2月14日、WBC2026開幕に向けた事前合宿をスタートさせた、日本代表チーム「侍ジャパン」。2023年大会では大谷翔平投手らの活躍により多くの野球ファン、視聴者を楽しませたWBCだが、今大会では地上波中継がないことに不安の声も聞こえてーー。
《Netflix接続完了しましたので WBC視聴出来ます 3月から電話での予約お待ちしてます》
シーズン中は店内モニターで試合中継が上映され、野球ファンを中心としたお客さんが集っては野球談義に花を咲かせる「野球居酒屋」。とある店舗がXに投稿したのは、WBC開幕に合わせての「Netflix接続」を報告する告知ポストだった。
ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平投手(31)らメジャー組、阪神タイガースの佐藤輝明選手(26)や福岡ソフトバンクホークスの近藤健介選手(32)らセ・パリーグを代表するスター選手のプレーを、店内でお酒を酌み交わしながら観戦する一興。オリンピックやサッカーW杯など、国際スポーツ大会開催時に見られるお馴染みの光景だ。
しかしWBC2026で勝手が違うのは、放映権を保有するのはNHKや民放キー局ではなく、米大手動画配信サービスの『Netflix』で、本大会を視聴するには一定額の利用料金を要する、サブスクリプションサービスを契約する必要があるということ。
冒頭の野球居酒屋は察するに、個人でネットフリックスに契約を申し込み、そのアカウントを使用して店内テレビ、モニターで上映する予定なのだろう。つまり「WBC視聴できます」との触れ込みで予約客を募っているわけだ。一方でーー、
商用利用にはライセンス契約が必要
《誠に残念ではありますが、当スタジアムでは前回大会までのようなパブリックビューイング営業は行いません。正確に言えば行えません》
公式インスタグラムでWBC2026の上映断念を報告したのは、東京・神田に店を構える『ベースボール居酒屋リリーズ神田スタジアム』。平時より店内にて試合中継を上映する、野球ファンに知られる老舗の野球居酒屋だ。
同店では、他サブスクによる有料放送も上映しているのだが、商用利用するために個人契約よりも高額な商業ライセンス契約を各サービスと正式締結している。これは野球に限らず、海外サッカーなどを上映するスポーツバーなども取り入れる営業形態のようだ。
前回大会では地上波中継にて、侍ジャパンの試合でパブリックビューイング営業を実施していたリリーズ。当然、今回もお客さんから「WBC中継はあるのか」との多くの問い合わせが寄せられたものの、上映を断念せざるを得ない事情があった。リリーズ店主が、事の経緯と顛末を明かす。
「昨年に独占契約の報道があった時点で、私の方でもネットフリックス利用規約を細かく読み込んでみたのですが、どこにも“商業利用”に関する明記はありまでんでした。映像を使えるのか使えないのかもわからない状況で、“こちら飲食店なんですが”とチャットを通じて商用利用できるサービスがあるのかを問い合わせたのです」
仮に商用利用が許されるのであれば、高額契約でも辞さない構えだった店主。しかし、これまでオリジナルドラマや映画などのコンテンツをメインとしていたネットフリックス社だけに、スポーツ中継の「商用利用」を想定していなかったのか、昨年から幾度にわたって繰り返されたのは「現状は未定」の曖昧な答え。
あいまいな回答に変化があったのは2月上旬、「ネットフリックスは個人利用のみを想定したサービスですので、商用利用できるような環境はありません」と、今度は明確に商用利用に断りを入れるものだった。
個人的な非商業的用途に限る
WBC開幕が近づくにつれて、おそらくリリーズ同様の問い合わせが全国各地から続いたのかもしれない。ネットフリックスとしても商用利用について検討を重ねた上での回答だったのか、結局、
【Netflixサービスおよび当該サービスを通じてアクセスされるコンテンツは、お客様の個人的な非商業的用途に限るものとし、ご利用のサブスクリプションプランで許可されていない限り、お客様のご世帯以外の方と共有することはできません。(略)お客様は公の場での上映のために当サービスを利用しないことに同意します。】
ネットフリックス公式HPにも明示されている、【個人的な非商業的用途に限る】との利用規約をWBCでも例外なく採用。商用利用に「NO」を突きつけたのだ。
