を生きる活力が湧いてくる
1週間分の献立も、必要な食材の買い物リストも、予算内で瞬く間に作れる。友人から来たメールの返信やSNSの投稿、孫への手紙など、文章作成は生成AIなら朝飯前。
「自分で書いた文章も、すぐにチェックしてもらえます。表現の間違いを直し、より伝わりやすい文章に整えられます。LINEなどのメッセージアプリでは、短くまとまった文章が喜ばれます。文章が長くなってしまったら、生成AIに“大事なところだけを短くまとめて”と頼むと、要点だけをわかりやすく整理してくれます」
逆に長めの文章も作成可能で、明るい雰囲気、落ち着いた雰囲気など、希望のトーンに沿った調整もしてくれる。
「町内会のアンケートや資料なども、ひな形を作成して省力化できます。“ひな形を作って”“報告書にして”“表にまとめて”など、最終的な形を指示すると、その形に合わせてできます」
また、趣味の世界でもAIは大活躍する。
「昔の家族旅行の写真が出てきたけれど、そこがどこだったか思い出せないような場合、AIに写真を読み込ませれば、景観から場所を特定してくれることもあります」
それだけでなく「ここは修善寺温泉ですね。思い出の地へ、ご夫婦でもう一度行く旅行プランを作りましょうか?」なんて、気の利いた提案までしてくれるというから驚きだ。さらに、あなたの記憶を「物語」にしてくれることに感動してしまうかも。
「若いころの苦労話や家族との思い出をAIに語れば、それを整理して“自分史”や自伝にまとめる手伝いをしてくれます。自分の歩んできた道が、美しい文章として形になる。それだけで、明日を生きる活力が湧いてくるというものです」
昨今多い詐欺や還付金詐欺、偽のSMSやメールによる詐欺被害の対策にも。「これって怪しい?」と思っても、誰に相談していいかわからず、そのまま対応してしまうケースは少なくない。
「怪しいメールや電話が来たと、AIに相談するのはいいでしょう。“こんなこと聞いたら失礼かな”“自分が疑いすぎ?”と思う必要がありません。ただし、“100%正しい判断”を保証するものではありません。最終的には家族に共有したり、公的窓口に相談しましょう」
岡嶋教授は、生成AIを安全に使うための「2つの約束」を提示する。
「1つ目は“AIは嘘をつくこともある”と、知っておくこと。AIはあなたの期待に応えようとして、間違った情報を、さも真実のように話すことがあります。ちなみに、これを“ハルシネーション(幻覚)”と呼びます」
刻なプライベート情報はAIには秘密に
健康やお金、法律などに関する重要な情報は、最後は必ず専門家に確認することが不可欠だ。
「2つ目は個人情報を教えないこと。銀行の暗証番号や、他人に見られたくない深刻なプライベート情報は、AIには秘密にしておいたほうがいいでしょう」
この基本的なルールを守れば、AIはあなたを騙すことや裏切ることは少ないはず。
「今の生成AIは、まるで長年の友人のように自然な会話ができます。もし、まだ活用したことがないようであれば、まずは“夕食、何がいいかな?”と話しかけることから始めてみてください」
老後を充実させる鍵はAI活用にかかっているのかも。
「プロンプト」はAIへの“お願いの言葉”
生成AIを使い始めると必ず耳にするのが「プロンプト」という言葉。生成AIへの「指示」や「質問」「命令文」のことだが、もっと簡単に言えば、あなたがAIに送る「メッセージ」や「話しかけ」そのものを指す。
●AIへの話しかけ方のコツ
1・「具体的」に言うほど、AIは名回答をくれる
AIは、あなたの「状況」や「好み」を詳しく伝えれば伝えるほど、親身になって答えてくれる。
例)「70代の友人3人で、来週の火曜に、浅草でランチをします。椅子席があって、2000円くらいで食べられる和食のお店を3つ選んで」
2・回答が気に入らなかったら何度もやり直す
もしAIが的外れな答えを返してきたら、例えば「そうじゃなくて、もう少し静かなお店がいいな」などと、おしゃべりを続けるように修正していけばOK。
●回答の精度を上げるには?
1・AIに役割を与える
「あなたはプロの料理人です」「あなたは歴史の研究者です」など。
AIに役割を与えると、その役割を踏まえて答えてくれる。
2・どんな回答が欲しいか具体的にする
「70代女性向けに教えて」
「中学生にもわかるように説明して」
「箇条書きにして」
「要点だけを表にまとめて」など。
どんな回答が欲しいか具体的にすると、求めている回答に近づくことができる。
「AIに何を聞けばいいかわからない」という人も、まずはここから! 暮らしがちょっと便利に、そして楽しくなるAIの使い道をご紹介!
日常の困り事を解決する生成AI活用術
■献立のマンネリ解消に!
「冷蔵庫にある『大根、豚バラ肉、豆腐』で、15分で作れる夕食のレシピを教えて」と頼めば、手順付きで回答。栄養バランスも考慮してくれる。
■不用品の処分もお任せ!
「古いミシンの処分方法を知りたい。粗大ゴミの出し方を教えて」と聞けば、一般的な手続きや、中古で売れる可能性までアドバイス。
■町内会の資料や丁寧文も簡単
「資料のひな形を作って」「町内会のアンケートのお礼状を、丁寧な言葉で作って」と依頼。敬語の使い分けもAIなら完璧。
■冠婚葬祭のマナー確認
「古希のお祝いに招かれたけれど、お祝い金の相場と表書きの書き方は?」といった、いまさら聞きにくい常識もコッソリ解決。
■写真から思い出探し
「この花の名前は何?」「この写真の観光地はどこ?」と写真を読み込ませるだけで、即座に判明。散歩の楽しみが倍増。
■あなたの記憶が「物語」に
「子どものころの夏休みの思い出を語るから、読みやすいエッセイにして」と頼んでみる。自分だけの「自分史」が、おしゃべり感覚で完成!
■健康・美容のちょっとした相談に
「お昼に食べた天ぷらそばと、おやつの大福の合計カロリーを教えて。あと、夕飯で調整するなら何を食べればいい?」などと相談すると、栄養士のようなアドバイスが返ってくる。
■コーディネートのアドバイス
「60代の女性。同窓会に明るい色の服を着ていきたいけれど、派手すぎないコーディネートを提案して」と頼めば、顔色が明るく見える色の組み合わせを提案してくれる。
■スマホで「大人の学び直し」
「大河ドラマの舞台になっている時代の歴史を、物語風に教えて」と頼めば、自分専用の歴史講師に。教科書よりもずっと面白く、知りたい部分だけを深掘りできる。
■「わがまま旅プラン」を瞬時に作成
例えば「京都に1泊2日で、足腰に自信がない友人2人と旅行。混雑を避けた穴場の寺院と、素敵なランチを組み込んだプランを立てて」などと頼めば、あなたの体力や好みに合わせた、至れり尽くせりの行程表が完成する。

