高市早苗首相

 その言葉には実感がこもっていた。

《スキージャンプ混合団体の皆様、銅メダル獲得、誠におめでとうございます!(中略)お互いが見事なジャンプでその役割を果たし、メダルが確定した瞬間に広がった歓喜の輪に、私も深く胸を打たれました。個々の高い技術はもちろん、チーム全員で一丸となって大空へ挑む強固な「絆」こそが、この快挙をもたらしたのだと感じます》

 高市早苗首相は2月11日、Xでミラノ・コルティナ五輪のメダリストをそう祝福した。衆院選投開票日に「おめでとう」を繰り返し浴びた3日後のことだ。

 465議席を争った選挙で高市・自民党は、実に単独で3分の2を超える316議席を獲得(公示前198議席)。連立を組む日本維新の会の36議席(同34議席)と合わせて352議席を占めた。野党に握られていた予算委員長ポストを奪還し、常任委と特別委、審査会の全27ポストを与党で独占する考え。

 政治評論家の有馬晴海さんは言う。

若い人が知っている政治家は高市首相ぐらいしかいないんですよ。女性有権者からすると、同じ目線で政治に取り組んでくれる気がするのでしょう。みんなが“いいね”ボタンを押すのに釣られて“いいね”を押す“推し活”です。高市首相が使っているボールペンやバッグ、履いている雪駄にまで興味を持ち、向かう方向が一緒になって人気投票さながらでした」

消費税ゼロを検討の加速を指示

 圧勝を受けて注目されるのが、消費税減税の行方だ。与党案は2年間限定で食料品の消費税をゼロにするというもので、超党派の「国民会議」で検討を加速する約束だ。2年限定なのは、中・低所得者を支援する給付付き税額控除を実施するまでの“つなぎ”という位置づけだから。

「社会保障の財源から年間5兆円を失うため、自民党内にも慎重な声があります。“検討を加速する”という言い方は逃げ口上ですし、国民会議で決めるのは、できなかったときに野党や党内の抵抗勢力のせいにするつもりとみられていました。しかし、高市首相もここまで国民に信用されると、できなかったでは済みません。党内も“これだけ勝ったのだから”と高市さんの顔を立てるはずです」(有馬さん、以下同)

高市早苗人気で形勢逆転の自民党

 6月には国民会議で中間報告を取りまとめる方針で、来年4月からの減税実施を目指す形になりそうだ。一方で、2028年夏には参院選が実施される。参院でも与党勢力を増やすための大事な戦いになるが、消費税を元の税率に戻す前提で選挙に挑めるか。

高市首相は減税の財源を赤字国債に頼らないと明言しており、無駄をなくして補助金や税外収入などで手当てする算段です。財源も最終的には国民会議で決められますが、2年限定ならばどうにかできそうです。“円安でホクホク”発言があったように、外国為替資金特別会計の運用益も見込めます」

 高市政権は安全保障関連3文書の改定のほか、殺傷能力を持つ武器輸出解禁、スパイ防止法の制定、日本版CIA「対外情報庁」創設などに意欲を示す。防衛費を国内総生産(GDP)比2%超に増やすことも検討するという。

“女性のお面をかぶった安倍元首相

 ジャーナリストの大谷昭宏さんは言う。

「高市首相は、政治信条が似通っていることから“女性のお面をかぶった安倍晋三元首相”と言われるほどです。究極の目標は憲法改正でしょう。国土強靭化の掛け声のもと、老朽化した上下水道管の整備など国民が受け入れやすい政策で一歩ずつ踏み固めながら、防衛力増強に向かうとみています。いきなり数の力で強引にやると批判を浴びますから、どこで爪を出すかですね」

 米国は、国家防衛戦略で同盟国の防衛費についてGDP比5%を求める方針を明記しており、要求をのめば年約30兆円が防衛費に消える。

「トランプ米大統領は選挙期間中に“高市支持”のメッセージを発し、勝利後に祝福のメッセージを送りました。絆の深さを印象づけるとともに、自動車の関税を15%に引き下げる代わりに約束した対米投資80兆円をちゃんとしろよというメッセージとみています。高市氏は3月に訪米予定ですが、隣でぴょんぴょん跳ねているようでは、トランプ氏のいいようにされないか心配です」(大谷さん、以下同)

日本維新の会代表・吉村洋文大阪府知事

 連立パートナーの維新にはショックな出来事があった。

衆院で過半数を維持するために必要だった維新の議席は全国で伸び悩み、事実上は用済みになりつつあります。しかし、高市首相は“アクセル役になる”と言った維新を見放さない姿勢で、今秋にも予定される内閣改造で閣僚を出してほしいと求めました。維新からすれば渡りに船です。維新の要望である衆院議員定数の1割削減や副首都構想はまだ実現していませんし、いつ距離を置かれても不思議ではありませんから」

 政権運営上、自民党の新人議員66人がカギを握る。いわば“高市チルドレン”だ。

「新人議員にとって高市さんは絶対でしょう。取材を受ければ“応援団”を名乗るかもしれません。裏金問題から復活した議員も同じです。わずか1年4か月で干上がり期間が終わったのですから。政党交付金も50億円増です。たいした女性だと評価されています」(有馬さん)

“高市チルドレン”新人議員の資質

 大谷さんは、自民党新人議員の資質を心配する。

「過去に小泉チルドレンの杉村太蔵元衆院議員が初当選後に“料亭に行ってみたい”“グリーン車乗り放題”などと放言し、国民をがっかりさせたことを忘れてはいけません。政権への期待が大きいぶん、失望させるスキャンダルや問題発言は避けたい。所帯が膨れ上がったので、しばらくは党内新人への目配りに手がかかりそうです」

 高市首相は何がやりたいのか。大谷さんと同様に、有馬さんは「安倍元首相と同じことです」と言う。

「改憲もそうですが、安倍元首相と同じく長期政権を目指すと思います。長く続けられるのは、いい政治をやっているという評価でもありますから」(有馬さん)

 安倍元首相は1次、2次政権を合わせて在任3188日と憲政史上最長を記録。上回るには9年弱かかる。高市チルドレンと裏金問題から復活した議員約40人を合わせれば100人超の高市軍団ができ、勉強一本槍で党内の支持基盤が脆弱な高市首相にとって心強い味方になる。冒頭のように口にすることはないだろうがチーム一丸で“快挙”を成し遂げられるか─。