許可が出ないのならば上映することはできない。これを受けて《パブリックビューイング営業は行いません》とのアナウンスを、お店のHPやインスタグラムで掲載したリリーズ。営業に支障が出るほどに殺到していた「WBC中継」の問い合わせも、ようやくひと段落することに。
「意外だったのが、WBC中継がネトフリ独占であると知らない人が結構いたことです。野球業界の“はしくれ”にいる身として関連ニュースを逐一チェックしていたからこそ、独占契約発表の時点で早々に動いたのですが、実はみなさん、そこまで(中継のことを)気にしていなかった。
あるいはネットフリックスが独占契約を結んだこと自体も知らなかった、という方もいらっしゃった。今も1日数件かの問い合わせがきますが、中には“何で(上映できないの)ですか?”と聞かれるお客さんもいます。その度にこういう理由で、との説明はしています」(リリーズ店主)
確かにWBC、野球に関心を持つ層にとって視聴できないのは一大事であり、地上波がダメならばと、ネットフリックスの契約方法や利用料金を率先して調べるはず。しかし普段は野球に興味がない、もしくはテレビ中継があるのなら見ようかな、といったライト層にとって独占契約は知る由もない話なのかもしれない。
そして懸念すべきは、朝から晩までWBC一色だったテレビ局、ライト層を含む視聴者を巻き込んでの、世帯視聴率40%超を連発して“社会現象”になった前回大会ほどに盛り上がらない可能性もあること。それはすなわち、野球人気の衰退を招く原因にもなりうるーー。
Netflix広報からの正式回答は
『週刊女性PRIME』はあらためて、中継映像の商用利用などについてネットフリックス社に質問を送った。すると広報担当者からメールにて以下の回答が寄せられた。
【Netflixの利用条件については、利用規約に基づき運用しております。】
飲食店における商用利用の可否に触れることはなく、代わりに先の「利用規約」が掲載されているヘルプセンターのアドレスが添付された。
また利用規約にもある、非営利および非商業的な【教育を目的としたNetflix作品の上映】に限って許可する、との部分。たとえば学童野球や中学高校において、部員への“教育目的”での上映会、パブリックビューイング開催は可能なのかについて、
【個別の事案につきましてお答えすることは控えさせていただいておりますが、パブリックビューイングの開催にご関心のある方には、以下の窓口までお問い合わせいただくようご案内しております。
Netflixにて現在企画しておりますパブリックビューイングは、「侍ジャパン」選手30名の出身地・ゆかりの地の自治体や学校と共に開催するものです。】
ネットフリックス企画のパブリックビューイングとは『「2026 ワールドベースボールクラシック」ホームタウンヒーロー・パブリックビューイング』のことで、同社も共催する侍ジャパンの試合を各地で無料観戦できる公式イベントを指している。
それ以外の上映会、パブリックビューイング開催については問い合わせも増加しているのか、公式HP内に急きょ開設したと思われる【パブリックビューイング全般に関するお問い合わせフォーム】案内アドレスがやはり添付された。
そして営利目的でパブリックビューイングを開催した場合、野球居酒屋やスポーツバーにおいて無断上映した場合の「罰則」についても質問をするも、これに回答は得られなかった。
次回大会では「民放連」に期待も
先のリリーズ店主は「
「WBCを機会に個々でネトフリを試してもらいたい目的がある以上、不特定多数の人が集まって見られる場所を規制するのは、商売として当たり前で合理的なことだと思います。
ただ今回の反省、教訓を踏まえて、次回大会が開催される際には日本メディア(民放連)は早め早めに動いて、放映権の奪還を果たしてほしいです。せめて(主催側との)交渉の余地は持てるようになってくれたらありがたいですね(笑)」」
世界一になった2023年大会では準決勝、決勝戦が行われたのは午前中。朝7時にはリリーズも満席となり、お客さんが一体となって侍ジャパンの快進撃を楽しんだようだ。
2月27日から侍ジャパンの強化試合4試合が、ネットフリックスではなく地上波中継される予定だ。この日ばかりは全国各地の野球居酒屋、スポーツバーでも乾杯の声が聞こえそうだ。
